12球団で最もベテラン偏重なのに12球団で最も打てない巨人打線!打席年齢・塁打年齢2016年前半

  • 舎人
    2016年06月28日 05:06 visibility2456
交流戦が空け、ペナントレースが再開しましたが、巨人はDeNA相手に1勝2敗。なかなか波に乗れません。初戦はエース菅野が炎上、2戦目はリードしていながらもリリーフのマシソンが掴まり逆転負けです。これにはマスクを被った相川のことが大きく問題となりました。小林のまさかの骨折離脱さえなければこんなことにならなかったかもしれない。そう多くの人が考えたのではないかと思います。しかし、こういった時こそいつもは控えにいる選手を抜擢して試す格好の機会なのです。そうでなくても巨人は捕手の人数がソフトバンクに並び12球団で最も多い。首脳陣はベテランの相川や実松を優先起用していますが、なぜ彼らなのかハッキリとした理由があるのかが不明です。「他の捕手たちの事はよく分からないから、取りあえず実績があるから使おう」という、甚だ消極的で、理由にもならないような理由で彼らを選んでいるような気がしてなりません。

捕手はディフェンス力と経験がものをいう声がありますが、私はそもそもそれは固定観念に過ぎないのではないかと疑っています。金本監督は以前、良い捕手とは打てる捕手だ言っていました。打撃型捕手の原口を使うのはそういった考えなのかもしれません。また、ラミレス監督は経験など全く無関係にルーキー捕手の戸柱を抜擢して起用しています。しかも、その戸柱がチーム防御率リーグ1位に貢献しているのです。もちろん、彼らの未熟な部分で落とす試合はあったでしょう。しかし、それ相応に勝利に貢献しているのも事実です。私が思うに、捕手というポジションはディフェンスや経験はもちろん大事だが、それは必須条件ではなく、最も重要なのは「使う側の野球観」ではないか。つまり、自分のやりたい野球を実践するのに相応しい捕手によって、良い捕手・選ばれる捕手は変わって来るのだと思うのです。打力が欲しいならば、打力優先で選べば良いし、将来性重視ならば素材の良い若い捕手を選べば良い。投手陣を引っ張って欲しいなら経験豊富なベテラン捕手だろうし、キャプテンシーを期待するならカリスマ性で選べば良い。だから監督なりチーム設計者(GM)の考え方次第で、良い捕手にもなるし、いらない捕手にもなるのではないかということです。

巨人もそれによって選ばれたのが相川であり実松ならば仕方ない。ただ、今までの経緯を考えると、フロントはもとより高橋監督はそこまでのことを考えていないと思う。自分の目指す野球とは何なのか、自分の野球の捕手像とはどういったものなのか、そういった考えがあって監督をしているとは思えないのだ。仕方なく始めた監督だからそつなくやるために、取りあえず前任の残して行ったスタイルを踏襲しているだけで、そこで使われて来たのが小林であり、今度の相川や実松なのだと思う。こんなノープランナーに監督をしてもらっていることは悲しい限りだが、なんの準備も心構えもなく現役でプレーするつもりだった人間を無理矢理監督に就かせたフロントの方に本当の罪がある。素人に監督をさせるなら、周りがそれ相応の準備をしておかないといけなかったのです。例の賭博事件の混乱があったとはいえお粗末極まりない。選手もファンもみんなが不幸になっていると思います。

そういったことは捕手に限らず、現在の巨人は全てに渡って問題が噴出していると思う。投手である菅野よりもヒット数が少ないというのに菅野の倍近く打席を与えられている脇谷と、逆にやたらと軽んじられている大田。二軍でほとんどプレーすることなく昇格させられた片岡と二軍でいくら打っても一軍に昇格させてもらえない中井。無条件で一軍で席を与えられる鈴木がいる一方で、鈴木よりも将来性や可能性を秘めているかもしれないのに、俎上にも上げてもらえない数多くの若手選手たち。どうもそこには使う側の勇気がないのか、ベテランの扱いに気を配らなくてはいけない不文律があるのか、いずれにしても不自然さが付きまとうのです。

おそらくそれも高橋監督が自分の目指すべき野球がよく分かっていないからで、取りあえず原さんの時代の野球の物まねをしているからでしょう。それがもっともそつなくできることですし、楽なのだと思います。しかし、それは原さんが本当に目指していた野球ではなかったと思う。自分の思うままに選手をオーダーし、自分の使い勝手の良い選手ばかり集めていたら、いつの間にかそういった野球しかできなくなっていた。おそらく就任したての原さんが今のチームを率いたら、もっと野心に満ち、自分の任期中を見渡した起用をして、こんな選手起用はしていなかったように思うのです。

さて、前段が長くなってしまいましたが、今日はそんな「良く分からないから取りあえず前任のスタイルを踏襲」している高橋監督の下の野球で、チームの打線がどう変わったのかを考えてみたいと思います。正月に発表した打席年齢や塁打年齢が今シーズンはどうなったのかです。高橋、井端、金城と呼ばれるアラフォーが引退し、さぞかし数値が改善しているはずと思って調べてみましたが、これが意外な結果でした。

まず、球団別の世代間打席占有率です。次の円グラフですが、これは今シーズン各球団が世代ごとにどれだけの打席を与えているかを示したものです。緑が25歳以下、青が25歳から30歳まで、肌色が31歳から35歳まで、赤が36歳以上です。これによって各球団がどの年齢層のバッターを重用しているかが分かります。図が見づらい場合は、下のアドレスにグーグルのクライドに格納したデータがあるのでご覧になってください。

































































































































































































巨人ほど肌色や赤の割合の多い球団は他にありません。ほとんどの球団は緑と青で半分以上占めているのです。このあたりの事情は昨年と全く変わっていません。この肌色や赤が多いということはどういうことかというと、この部分の年齢層の選手が蓋となって、本来なら一本立ちすべき年齢層の出場機会を奪っているのではないかということです。

それを25歳以下と30歳以下で棒グラフにしたのが下の表です。


































































































他球団に比べ、巨人がいかにベテラン偏重で打席を与えているかが分かります。それで打線に結果が出ているならばまだ許せるのですが、決してそうではありません。

次の表は、打席年齢・塁打年齢・試合ごとの得点を並べてみたものです。このようにベテラン中心に起用し、打席を与えてきた巨人打線がどのような結果を出したかが分かります。

打席年齢とは、打者の打席数を年齢でかけて、球団の全打席で割ったもの。打線の年齢です。塁打年齢とは、打席年齢と同じように打者の塁打数を年齢で掛けて、球団の塁打で割ったものです。打席年齢がチャンスを与えられた打線の年齢なのに対し、結果を出した打線の年齢になります。


































































































どれをとっても巨人は12球団で最下位です。つまり巨人は力の落ちたベテランに打席を与え、そのベテランの搾りかすのような打力で、12球団で最も得点できない打線を組んでいたということです。

巨人も確かに高橋たちアラフォーが引退した事により打席年齢も塁打年齢も昨年より下がっています。しかし、今シーズンの球界全体の若返りはもっと顕著だったのです。特に注目なのは阪神です。昨年よりも2歳以上打席年齢が若くなっているのです。それだけ今シーズンは若い選手にチャンスを与えたのです。しかも、それによって打力が落ちることはなく、塁打年齢は健全で、得点力も向上しているのです。指揮官の考え方1つで、こうも事態が変わるとは予想だに付きませんでした。こういったことは巨人も考えた方がいい。しかし、その超変革の阪神ですら、ようやく12球団の平均になったに過ぎないのです。

巨人も何とかして打席年齢を平均である29歳くらいまで下げるべきだと思いますが、そのためには阪神の様にかなり意識的に若手の抜擢をするしかありません。ただ、そういったドラスティックな変革は、かなりリスクも伴うことです。しかし、そのリスクによって発生した問題を一つ一つ解決することでチームは強くなって行くものだと思います。金本さんは自分の任期中のことを見据えて長期的展望に立って選手起用をしているのでしょう。かつての原さんもそんな部分が感じられました。高橋監督も仕方なく引き受けた監督だろうけれども、どうせなら名監督を目指して、自分の任期中の将来を見据えた起用方法を考えて欲しいと思います。

ただし、そういった現場の意識が変わったとしても、使いたくなる選手がいなくてはいけません。いや、むしろ使いたくなる選手が数多く輩出してくることが、最も現場の意識を変えることになるのだと思います。そもそもこのように巨人打線が高齢化してしまった原因とは編成にあるのです。下の表は各球団の世代別人員構成を一覧にしたものです。


































































































巨人は人員構成的に12球団1若手野手が少なく、ベテランが多い球団だったのです。こういった編成をしてしまったことで、やたらと数の多い取扱い注意のベテランが、若手のポジションを奪うことにつながったのです。打席年齢や塁打年齢を下げるためには、現場の意識も大事ながら、それ以上に編成が注意を払わなければいけないのです。

どうしてこのようなベテラン偏重の人員構成になってしまったのかを考えると、ある仮説にたどり着きます。次の表は巨人の過去10年間の入退団選手を一覧にしたものです。選手によって濃いオレンジだったり、薄いオレンジだったりしてありますが、これは私の主観で付けたものなので参考程度にしてください。








この表で注目して欲しいのは2011年という年です。この年は清武さんがGMだった最期の年で、飛ばない統一球が導入された年だったのです。あまりに打てない打線にしびれを切らした原さんが、フロントにすぐに使える戦力をオーダーしたことが、このように多くの移籍選手を生むことになりました。清武さんの構想とは小笠原やラミレス、谷たちが元気なうちに高卒で才能豊かな選手たちを鍛え、徐々に切り替えて行くというものでした。しかし、2011年の打てない時代の到来により、思った以上にベテランを切り替えなくてはいけない時期が早まったものの、期待されていた若手たちはそれに追いついていなかった。その後、清武さんは追放され、その後任に原澤さんがGMに就任したのですが、この人物が清武さんの様に自分のビジョンありきではなく、まずは原さんの意向を汲む姿勢の人物だったのです。原さんが欲しがるのならば、人員構成がおかしくなろうとも、清武さんの時代に期待された選手たちの蓋になろうとも是非もなしだったのです。私はこの時代に将来の計画よりも原さんの意向を最優先にしたフロントが現在の事態を招いているような気がしているのです。おそらく、原澤さんたちフロントも苦しんでいたに違いない。大森さんの書いた本など見ると、その時代に計画していたことなどが良く分かります。しかし、そういった計画などが原さんにどこまで通じていたかは不明ですし、おそらく大して気にも留められていなかったのではないかと思う。それくらい、清武さん以降のフロントの発言力は弱かったのだと思います。

これからのことを考えると、現場の意識が変わることが必要ですが、これは待っていても変わるものではないと思います。まずはフロント主導でチーム一丸となった方針の決定が必要です。全ての関係者の共通認識のグランドデザインを描き、その中で各起用や采配を当てはめて行くことが必要です。私が思うにどうもフロントは変な形で監督を押し付けてしまった手前、現場に遠慮があるように感じる。それは全く不要ですし、そういった遠慮こそが高橋監督を窮地に追い込んで行くことになっていると思います。

そして、フロントは編成を何とかしなくてはいけない。各球団の31歳以上の選手の平均人員は10人。巨人の16人は異常なのです。これを何とか同じ数に近づけることに取り組むべきです。そのためにはベテランを徐々に若手に切り替えて行かなくてはいけませんし、十分な選手の見極めが済むまでは補強も極力すべきではないでしょう。もちろん血の入れ替えは有りだと思いますし、必要な部分の補強は否定しません。しかし、取ったからには誰かを切らないといけないのです。それは使えてもベテランからにしなくてはいけない。そのベテランを切りたくないのなら、そもそもそんなトレードを希望してはいけないということです。今までの巨人はそういった場合、取ってきた選手に加えベテランも残し、若手を犠牲にしてきたのです。それが現在の巨人を困った事態を招いたことに他ならないのです!

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