高橋監督に学んでもらいたい先人の知恵

  • 舎人
    2016年09月06日 03:31 visibility1662
なんだか最近は本業が忙しいこともあり、ファームを含めて野球観戦どころではないのですが、それでも刻一刻とシーズンは最終盤に向かっています。今の一軍の優勝はほぼ絶望的となり、残るはAクラスで終わることができるかどうかということが注目されるところになりました。個人的にはベテランばかり集めたAクラス争いなど、全く関心がなく、最近は時間がある時に録画を飛ばし飛ばし見ることが精一杯の状態。若手が使われないのなら負けろとまでは思いませんが、実に白けた思いで毎試合チェックをしている感じです。

まぁ、今年は賭博事件もあり、本来ならペナントレースに参加することすら危うい感じだったので、この順位は仕方ないと思います。全ては来シーズン以降と思うしかないのですが、この今シーズンの戦いやチーム状態を監督や首脳陣、そしてフロントがどう受け止めるかが課題です。しっかりとした検証をして、今後の展望を描くことができれば、来シーズン以降巨人は変わることができるでしょう。しかし、その受け止めがそれが間違っていたりズレていたものだったならば、きっと巨人は今シーズンと同じ轍を踏むと思います。

私は監督の采配よりも、チーム作りの方がずっと大事だと思っています。したがって、現在の巨人が上手く回って行かないのは、チーム編成がおかしいことが最大の原因だと思っている。だから、どんな人間が監督でも、チーム作りがしっかりしていれば、優勝争いができるものだと思っているし、監督が何もしなくても、戦う前に8割方勝負は決していると思っている。日ハムやソフトバンクの監督たちは、共に監督未経験だったにもかかわらず優勝争いをしてきたということは、才能があったとか采配が優れているからとかではなく、チームにしっかりとした編成担当がいたからに他ならないと思う。したがって、もしも今シーズン巨人が優勝を逃したとしたら、その最大の原因は編成にあり、高橋監督ではないと私は思う。

監督というものはその残り2割を埋めるものでしかないと思うのだが、表面上は、勝敗の全てが監督に依るものと思われてしまう。そんな理不尽な立ち位置にいるのが監督だとしたら、思うに監督に必要なことは自覚と情熱なのだと思う。監督に就任した時から、自分の立ち居振る舞いに責任を持ち、自分の野球哲学をとことん実践して行く。そういった熱意があってようやく勤まるものなのだと思う。

私に高橋監督に対して不満があるとすれば、そういった点だ。高橋監督という人は現役を続けるつもりだったものを、無理やり引退させられ、やりたくもない監督に据えられてしまった不幸を抱えていると思う。江川さんは、自身に助監督就任の噂が流れた時、「こういったものは助走が必要ですから・・」とやんわり否定していた。その助走を高橋監督はしないままに監督になってしまったのだ。監督として未熟なのは仕方ない。しかし、引き受けてしまったからには、自覚と情熱を持って、いつの日か誰からも名監督と目される人物になって欲しいと思わずにいられない。

高橋監督はなかなか胸中を明かさない感じで、今までいったい何を考えているのか分からない向きがあった。しかし、そのヒントとなるインタビューがひと月ほど前のG+の週間ジャイアンツで放送されたので紹介したいと思います。記者の取材に対しては、なかなか明かさない胸の内の話を、徳光さんには語っていることが注目されます。

週刊ジャイアンツ 高橋由伸監督vs徳光和夫スペシャル対談(平成28年8月1日放送) 

徳光:えー、広島ちょっと見えてきましたかね? 
高橋:いやー、まぁ、あのー、まだまだ遠いかなぁっていう‥ 
徳光:遠いですか。 
高橋:まぁ、少し前よりかは近くなりましたけど。
徳光:今の巨人は監督、強いんですかね、弱いんですかね?それとも強くなって来たんですか? 
高橋:えー、強くと言うか、まぁ、あのー、良い形が出てくるようにはなったと思うんです。強いか弱いかは‥どうですか?(笑) 
徳光:それはうちが判断(笑)確実に強くなって来てますよね。 
高橋:そうですよね。あのー、良い形の試合は増えてきたと思います。きっちり点が取れたりとか、まぁでも、えーあっさり負けてしまう日もやっぱり数試合、えーここ数試合、何試合かありましたし、まぁそういうところはもうちょっと、なんとか粘っていかないといけないのかなと思いますけども・‥ 
徳光:昨今、リメイクドラマって言われるじゃないですか。こういう言葉って意識するものなんですか? 
高橋:えー、正直あんまりしないですね。 
徳光:あっ、結構ですよね。しない方が良いですよね。(笑) 
高橋:どっちが正解か分からなかったので(笑) 
徳光:メイクドラマっていうのはね、まぁ経験もされてらっしゃいますけど、あの時とは全然戦力が違うチームをお引き受けして、今引っ張って差配している訳じゃないですか。だから全然違うチームでしょ? 
高橋:(そう)思います。はい。 
徳光:ご自身からの体験からすると‥最初はですね、座ってはいませんでしたですけれど、立ってるだけでしたよね? 
高橋:そうですね。今も立ってるだけですけど(笑) 
徳光:そうじゃないと思うんですよ。今はかなり動いてきた。“静から動に移ってきたな”っていう、それを感じるんですか。 
高橋:んー、まぁそれはチーム状況であったり、うーん、そのー、メンバー、色んな事を、えー条件が色々あると思うので、その条件を、前半戦は別に、えー動かなかったというつもりもないですし、今も、だから、前半戦動かなかったから今動いてるとかっていう感じも、自分では全くしていないですし‥ 
徳光:あっそうですか。 
高橋:あのー、まぁ勝ったり負けたりとか、まぁそういう中でたぶん見てる方たちがそういう風に勝手に、えー理由付けされてるのかなっていう‥はい(笑) 
徳光:そうなんだ。我々が(笑) 
高橋:まぁ分かんないですよ。まぁはい(笑)と、自分では、私はそう思ってるんですけど。 
徳光:ということは一戦一戦ですか、監督? 
高橋:そうですね。 
徳光:勝負は? 
高橋:はい。今はもう先を見据えている場合ではないですし、あのーその日の試合を勝たないと、当然広島と(の差)も詰められないですし。
徳光:どうですか、全体的に、トータルとしましてですね、あのー、トレーニングを積んで監督をお引き受けになった訳じゃなくて、えー、なんだか舞い込んで来たような形で、それでまぁ、ファンの期待もあり、いろんなことを考えて監督を引き受けられまして、約10か月経つ訳でありますけれども、あのー、しんどいですか?それとも、まぁ結構監督って仕事面白いなっていう‥(ふうに思いますか?) 
高橋:んー、選手の頃、えー当然選手は、選手の方が大変だなと思います。 
徳光:あっ、そうですか? 
高橋:でも、でも、選手の頃思ってたよりも、監督って大変なんだなって思ってます(笑) 
徳光:あっそうですか(笑) 
高橋:僕自身が選手の頃に、あのー、監督やコーチを見てて、うーん、なんか、楽だ楽そうだとは思わないですけど、あー選手も大変だけども、監督コーチってのも大変なんだなってすごく実感してます。 
徳光:今は(ですね?) 
高橋:はい 
徳光:ダックアウトを拝見しておりますと、比較的良くお話しされておりますのが、村田善コーチであるとか井端コーチであるとか、割と同世代の人が多いんですけど、あれは自然体なんですか? 
高橋:そうですね。あのー、まぁ、たまたま立ち位置の問題であったりとか、でもやっぱり一番、えー、当たり前になりますけれども、村田(真一)ヘッドが一番‥ 
徳光:会話ありますか? 
高橋:会話一番多いかと思います。 
徳光:あっ、そうですか? 
高橋:はい 
徳光:これテレビって本当に意地悪な生き物で、バッと映しますとですね、村田コーチと高橋監督が、あのー、こう話している姿ってほとんどなくて、お互いちょっと逆側向いているのかなっていうような‥ 
高橋:あっ本当ですか? 
徳光:ええ 
高橋:じゃあ、そういうばっかり使って意地悪されてるんですかね(笑) 
徳光:そんな(ことはないんでしょうけどね)(笑)ヘッドとはどういう話をされるんですか試合中? 
高橋:えーと、作戦‥当然作戦面のことがほとんどですし、まぁちょっと試合に、まぁ余裕ったらあれですけれども、んー、ある時は、あのー「今日この選手良かったな」とか、試合中ですけれども、「ちょっとこの選手一回打席立たせとこうか」とか、そんないろんな作戦面ですね。 
徳光:それはつまりヘッドに相談されるという(ことですか?) 
高橋:そうですね。私も相談しますし、ヘッドからの提案もありますし、はい。 
徳光:あるんですか、ああ、ヘッドからの提案もあって、それを採用するという。ピッチャーに関しましては、尾花さんに任せっきりという(感じですか)? 
高橋:任せっきりではないですけれど、えー、尾花さんと後は村田善コーチと、えー、キャッチャー目線とピッチャー目線との話を聞いて、えー、一緒に考えてます。 
徳光:ああ、そうですか。じゃあ、あんな短時間の中で、やっぱり常にそういったこと集中してやってらっしゃるっていう‥ 
高橋:そうですね。はい。 
徳光:それはあれですよね。初体験だし、結構監督っていう仕事は大変だなっていう‥ 
高橋:そうですね。そのへんがやっぱり選手の時は、正直自分が出てる時にしか頭が働いていなかったのに、今は一応、プレーボールから、プレーボール前からですね、ゲームセットまで、なんか、ずっと考え放しなんで‥ 
徳光:ああー俯瞰でものを見なければならないっていう‥ 
高橋:そうですね。 

(中略) 

徳光:監督術であるとかね、そういったようなことはあれですか、どなたかに学とか、あるいは物を読んで、それで自分の中でこう参考にしてるとか、そういうことはあるんですか? 
高橋:んー、そうですね、まぁ、えー参考にしてるとかっていうよりも、そのー当然私が選手で仕えた三人の監督がいますけども、まぁそういった方たちしか僕は経験がないので、そういった方たちしか見てないので、えーそういった方たちのことが頭の中には浮かんだりはしますけども、でもなるべく自分の感性というか、えーその時の直感を信じてとは思ってはいますけども、はい。 
徳光:なるほどね。そうすると本屋に売っている野村監督の監督術とか、そういった、広岡監督がどうのこうのとかいった‥ 
高橋:あー絶対読まないですね。(笑) 
徳光:いいですね。(笑) 
高橋:結果論なんで。(笑) 

(以下略)

高橋監督と村田ヘッドコーチとの間柄のことが時に注目されます。高橋監督は前監督の原さんの番頭役だった村田さんをことのほか頼りにしているのだそうです。村田さんは人格者ですし、ちょっとした相談や首脳陣としてのしきたりを話すのに最適なのかもしれません。しかし、用兵や采配を話す相手として、つまり参謀として、村田さんを頼りにして良いものかどうか。確かに昨年の原さんは村田さんをヘッドコーチのような総合コーチというリーダー格に据え重用した。しかし、参謀など一切不要(というか受け入れない)の監督として最晩年の原さんと、新人監督の高橋さんでは、同じ人物による同じようなポストでも全く機能するところは違ってくる。村田さんを望んだのは高橋監督という話もあるが、本当なら藤田監督の頃の牧野さんのような人物が適任だったのではないかと思う。

それにしても監督のコーチ陣との話を聞く限り、どうも采配や起用を感覚でやっている感が拭えない。よっぽど感性に優れた天才ならば、何となくの感覚で采配を振るったとしても何とかなると思う。しかし、普通の人間は極力理詰めで物事を進めるべきだ。高橋監督は仕えてきた監督が長嶋さんたちだからといって、自分もカンピューター野球をやってもらっては困る。あの時代はまだあんな野球をやっていても愛嬌で済まされたかもしれないが、今はデータ解析で全て丸裸にされてしまう時代。この時代の強者とはデータを制する者だ。そのデータを使いこなせて、ようやく采配や起用が理論に裏付けされたものになる。

それと、高橋監督は先輩監督たちの著書を一切読まないと言い切っていますが、先人の知恵はありがたいものだ。結果論だからと切り捨てるものではないと思う。上下関係にうるさい野球界において、ややリスペクトに欠ける発言に思え驚いたのですが、高橋監督にとって野村さんはプロ入り時の経緯があって複雑な関係なのかもしれない。(「野村の考え」にはそんなことが書いてある)また、広岡さんは週刊誌等で散々叩いているので、反駁したい思いがあるのかもしれない。しかし、“ああいった時、この人はこう考えた”とか、“こういった場面、この人はこういう理屈でこの戦法を取った”とかいう話は、自分のパーソナリティーを豊かにするものだと思う。我々一般人はそれを人生訓としてしか生かせないが、現役監督はそれを再現なりアレンジなり出来るのだ。私から言わせれば何と幸せな仕事だろうと思う。

まぁ、高橋監督には色々と苦言めいたものを言ってしまいましたが、これは期待しているからこそのエールだと思っていただきたい。改めて監督の采配よりも大事なのはチーム作りであることに変わりはない。1試合単位や短期決戦ならいざ知らず、ペナントレースなどの長期戦を戦う場合、8割方それで雌雄は決するものだと思う。監督によって勝負が左右されるのは2割にしか過ぎないのだ。しかし、その2割で天国を見るか地獄を見るかの分かれ道になることもあるだろう。高橋監督には独善的な監督になって欲しくない。感覚だけを頼るような監督はみんなもうコリゴリなのだから。

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