巨人のこれからの補強をどう考えるか?

  • 舎人
    2010年11月13日 04:16 visibility2046


日本シリーズが終わって一週間、各球団、来シーズンへ向けた編成の真っ只中です。


巨人も豊田の退団が決まったと思ったら、トーレスという外国人投手獲得へとのこと。


昨日も土井というオリックスを退団した選手と育成契約の話が出ていました。


これにとどまらず選手の整理、獲得の話は引き続き出てくることでしょう。


特に今年は優勝を逃したこともあり、ナベツネさんが怪気炎を上げて、


10億円規模の大補強だとのたわまったとか!?


この発言にマスコミは大喜び!この時の発言を根拠とばかりに、


あることないこと好き勝手に書いています。


メジャーから黒田や川上、岩村、松井稼を取るだとか、


FAでオリックスの後藤や横浜の村田を取るだとか・・


もちろん、これらのことはほとんどがただの類推です。


巨人の方針がどうであるとか、チーム編成がどうなっているとかはお構いなしに、


まるでそうして欲しいとばかりに、あることないこと書き連ねているのです。


これはそういった人事的な話が日本人は好きだということが根底にあり、


そういった話を記事にすれば人が飛びつくと分かっているからなのでしょう。


 


確かにそういった記事の中には巨人の補強ポイントと合致したものもあります。


現在の巨人は投手陣は先発もリリーフも全てにおいて補強ポイントですし、


野手陣においても内野でレギュラーが決まっているのは坂本1人だけ。


小笠原が来年ファーストで行くのであれば、


セカンド・サードが誰になるのか決まっていません。


今年急成長した脇谷をどちらかで使うとしても1つポジションが空くことになります。


それをどうするかの選択肢の1つとして他からの補強がある訳です。


この他からの補強とは一番簡単でかつ確実に戦力の穴埋めをする方法です。


しかし、それが即ち今の巨人に相応しいものかどうかは別問題です。


なぜなら他からの補強とは同時に副作用のあるものだからです。


その副作用とは何か?そして巨人のこれからの補強をどう考えるか?


今夜はそんなことを考えてみたいと思います。


FA制度が導入されて以降、巨人の補強がどうだったかをざっと振り返ってみます。


長嶋さんが監督に復帰した1993年、


NPBはその後の球界を混迷に落としいれる2つの改悪を行います。


1つがFA制度、もう1つがドラフトにおける逆指名の導入でした。


これは渡辺読売新聞社長(後のオーナー)が率いる当時の巨人が提案したものでした。


“このままだとプロ野球は、サッカーのJリーグの人気に押しつぶされてしまう”


この大義名分の下に、西武などの幾つかの球団が賛同したため、


導入を巡って各球団の意見は別れました。しかし、このままだと


リーグ再編成に繋がるという警戒感を各球団は持ってしまったのです。


今では考えられないほど巨人は惑星的な存在でした。


反対の意見を持っていた球団も渋々承服するしかありませんでした。


評論家の小関順ニさんはこれを復帰してくれた長嶋さんへの球界からの贈り物と言っています。


要は長嶋さんのようなトンチンカンな人が監督をしても、


十分に優勝できるような制度を作ったと皮肉ったのでしょう。


 


自分が言い出した制度ということもあり、巨人はさっそくこの制度を活用します。


この当時の巨人は打力が弱く、打線に核というものが必要でした。


そのためにチームの核とするために落合さんを招聘し、四番バッターとしたのです。


私は落合さんが来たのは当時非常に不快でしたが、


これは今振り返ってみると意味のあるFAだったのかもしれません。


低迷していた打線がしっかりと機能し、長嶋さんは自身初の日本一になりました。


 


しかし、この先の巨人の補強は全く支持できないものが続くことになります。


落合がいるのに広沢を取り、清原を取り、石井を取り、マルティネスを取り、


その代価として若手注目株の吉岡を放出したりしています。


この長嶋さんが監督の時代はFAと逆指名の即戦力によって、


チームの全てが形作られて行ったと言っても過言ではありませんが、


この吉岡放出劇はまるで自ら育成を放棄したと宣言したかのような象徴的な出来事でした。


 


長嶋さんの時代のこれらの補強で何が問題だったかというと、


巨人というチームはファームが持つ本来の育成機能を破壊してしまったことです。


足りなければすぐにFAなり逆指名でそれをカバーすることによって、


巨人のファームとは選手の育成の場所ではなくなり、


一軍選手のリハビリの場所と化してしまったのです。


巨人に入団した新人選手たちは初めから一軍で戦うことを約束されたエリート組と、


二軍の興業向けに取っただけのような雑草組に最初から分けられているかのようでした。


しかも、こういった雑草組は最低限の人数しか在籍させておらず、


足りなくなれば欠員補充をするように足りない人数を補充するといった感じで、


まるで競わせようという雰囲気がありません。


こんなファームの環境で若手選手たちが向上心を維持するのは容易ではなかったでしょう。


 


しかし、レギュラーとなったFAや逆指名の選手たちも、なかなか思い通りに活躍しなかったり、


ケガ等で本来の働きが出来なかったりするものです。


そんな時こそファームにいる若手選手抜擢のチャンスなのですが、


当時の巨人はあろうことかその穴埋めを、さらにFAなどの補強で外から補おうとしたのです!


はなからファームというものを信用していないということです。


 


このような移籍組は大抵がピークを過ぎた選手ばかり、


すぐに賞味期限を過ぎてしまいます。


すると、彼らのパフォーマンスが落ちるとさらに外からの補強を敢行し問題を解決する。


毎年、そんなことの繰り返しでした。


 


このようにファームが機能せず、若手選手の抜擢がないチームは、


レギュラーなどの極少数で野球をやっているようなものです。


つまりレギュラーのコンディション次第で勝敗が決まる不安定なチームということです。


長嶋巨人は毎年のように何十億円補強をしても、


その補強した選手たちがなかなか働かなかったこともあり、


一度も連覇することなく退陣しました。


これは戦力不足を他からの補強に頼りすぎたため、


いざという時の戦力の穴埋めが出来なかったためです。


長いシーズンを戦うための強さとはメンバーの豪華さだけでなく、


それを補う選手層の厚さが求められるのです。


そのためにはファームがちゃんとした育成の機能を持ち、


穴埋めの選手たちが輩出されなくてはならないのです。


そんな中、長嶋さんに代わって原監督が現れました。


前任の長嶋さんとは違い、戦力の穴埋めのための若手抜擢に躊躇がありません。


初めて監督になった2002年は例年通りレギュラー陣にケガ人が出たものの、


初めて一軍でプレーする選手たちを抜擢してその穴埋めをし、見事に日本一にまでなりました。


長嶋さんの時代に死んでいたファームの機能を蘇らせたのです。


 


しかし、この原監督の若手抜擢策は次の2003年に挫折をします。


いかんせん若手選手の数が少なく、質的にも問題があったからです。


当時抜擢された川中にしても、堀田にしても、福井、山田にしても、


彼らの多くは抜擢の旬を過ぎていました。


そしてその年のオフ、原監督が辞任した巨人は再び、


他からの選手補強で戦力の穴埋めを行うようになってしまいました。


ローズが来て小久保が来ました。打てないからと言ってアリアスを取り、


守れる外野手が必要ということで井出を取ったりしました。


しかし、レギュラーのケガや好不調で勝敗が簡単に左右されるチームは、


2005年2006年の連続Bクラスにという球団史上初の暗黒時代を生み出してしまったのです。


 


清武さんは2004年の途中から球団代表になり、


いきなり負の遺産を背負った状態からスタートすることになります。


まず、行ったのは不良債権の整理でした。


2005年限りで清原と元木、後藤ら俗に清原一派と呼ばれる選手たちを放出します。


次にやったのはチームの型を作ることでした。


小久保がソフトバンクに移籍して空いた穴に小笠原、


さらに不調の李スンヨプの代わりに主軸を打てるバッターとしてラミレスを獲得します。


また、投手陣において先発の柱としてグライシンガー、抑えとしてクルーンを獲得。


こうしてリストラと新規導入を同時に行うことで、血の入れ替えをします。


しかし、ここまでは今までの編成担当がやったことと何ら変わりません。


清武さんが他の代表と違い目を付けたのがファームだったのです。


レギュラー陣が不調やケガに陥った時、それを穴埋めするためには、


ファームの機能が健全でなければいけないと気付いたのです。


 


清武さんの球団改革の本質を一言でいうと、それは“球団の体質改善”ということです。


それまでの巨人は少し具合が悪くなると薬に頼っていたようなものでした。


それを体質改善することによって、薬に頼らなくても、


何とかなる体作りを目指したのです。つまり自己治癒力を向上させようということです。


 


この方針がハッキリとしたのは2006年のオフからでした。


選手の大量指名が始まり、ファームが一軍選手の調整の場から、


若手選手が一軍へ向けて競い合う場所に変わったのです。


その中から坂本や山口が輩出され、松本が続きました。


この流れはさらに今後も続くことでしょう。


 


現在の巨人が抱えている課題とは、


この健全化したファームをどう活かすかに変わっています。


ファームがいくら強化されても目的は一軍戦力を生み出すことに変わりはありません。


仕込んだ選手たちを競わせて篩(ふるい)にかけても、


使わないのではその選手たちは腐ってしまうことになります。


それならば少数精鋭の方がいいということになってしまいます。


巨人はファームにおいて競わせて勝ち残った過当競争の覇者たちを、


一軍で抜擢しなければいけないと言うことです。


抜擢よりも他からの戦力補強を優先したとしたら、


清武代表のファーム改革は全く意味が無くなってしまうということです。


私が思うにFAなどのレギュラークラスの戦力補強は、


最低限に行ってこそ意味があると思います。


どういった時に良いかというと、それはチームの型を作る時です。


打線に核が無い、投手陣に軸となる先発や抑えがいない。


こういった時に使うべきものであって、チームの型ができている時に


むやみやたらに使うべきではないと思います。


それはかえってチームの型をアンバランスにし、選手を輩出を鈍らせることになります。


今の巨人は足りない部分があっても、チームの型はしっかりしています。


打線に小笠原ラミレス坂本がいて捕手に阿部がいて、


少なくとも攻撃陣においては他からの戦力補強をする時期にないと思います。


それよりも来シーズンは足りない部分を埋める自己治癒力を試すべき、


競い合って成長した若手選手たちの上昇力に賭けるべきです。


もしも次にFAなどでレギュラークラスの補強を行う時は、


小笠原やラミレスがいなくなる時です。その時までに若手の成長が無かったならば、


そのようにして他からの戦力補強でチームの型を新たに作るしかありません。


清武さんは小笠原の元気なうちに大田たちが一人前にしなくてはと語っていましたが、


できれば他からの戦力補強でチームの型を作りたくないと思っているからでしょう。


 


かつて清武代表は雑誌「Number 」で、次のように語っています。


「チーム編成はFAやトレードのような補強と自前で育てるのと、


両方のバランスが取れなければ失敗する。ヤンキースのように獲り、


カープのように育てる。それがわれわれの理想なんです」


これはつまりチームの型を作る時はヤンキースのように行い、


そこから先はカープのように育成をするということだと私は解釈しています。


 


新聞がいくら騒いでも、村田も後藤も松井稼も結局来ないでしょう。


おそらく野手において細かいトレードはあるでしょうが、


主立ったこととしてはエドガーのように、


内野を守れる外国人が1人来るだけだと思います。


問題は投手ですが、外国人投手をトーレスの他にもう一人連れてくる気がします。


クルーンの解雇は決定的なのでリリーフタイプの投手でしょう。


 


来シーズンの巨人が最終的にどのような編成になるか、


引き続き注目していきたいと思います。


















































































































































































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