清武代表に期待するシビリアンコントロール

  • 舎人
    2010年09月18日 06:24 visibility551


巨人の球団代表の清武さんがまた本を出したので早速買ってきて読んでみました。 


前書の「巨人軍は非情か?」もそうでしたが、


これは野球書やスポーツ関連書というよりも、 


どちらかと言うと、ビジネス書や教養書の類です。


今回は“言葉の力”というものにテーマを絞り、


自分がかかわってきた選手やコーチ、監督たちが、


どのようにして相手に自分の気持ちを伝えたか、


清武さんが影響を受けた吉田松陰や新渡戸稲造などの言葉を借りて、


人がどう変わったかをテーマにしています。


 


セカンドの木村拓也が隣の坂本がエラーをするたびに励ましていた言葉


「下を向くな!」「お前は巨人を背負って立つ選手になる。本終打を打つこともあれば、


エラーをすることもあるんだ。その度に一喜一憂していてはいけない。みんな見ているぞ」


 


長野が7月の阪神戦で延長12回、決勝本塁打を打った時の話


バントミスや打球処理を誤って失点につながるミスを犯した長野に対し、


エドガーが言った言葉“Enjoy the moment. Don`t try too mach.”


(楽しんでいけ。入れ込みすぎるんじゃないぞ)・・・今を楽しんでいるか?


 


前書と同じ路線のものながら、テーマに沿って話が進むので、


こちらの方がまとまっている感じがします。


2時間ほどで簡単に読んでしまいましたが、


後で線を引いておきたいほどためになる話もあり、


後でもう一度読み返そうと思っています。


 


清武さんのようにファンに向かってここまでメッセージを発してくれた球団代表は、


過去の巨人にはいなかったと思います。


球団を強くするための方法を非常に研究しており、


従来の巨人のようにお金をかけてではなく、


チーム強化の1つの方法として選手育成を本格的に取組んでいます。


2004年のどん底のチームからスタートし、3連覇を成し遂げるチームを作り上げ、


さらに今年も優勝争いをできるチームにしたのです。


目指した方法が間違っていなかったのは確かです。


 


しかし、昨年のドラフトあたりからそのチーム運営にかげりを感じてきました。


1位指名の長野は過去に経緯があり仕方ないもの、さらに2位指名の鬼屋敷の指名も


チームの将来を見据えた納得のいくものでした。


しかし、ここから先の指名は疑問符の付くものでした。


3位土本(JR東海)       1試合 0勝1敗 防御率7.36


4位市川(鷺宮製作所・24歳)  3試合 打席なし


5位小野(日本文理大・22歳)  一軍出場なし


土本以下が戦力にならなかったから問題視しているのではありません。


この指名が原監督のたっての希望で行われたということが問題なのです。


巨人は3位以下で運天 ジョン・クレイトンほか高校生投手を


最大で2名ほど指名する用意があったそうです。


それが現場の意向によって変更されたのです。


 


現場がチーム編成に意見をするのは当然のことですが、


現場の編成についての発言力がフロントよりも強くなったチームは、


ほとんどの場合、弱くなっていく傾向にあります。


80年代〜90年代の西武は根本さんと森監督の力関係が逆転した時から、


黄金時代の終焉が始まりました。


現場というものは長いスパンで物事を考えるよりも、


どうしても短いスパンで物事を考えてしまうものです。


そうすると、完成した戦力を欲しがるようになり、


FAによる補強や、ドラフトで即戦力を指名するよう希望するのです。


しかし、そういったチーム編成はチームバランスを崩し、


徐々に弱体化してきます。


さらにその先にあるのはFAや即戦力補強を


絶えず続けていかなくてはいけないチームです。


 


現在の巨人は清武さんと原監督が二人三脚で作り上げたものなのは間違いありません。


しかし、内田さんや伊勢さんを切り、自分の身内で周りを固めたコーチ人事といい、


昨年のドラフトのように指名選手に対する横やりといい、


現場の意見がフロントを凌駕しつつあることに非常に危機感を感じます。


 


原監督の現在の選手起用はベテラン優先起用、


同じ力なら若手よりもベテランを起用すると言っています。


今回も絶好調の橋本をスルーして、大道が一軍に呼ばれました。


しかし、大道が橋本と同じくらい絶好調なら仕方ないと思いますが、


今月の大道はイースタンで1打席立っただけ、それも遊ゴロです。


12日にフューチャーズとの試合で3打席立って、3打数2安打でしたが、


この2安打はどちらも相手のまずい守備によるものでした。


大道に何を期待して一軍に昇格させたのか?ただの花道を用意しただけか?


現在の原監督は起用や抜擢の基準が分かり辛く、


何だかナガシマさんが自分本位で選手起用をしていた時代に戻ってしまった気がします。


 


清武さんは現在の育成の巨人という方針を今後も積極的に押し進めるとのことです。


しかし、この方針は原監督の現在のやり方の下で、本当に上手く行くのか?


一軍半的な選手をただただ増やしてしまうだけではないか?


そんな心配に陥ってしまいます。


 


私は原監督を支持しますし、これからも巨人の監督は辰徳にやって欲しいと思っています。


しかし、どうも以前話していたような理想とはかけ離れた起用や采配をしています。


3連覇もし、WBCで世界一になったことで、自分が名監督になったと思っているのでしょう。


巨人としては現場が何と言おうと長期的展望に立った方針を変えてはいけません。


そのためには清武代表はこの世界一の監督を御して従わせなければならないのです。


 


「巨人軍は非情か?」「こんな言葉で叱られたい」


どちらの本もチームの明るい未来を感じさせる巨人ファン必読の本です。


しかし、著者の清武さんは本の中で語った理想を実現させるために、


現場の独走を許さないシビリアンコントロールが必要だと思います。




























































































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