2011年J2第28節 東京ヴェルディ-横浜FC 「見世物」

  • おかき
    2011年09月22日 00:17 visibility572

後半残り20分を岸野監督は、試合を戦いの場から見世物の場にした。菊岡の技ありのFKよりも、河野の見事なタッチシュートの時よりも大きなこの日一番の歓声がスタジアムから上がったのは三浦を投入した直後だった。既に点差は6点。そして、三浦とフランサの出場から9分、河野が東京ヴェルディ7点目となるゴールを決めてベンチに退く。まるで練習試合になった残り10分はフランサがそのパスワークで魅せた。ワンタッチでパスを捌いて、横浜が挙げた2点に絡んだ。





この2点を「次に繋がる」と評価する声もあるが、相手は7点取って動きも緩慢になったチームで、それが何に繋がるのか私にはちょっとわからない。もっと拮抗していたゲームでせめて1点差位のゲームなら緊張感も違ったが、「残り6点!」という横浜への声援に失笑が洩れる緊張感のない、ゲームではなくスタジアム中が三浦だけを見ている状況では、繋がるとまでは言えない。負けて尚強しというよりも、ゲームが決まった後のお口直しだった。

本当の見世物小屋になってしまったのはそれまでの75分間である。まるで練習試合なのか、それともリーグが一つ二つ違う相手と戦っているのだろうか、横浜の選手は東京Vの選手に全く付いて行く事が出来ずに、前半5分菊岡にゴールを許し先制点を許す。この後も同じ形から切り崩されてピンチを迎えた。
原因は誰もがわかるもので、センターのマラニョンを押さえられない事と、東京Vの河野、菊岡の両サイドの侵入を許し続けた事だけである。


 



東京Vとしては特段難しいことはしていないはずだ。マラニョンに預けてサイドがオーバーラップして、パス交換から突破して、中にクロス、若しくはシュートを放っているだけ。だが、この攻撃に対して横浜は成す術がなかった。特にサイドの柳沢、宮崎は遅らせる事もならなかった。また中盤では高地が運動量不足を露呈し、プレスバックが全く掛からない。前半からこれでは勝負にならないのは明白であった。


 


前半だけで3失点。菊岡の直接FKは鮮やかだったが、そのファウルを与えたのも中央で付いていけなくなった柳沢が与えたものだった。

後半、その柳沢に代えて西田を入れてカイオを中盤に下げて、中盤に目を光らせたがサイドへの圧力は落ちる事なく、後半開始3分マラニョンのクロスにオーバーラップしていた中谷が押し込んで4点目。
この後ゲームは一旦落ち着くが、横浜の体力と集中力が落ちたのを見逃さず東京Vは3点を追加して7-0と一方的にゲームを支配する。均衡していると観客も集中して見ているが、一方的になりすぎると興味が薄らいでしまう。めったにない7得点もやや飽食気味。見世物もこれで終わりかと思っていたが、横浜も最後は東京Vが緩んだ隙に2得点を返し7-2としてゲームは終了。鷲と不死鳥という鳥獣対決の見世物小屋はこれでお開きとなった。


 



問題点が見えても横浜は施す策がないのが現状だ。サイドバックはスピードがない選手と守備の軽い選手を我慢して起用しなければならない。藤田優、野崎と代わりにこなせる選手はいるが、それぞれ中央のケア、左サイドの推進力を削ぐ事になり背に腹は代えられない。ボランチも出来る選手を3人も欠いては運動量のない高地を使うしかない。


 



また、サイドバックの裏のスペースや1対1の脆さはシーズン当初から、対戦相手の監督や選手から指摘されていたことで、各チームの連携や戦術が深まる秋においては脆いを通り越して穴になってしまっている。怪我人という事情はあるにせよ、今後も確実に狙われ続けるポイントである。
このポイントをボランチやセンターバックがケアしにかかるので、中央がまた開いてしまう。このゲームではマラニョンがサイドに流れると朴がケアするので中央が空く。そのバイタルエリアを簡単に使われて失点。あるいはサイドからスペースにボールを入れて触るだけという簡単な攻撃を受けて横浜は失点を重ねた。これを克服しない限り、昇格はおろか1桁順位も難しいだろう。

前半からこの不死鳥は良い見世物になってしまった。右往左往して、ゴールを射抜かれて笑いものになるだけの存在。前半でユニフォームを脱いだ横浜サポーターの気持ちが良く分かる。一緒にされたくないんだ。自身の誇りがそれを許さないのだろう。「見世物じゃない」といくら叫んでも誰も首を横に振るだけだ。今はこの屈辱に耐えるしかない。

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