第91回天皇杯2回戦 横浜FC-松本山雅FC 「信仰力」

  • おかき
    2011年10月09日 01:18 visibility727

天皇杯2回戦は松本で行われる事になった。松本といえば、松本山雅のホームタウンであるが、横浜FCがホーム扱いとなった。とはいえ、試合前から大きく響き渡るのは松本山雅サポーターの声。アウェイ側の南スタンドを緑一色に染め上げるだけでなく、メインスタンドでもホームの横浜FC側にも松本山雅のユニフォームを着たサポーターが埋め尽くした。


ゲームはその声に背中を押された松本山雅が攻め、横浜が凌ぐという展開が続く。松本山雅はボールを奪うと、素早く前線の片山、船山にボールを入れて、久富、大橋がフォローして前線に持ち込んでいくスタイルだった。横浜はセンターバックがゲーム序盤からプレッシャーを受けて、弱気になると全体が下がり気味になり受けに回ってしまった。ただペナルティエリア付近の詰めが甘く、ゴールを奪うまではいけなかった。



カイオのボランチ起用は、全体の中での推進力やキープといった面では先日の札幌戦の様に効果はあったが、守備のサポートという形は難しい。試合の流れの中で高地がボランチに入りカイオが前にいき、エデルがサイドにという形で前半は対応。松本山雅が前線にポイントを置くのと同じ様に、横浜もやり方を変えて相手の守備陣にプレッシャーをかけにいく。


 


徐々に松本山雅の攻撃に慣れてきた横浜は、スルーパスでカイオが抜け出したがシュートは飯尾に阻まれ、その跳ね返りをエデルがシュートするもGK白井にセーブされてしまう。この時が横浜の前半唯一のチャンスだった。
どちらがJリーグのチームなのかわからない程、横浜の攻守の切り替えは遅くチームとして一つになっていなかった。その辺りは試合後数名の選手が語っているのだから事実だろう。守備でも走って戻らない、セカンドボールにも反応しないでは、流石に元Jリーガーを擁するチームには勝てるはずがない。


後半立ち上がりに先制をしたのは松本だった。ロングボールのクリアが小さくなったところを片山が胸トラップして左足でそのままダイレクトにシュートを放ちネットを揺らした。松本山雅サポーターの興奮も冷め遣らぬ中、再び松本山雅に訪れた得点のチャンス。ロングボールに抜け出そうとした船山を朴が引き釣り倒してPKを獲得。これを左隅に決めて後半10分で0-2とした。


 


横浜は2点を追いかける展開となったが、それでも攻撃のリズムはほぼ一定のままで、その後佐藤、三浦を入れても、守備を固めて下がる松本山雅を崩す事が出来ないまま時間だけが流れていった。そしてロスタイムの4分が経過して、横浜は0-2のまま敗戦を迎えることとなった。

距離はともかく、松本に来る横浜のサポーターは数少なかった。確かにチームの状況は芳しいとは思えない。だが、これが三ツ沢で開催していたとしても、ホームジャックの様になっていただけだと思う。つまり、スタジアムへの距離は、イコールそのチームへの心の距離なのではないのかと思う。それを遠いと思うか、近いと思うか。


 


松本山雅の声はその選手の背中を押していたが、横浜はどうか。誰の為に歌を歌い、喉を枯らしているのだろうか。選手達にその声は届いているのだろうか。歌詞の内容が優れているかとか、自分達が情熱を込めて歌っているかは本来二番の話。第一義には、選手をチームを後押しできるか。その気持ちを汲み取れる人間が少ないから、ゴール裏でもコアな部分以外は皆離れて観戦している。
誰の為にというのは言い換えれば信仰力。このチームを愛しているかどうか。愛しているなら、なぜ居残るのだろうか。方法が間違っている。例えそれが「こうやって怒ってやらなければ」という気持ちがあったとしても、それすら包み込む愛情はないのだろうか。愛しても愛し抜いても結果が必ず得られるとは限らない。だから、その愛情は美しく、説得力がある。


松本山雅の応援は、どこかのJリーグチームのメロディを使っていたかも知れない。でも、常に明るく前向きだった。松本に広がる緑が日の光を浴びてスクスク成長していく様にその声はメインにもバックにも伝播していった。雷鳥への信仰が、松本山雅のその身にかかる難を払いのけた。


 


では横浜は何が出来るのか。なぜこのクラブを選んだのか。なぜこのクラブにいるのか。監督の交代といったレベルの話は実はどうでも良くて、最後は選手も監督も、サポーターも自分達一人一人の心に宿るその思いを形にする為のタガを外してやらないといけない。その一つ一つが同じ方向を向いた時、横浜FCという名の不死鳥はもう一度空を飛べるのだ。 

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