2011年ラグビーワールドカップ準決勝 ニュージーランド-オーストラリア
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おかき
2011年10月21日 14:05 visibility355
前日に行われた準決勝ウェールズ-フランスでキーになったのが、ウェールズ代表キャプテン23歳のウォルバートンなら、この日最も注目を集めたのも同じく23歳のオーストラリア代表SOクェイド・クーパー。彼は試合前のウォームアップ時から、ニュージーランドのファンから一際大きなブーイングを浴びせられていた。それは彼の生まれ故郷がこのニュージーランドでありながらも、オーストラリア代表になることを望んだからである。また23歳で代表スタメンに入るだけの実力の持ち主。彼の実力を認めているからこそ、ニュージランドのファンは可愛さ余って憎さ百倍、ウォームアップからブーイングを続けた。
試合はそのクーパーのキックオフでゲームが始まる。ところがそのゲーム最初のキックが直接タッチラインを割ってしまう。その瞬間、ニュージーランドのファンは拍手喝さい。直接タッチラインを割ってしまうと相手ボールになってしまうのだ。このクーパーのキックミスがゲームの流れを決めてしまった。
ホームの圧倒的な声援を背にしたニュージランドがオーストラリアを圧倒。ブレイクダウンの激しさも制し、オーストラリアはズルズル押し込まれてしまう。先制したのはニュージランド。前半6分FBダグがディフェンスラインを破ると体勢を崩しながらも後ろから走りこんできたノヌーにパス。彼は右隅にトライを挙げて5-0とニュージランドが先制する。前半13分にもPGをSHウェプーが決めて8-0とリードを広げるニュージランド。
世界ランク1位がニュージーランドなら世界ランク2位はオーストラリア。オーストラリアも立て続けの失点で目が覚め、このままでは終れないと反撃開始。#11ローンの突進もあり、トライまであと数メートルのところまで前進したが、ニュージランドもこれを懸命に堪えて、PGによる3失点に逃れる。
この日のニュージーランドは、剛直な攻撃というよりもしっかり勝つというプランがあったのだろうか、良い位置でペナルティをもらうと、トライを狙うよりもキックで追加点を目指した。22分にはSOクルーデンがドロップゴールを決めて11-3とする。カーター、スレイドが離脱して3番手のSOだが、若干22歳でもホームコートで戦えば結果は自ずと付いてくる。
この後、ブーイングに慣れてきたオーストラリアのクーパーがドロップゴールを決めて11-6と追いすがるが、その直後の38分にはニュージーランドがまたしてもウェプーのPGで14-6と突き放して前半を終える。
ここイーデンパークで1986年以降未勝利と相性の悪いオーストラリアが後半どう立て直してくるかが注目だったが、逆にニュージーランドが後半3分にウェプーがこの日3本目となるPGを成功させて17-6と11点差にしてゲームの流れを渡さない。
テリトリーではニュージランドがオーストラリアを圧倒している。22メートルライン以内ではオーストラリアは支配している時間が長いが、点を奪えていないという事はニュージーランドのディフェンスがオーストラリアのオフェンスを止めているという事だ。
スタジアムはニュージーランドのファンが圧倒的多数で、主審もニュージーランドにやや有利な笛を吹く。それを見て一層盛り上がるスタジアム。オーストラリアは、本当によく喰らい付いている。オーストラリアの流れが良くなり始めたのは、No8サモを外してからだ。サモは以前日本の横河電機でプレーしていた事もあって、注目して見ていたが、あの突破力は影を潜めタックルもミスが多く、正直機能していたとは思えなかった。
ニュージーランドは時間を使って攻めていればいいので、ややルーズになった。そこを見逃さずにオーストラリアは攻め続けるが、ニュージーランドもそうやすやすとトライは許さない。相手はライバルであり、最強の相手オーストラリアなのである。1本許した途端息を吹き返す可能性は十分にある。
最後オーストラリアは猛攻を見せる。残り10分でのポゼッションはオーストラリアが70%を越え、エリアの支配は80%以上でどれだけオーストラリアが押し込んでいたかがわかる。それでもホームの声援というのは本当に恐ろしい。それすら跳ね返す力があるのだ。「GO! BLACKS! GO! BLACKS!」の大声援は結局最後までオーストラリアにインゴールへの侵入を許さなかった。
後半33分ウェプーが4本目のPGを決めて20-6として観客の多くは安堵したが、オーストラリアは最後の最後まで攻める。40分を越えてそれが最後のプレーだとわかっていても最後の最後まで得点を狙いに行った姿には感服した。
結局試合が終わったのは87分を越えていた。
ニュージーランドの快勝だった。クーパーの最初のキックがゲームの行方を決めてしまったかも知れない。強い者同士が戦うと、その位の出来事で流れを左右してしまうのである。クーパーはまだ23歳、次のワールドカップでまた成長した姿を見せてくれるだろう。
ニュージーランドはカーター、スレイドが負傷で離脱したが、クルーデンがウェプーに引っ張ってもらいながら安定したプレーを見せた事が大きかった。
それにしても試合後の盛り上がりは凄かった。隣のオバサンにはキスされるは、知らないおじさんには「Great Guy!」って抱きつかれるわ(ゲイの聞き違い?w)、ラグビーの伝統の一戦をワールドカップのこの場で見られた事に感動している。
これで決勝はフランスとニュージーランドという、1987年のニュージーランド大会の決勝の組み合わせの再現となった。(ちなみに3位決定戦も1987年と同じ顔ぶれ)24年前はニュージーランドが勝利し、ワールドカップの初代王者となった。今回はどうなるか。歴史は繰り返すのか、それとも新しい扉が開かれるのだろうか。下馬評では圧倒的にニュージーランド有利ではあるが。かなり楽しみである。
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