2006年J1第27節 川崎フロンターレ-ヴァンフォーレ甲府 「没個性も個性の一つ」

  • おかき
    2006年10月15日 03:36 visibility105


川崎市という場所は、一般的には中々認知されていない場所である。
東京と横浜という首都圏の二大都市(正確には東京は都市ではないが)の
間の住宅地、せいぜい川崎ぜんそくと川崎大師というイメージしか
全国の方は持っていないのではないか。
川崎市民の方々には失礼だが、そう感じるところはある。

その印象のなさは、サッカーの世界でもそうかも知れない。
近年でこそ日本代表を輩出する様にはなったが、顔になっている
日本人選手は少なく、派手なパフォーマンスも以前所属していた
岡山(現・柏)を除けば大人しい選手が多い。

ただし、それは裏を返せば「真面目」なんだと言えるのだと思う。
この日スタンドにいた近くのコアな川崎サポがその友人に川崎の
選手を「川崎の選手はなぁ、みんな真面目なんだよ」と何度も紹介して
いた事を思い出す。
それはまさにこの「川崎」の市民の特徴に似ているのではないのかと思う。
横浜と東京の間の街と言われながらも、黙々と自分達の仕事をこなす。
名はないかも知れない、しかし勤勉さではどこにも負けない。

この試合、実はいい動きをしていたのは甲府。
開始から積極的なプレスと連動性で川崎ディフェンスを混乱させる。
その中心にいるのは藤田。J2時代はFKの名手で鳴らした彼も、
今やボランチで汗かき役もこなせる存在。
元々根は真面目でプロ意識が高い選手だけに、甲府の他の選手の
意識がやっと彼に追い着いてきただけなのかも知れない。
彼は甲府に来た時から、明らかに他の選手と違っていた。

その彼がボールを持って対峙したのは、U-21代表に選ばれた谷口。
このマッチアップにも興味を持っていたのだが、前半のうちに
バックチャージと、相手選手の首付近を掴みファウルをもらって
カードを恐れて積極的にチェックにいけなくなった為に、下がり気味に。
その為、藤田がフリーでボールを受けるシーンが多く、ここが基点となった。
中盤は甲府の支配にあった。

川崎は藤田に翻弄されながらも、DFラインでボールをカットできる様に
なると、早いサイドからの攻撃が効果的になってくる。
マルコン、森の左右のアタッカーはいやらしい速さを持っている。
しかし、両者ともに苦し紛れと思えるクロスが多く、簡単にはじき出されて
チャンスを逸し、甲府に流れが行ってしまうかなと思った前半19分。
甲府・山本のクリアミスを繋いで、PA右を抜け出した我那覇のシュート。
最後は甲府・アライールが触りオウン気味になるも、記録上の得点は
我那覇のゴールで川崎が先制。甲府は自分達のミスで、ゲームの主導権を
川崎に渡してしまった。

ホームの川崎が先制し、甲府が押し込みたくても押し込めない展開が始まる。
バレーをきっちり抑えられ、杉山・山本のSBがオーバーラップしても
ボールを奪われる展開になって、そのオーバーラップに陰りが見える。
ここで前半が終わる。リードされて流れが良くない甲府。
ただ、リードしつつもその次の息の根を止める手が出てこない川崎。

その流れを打ち破ったのは我那覇だった。後半開始早々中村のスルーパスに
反応し、そのままダイレクトで放ったグランダーのシュートは、
甲府GK阿部がファンブルしキャッチする事ができずゴールに吸い込まれた。
後半5分の時間帯、そして相手のミスによる得点、点差を広げるゴール、
どれをとっても理想に近いもので、これで殆ど試合は決まってしまった。
甲府が受けた精神的ダメージは計り知れない。

その後は甲府の空回りの攻撃が続いた。川崎も点差があって無理な
攻撃は陰を潜め、今節より復帰したジュニーニョにお膳立てを考えている
ボール回しになった。彼にボールを集め点を取らせようとカウンター気味の
システムになったのだが、不調のジュニーニョは得点する事ができずに
後半43分に退いた。

この後は真面目に戦ったものだけが味わう事のできる美酒を浴びる時間。
扇谷主審の試合終了を告げる笛が鳴った時、この日の川崎のドラマも
2-0の完封というハッピーエンドで終幕した。

東京と横浜に挟まれたまるで没個性と思われている川崎。
果たして本当にそうだろうか。気が付いて見れば、Jリーグで3位。
東京と横浜のクラブを見下ろしている順位にいる。
川崎の選手には華はないかも知れない。しかし、自分が目立たなくても
チームは着実に勝利を得て、クラブは進化していくのだ。
それはまるで一般企業で働くサラリーマン達と同じ信念ではないか。
そのサラリーマンが等々力で自分の夢を選手に重ねて託す姿。

没個性で結構、地味で結構、真面目で結構。
真面目な人間に神様は微笑む時があってもいいじゃないか。
何も華がある人間だけが夢を見られる訳じゃない。
夢を見る権利は誰にでも平等にあるのだから。
そう、だから前を向こう「AVANTE!KAWASAKI!」と声を上げて。















































































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