そんな事がアルジェリア

  • おかき
    2009年11月15日 05:59 visibility106


全ての人の祈りも思いも願いも、身も心も全て捧げていた。希望という名の「1点」の為に。


 


アルジェリアがワールドカップ出場に王手を掛けていた。最終戦は2位のエジプトとの試合。


アルジェリアはこの試合に引き分け以上で、若しくは1点差での敗戦でも南アフリカに行けた。 エジプトは2点差以上で勝たなければ道は閉ざされてしまう。


前日にはアルジェリア代表選手の乗ったバスがエジプトの若者によって襲撃され、投石によって窓ガラスが割られるなどの被害も出ていた。アルジェリアの立場から見ればほぼ大丈夫、エジプトの立場からすれば何が何でも。若者達のした事は褒められないが、気持ちはよくわかる。やり場のない思いをそこにぶつけるしかなかった。


 


試合は開始からたった2分でエジプト代表ザキが先制。味方選手のシュートの跳ね返りを見事に押し込んだ。日本でザキと言えば死を誘う呪文。アルジェリアには死が待っていようとは日本人以外思わなかっただろう。


 


失点してアルジェリアは徹底的に守りを固めた。エジプトは殆どの時間帯で攻める。アルジェリアはカウンター1本でペナルティエリアに9人近くが守り、跳ね返して一気呵成に攻めて、奪われてはまたひたすら守る。そういう構図は前半からずっとだった。


 


チャンスもあるが枠を捉えられない。後半残りの45分が始まる。アルジェリアはまるで忍耐の時間。カウンターから時折チャンスも見せるが、多くの時間帯でエジプトがボールも陣地も支配。アルジェリア人内でゲームが進行する。


1-0のまま85分が経過。どうしても1点が届かない。この1点はエジプトにすれば希望の、アルジェリアにとれば絶望だった。 アルジェリアの巧みな時間稼ぎとカウンターで時間を経過させられてエジプトの選手は苦悶の表情を浮かべる。


示されたロスタイムは6分。歓声が上がるスタジアム。だが、アルジェリアの守備は堅くサイドからのボールは跳ね返され、前線の運動量も落ちずチェックもかかる。それでも、全てを捧げ続けたサポーターに奇跡が待っていた。


 


49分経過して、右サイドを突破したアブトレイカがエンドラインギリギリで中央にクロス。これは合わずアルジェリアDFに左サイドに跳ね返されたが、14番モアワドが再びクロス。 これに18番メテブが反応してジャンプ一番でヘディング。フワリと飛んだボールはゴール右隅に決まった。


 


観客は総立ちになり、選手も監督も第4審を振り切ってグランドに入り乱れての大騒ぎ。50分の事。残り1分なんてあってないようなものだった。あれだけ絶望を覚悟して静まり返っていたスタジアムは、祭りの様にどこもかしこも歓声が止まらない。


 


いつ試合終了の笛が鳴ったのかわからない程の歓喜の声の中で試合は終わった。アナウンサーは「インシャーアラー(神の御心のままに)」と連呼していた。アルジェリアサポーターは沈黙を続けるしかなかった。余裕があった訳でもない、舐めていた訳でもない。ただ、心の中で「本当にこんな事がアルジェリア?」と言いたげだった。


最後の一発プレーオフで白黒つけるしかなくなった。



クラブワールドカップで来日した時のメテブ






















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