ロナウジーニョに見るバルセロナの強さ

チャンピオンズリーグの開幕戦

バルセロナはホームのカンプ・ノウにレフスキ・ソフィアを迎えた。

 

 結果はご存知の通り5−0の快勝。まさしくシアターオブカンプノウと言う印象だった。

 試合中に降っていた大粒の激しい雨は、普通の考えであればバルセロナの得意とするレンジの長いグラウンダーのパス回しには不利だと思われる。しかしバルセロナの選手たちは僕なんかの浅はかな創造を簡単に打ち壊してくれた。

 まるで晴れた日に試合をしているようなパスサッカー。

 雨を不利と捉えていないのだろう。むしろ困難な状況でそれを上手くやることに楽しみを感じているようにすら思う。もちろん、雨のスリッピーな状況を上手く活かした低い弾道のシュートなどを多用するなど、いい意味での『マリーシア』も同時に見ることが出来た。昨今の日本サッカーに足りないと言われる『悪質なマリーシア』とは一線を画している。

 

 それでも試合は浅はかな僕の予想通りのバルセロナペースが崩れることなく、粛々と進んでいるように見えた。もちろん相手との実力差を考えれば当然と言えば当然。なるべくしてなる結果だったと思う。

 しかし、試合の終了する直前に僕は度肝を抜かれた。

 4−0の状況で、後半のロスタイムもすでに残すところ2分を切っている時、バルセロナの10番『ロナウジーニョ・ガウショ』が相手ペナルティボックスの右隅でボールを受けると、彼は1対1で相手を軽く半身かわすと、右足を振り抜いた。

 ボールは強烈な速さでゴールの左上隅に吸い込まれて行った。

 

 僕が驚いたのはシュートの弾道ではないし、かわしたステップでもない。

 4−0の状況で、試合終了間際に勝っているチームの人間が5点目を取りに行く。この行為の新鮮さに驚いたのだ。

 

 普通は4−0で勝っていれば残り10分くらいから、勝っているチームはボールを失わないように腐心するのがサッカーの常道だといつの間にか刷り込まれてしまっていたらしい。もちろんボールを失う可能性がある、シュートや無謀なセンタリングもご法度だと考えていた。しかし10番は違った。

 

 僕なりに想像すると、ロナウジーニョは雨の中でも応援に来てくれた満員の観客に対して夢の時間を90分間全て満喫して欲しいと思っていたのだと思う。もちろん本人のコメントでもないし、あくまでも僕の想像。でも、ロナウジーニョが5点目を取った時には、「今後のリーグを総得点で優位にするため」とか「次の相手にプレッシャーをかけるため』とか言う理由は一切思い浮かばなかった。そして、そう感じさせる事こそが、今のバルセロナの強さを一番底の部分で支える源なのではないかと考えた。

 

 クラブを超える存在になる。

 バルセロナのクラブモットーらしい。

 少なくとも、他の欧州の列強と比べてもバルセロナは何か越えているものを持ち始めている。

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