“キャプテン”的脱臼生活 その2 後編
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ドゥイ
2006年02月19日 00:09 visibility440
この1週間、手術のことばかり考えてきた。
いろいろな人から親身にアドバイスをもらった。
「一生のことだから、手術をしたほうがいいよ」。
「家族もいるんだし、自分だけの体じゃないんだから」。
「サッカーは怪我が治ってからすればいいじゃん」。
そのとおりだった。反論の余地なし。悩む必要なんてないはずだった。
だけど、バカな“キャプテン”はうまく自分の中で折り合いをつけることができないでいた。
昨年のリーグ戦終了後“セガワールド”さんが代表兼監督になった。
「真剣にサッカーがやりたい。サッカーを楽しみたい。だから、勝ちたい」。
新規メンバーの獲得、グラウンドの確保、会計など、運営面をはじめ、ピッチ上でも攻守の欠かせない歯車として、献身的にチームを支えた。
なあなあな雰囲気で、負けても「しかたない」の一言で済ますようなチームが変わり始めた。
「もっとディフェンスを押し上げて」「もっと近くに寄ってこないとパスが出せねえじゃん」。
試合中、今まで軋轢をさけるため、行われなかった意見交換が見られるようになった。
たまに、「楽しくやる」ことと「適当にやる」ことを同じような意味で使う人がいる。
「楽しくやりたいから、ミスしても何も言われないチームを選びました」っていうのはエンジョイチームだったらありだと思う。
でも、都リーグに参加して、高い登録費払って、毎週日曜日に試合が入って。
そこまでしてサッカーにこだわる人に、「楽しくやる」ことと「適当にやること」の違いくらいわかっていてほしい。
真剣にやるから楽しいんじゃん。真剣にやるから負けて悔しいんじゃん。
日本代表だって、草サッカーの補欠だって、それは同じだと思うけどなー。人生だって。
って話それちゃいましたね!“キャプテン”熱すぎ!はじらい。
そんなチームの中で、キャプテンも変わった。
結婚して子どもができてから、なかなか思うようにサッカーができなかった。
確かに仕事に、育児に忙しく、時間がなかった。
でも、それを言い訳にしていた部分もあったような気がする。
試合に参加できなくても、チームのためにできることはある。
コミュニケーション。ディスカッション。欠かせないパッション。
みんなが何を考え、どんな思いでサッカーをしているか。何を目指しているか。
それぐらい共有してなきゃ、チームメイトって言えないよね。
平日夜に、フィジカルを上げるためのフットサルも始めた。
22時半から0時。仕事終わり。育児終わり。サッカー始まり。
やる気のある新メンバーも、たくさん入った。サッカーの話もたくさんするようになった。
ようやく、チームが一つになりつつあった。「今年こそ」。
そんな矢先の脱臼。
「このチームでやりたい。みんなで昇格したい」。自分でも気づかないうちに、思いは強くなっていた。だから、手術の決断を迫る医師の言葉に、答えることができなかった。
答えは決まっていたはずなのに。
「すみません、もうしばらく考えさせてください」。
「じゃあ、月曜日に返事をください。手術をやるにしてもやらないにしても」。
そして病院を後にした。
無理してリーグ戦に出て、怪我でもしたら?
手術をするのが遅くなったため、後遺症が残ったら?
会社にも家族にも、これ以上迷惑を掛けるつもり?
それって、自分勝手なわがままじゃないの?
わかってる。よく、わかってる。
夜、日本代表の試合を観た。
大学時代、同じピッチに立っていた選手が、必死にボールを追いかけていた。
体を投げ出し、ただひたすら、ゴールを目指す。
「相変わらず不器用だな。ホント・・・」
光り輝くピッチの上、躍動する彼の姿を見つめながら、
熱くなった胸のあたりを、グッと押さえつけた。
試合の終わりを告げるホイッスルは、まだ鳴っていない。
- 事務局に通報しました。
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