続・ノンフィクション

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    2010年08月28日 06:14 visibility1798

* 昨日の日記の続きです

のちの世界チャンピオン・内藤大助に喫した手痛い敗戦は彼の心をも破壊してしまった。
あんなに練習熱心だった彼はただ体重を落とす為だけにジムに来るようになり、組まれた試合も惰性で戦い連敗。

やがて彼はリングを離れ引退とジムも発表した。

挫折・・・

あんな凄い子がたった一度の挫折で心身がこうも崩れるのかと、ボクシングの怖さを間近で感じました。

新しい道を見つけて頑張って欲しいと私は願いつつ、やがて彼を思い出す事もなくなりました。

それから約10年、スポ-ツ紙にボクシングの結果欄が載ってました。

何気なく見るとそこに彼の名がありました。

え? 何で?

しばらく理解出来ませんでしたが、彼は約10年のブランクを経て30歳にしてリングに帰ってきたのです。

あまりにもはかなく終わってしまった若い頃の夢がずっと燻っていたのかも知れません。

20〜30歳という最も脂の乗った10年間のブランクは致命的だし、復帰戦も6回戦でなんとか判定勝利でした。

そしてこの10年の間に彼はさらなる挫折を経験していました。

彼を知るすべての人は話を聞いた時は信じられませんでしたが、彼は刑務所に4年間服役していたそうです。

詳しい事は書けませんが、ボクシングの世界チャンピオンになるという一途な夢を失った彼は自暴自棄になりその手を罪に染めました。

刑務所の中では自分を見つめ直す時間が限りなくあり、ボクシングをやってた頃の自分に戻りたいと毎日泣いていたそうです。

服役中に父親も亡くし、彼に夢も希望もない時に知った真実。

かつて自分が敗れた内藤大助が世界タイトルを獲得した事を彼は刑務所の中の新聞で知りました。

32歳で世界を獲った内藤。
当時、26歳だった彼は

早く刑務所を出てもう一度ボクシングをやりたい。

彼を挫折に追いやった内藤はその時、彼の希望へと変わりました。

出所後、彼は黒い世界とは一切の縁を切り、ジムへと戻りました。
門前払いを食らう事も覚悟していたようですが、
元気だったのか? と逆に温かい言葉を会長に貰ったそうです。

さすがにすんなり復帰は出来ず時間は少々かかりましたが、関係者の恩情もあり10年ぶりにリングへ帰ってくる事が出来ました。

彼の復帰を知った内藤も試合前の控室を訪れ、激励に来たそうです。

その後、さらに2戦こなして1勝1分。

以前のようなスピ-ドは無く、ボクサ-としては痛すぎる10年のブランクを感じざるを得ませんが、精神的に脆かった昔より今の方が充実していますと彼は語っています。

犯した罪は消えないし、親父も帰ってこないけど、今は胸を張って頑張ってますと言える。
迷惑をかけた人達、そして親父にも今の自分を見て貰いたいです。

そして・・・

やっぱりチャンピオンになりたいです

彼・・・ 将生潤はそう語ります。

彼がチャンピオンになれるかは分かりません。

ですが、彼は今出来る事を必死でやっています・・・



おわり

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