オールドファンは見た!~選抜2日目・池田-海南

  • 仲本
    2014年03月23日 10:31 visibility1285


ほんの1か月ほど前、「レジェンド」という言葉がスポーツニュースをにぎわしました。ソチ五輪のスキージャンプで個人・団体と2つのメダルを獲得した葛西選手を評して使われたものです。ほらそこ!もう忘れてるでしょ!

 

高校球界において「レジェンド」といえば、徳島・池田高校を候補の一つに挙げてもよいのではないでしょうか。「山あいの子らに大海(甲子園)を」とノックバットをふるった名物監督。徳島で、四国で、甲子園で、何度も跳ね返されて出した結論は、「打って打って打ちまくれ」。白髪の目立つ年齢になって、監督率いる田舎の公立チームは当時の大会記録を塗り替える打棒でついに日本一の栄冠を勝ち取ります。この監督、名前を「蔦」と言いました。そう、甲子園球場の外壁に青々と繁る、あのつる草と同じ名なのでした。

 

「このごろは目も身体もしんどうてな。ノックがうまいことできんようになった」。

体力の衰えを感じた監督は退き、甲子園球場は改修工事に入りました。

 

甲子園を彩った、「蔦の時代」は去ったのです。

 

アルプススタンドに「IKEDA」の白いウインドブレーカーを着た生徒さんたちが入ってきました。

この子たちが生まれる前のお話です。

 

というわけで、選抜大会2日目第二試合、池田-海南を見に行ってきました。秋の四国準優勝校と近畿初戦敗退の学校の対戦、しかも海南の主戦投手は直前のけがで登板不可となれば…、

 

ところが試合はやってみないとわかりません。

 

5回に先制した海南は7回、二死走者なしから、ヒットで出た走者を盗塁で二塁に進めてタイムリー、というのを二度繰り返すという効率の良い攻めで2点を追加。3-0とリードを広げました。

対する池田は海南の背番号10・神崎投手の前に2回から6回まで走者を出せません。昔のような打棒を期待するほうが間違っているのですが、今日の池田はあまりに打てなさすぎないか。7回裏も無得点で終わると、「これはこのまま押し切られるのでは?」という雰囲気が流れてきました。私はライトポール近くの外野スタンドに座っていました。池田のアルプス席にも近いところです。

 

8回裏。先頭打者が2塁打を放ちます。久々のいい当たりでした。次の打者が代打ながら三塁線にバント。これがファウル。「送ってタイムリーで1点として、打者走者は残る。とはいえそれで追いつけるのか?」と思っている間に再びバント。これが三塁線いいところに転がって内野安打になりました。無死1、3塁。これで球場の雰囲気が変わってきます。

8番・名西がライトの前に落ちるヒットでまず1点。満塁から三遊間をしぶとく抜いて一点差。なお満塁のチャンスが続きます。一塁側スタンドは今にも同点、逆転という気分になってきました。

3番・三宅の打球は投手の足元をゴロで抜き、センター前に抜けるかという当たり。これを海南ショート・空山が横っ飛びで好捕。二塁を踏んでツーアウト、一塁転送でスリーアウトチェンジ。

 

あと1点足りません。

 

9回裏の池田の攻撃。先頭打者はなんとしても出塁したいところですが、初球を三塁線へのゴロファウル。過去2打席はいずれも三塁ゴロに倒れています。こりゃこの打席もひっかけて終わりかな、と思っていると、突如右狙いに転じてライトの前にライナーで弾むヒット。やったらできるやないか!

次打者のあたりはショート正面へ。併殺コース、と誰もが思った次の瞬間、いままで再三の好プレーを見せてきたショートがボールを弾き、1塁2塁オールセーフとなります。

あとの展開はご存じのとおり。オールドファン(苦笑)には懐かしい池田の校歌が甲子園に流れました。

 


































それにしても。ほぼ海南ペースだった試合が、8回以降の池田のチャンスにはスタンドの雰囲気がみるみる変わっていきました。甲子園に愛されるチームとはこういうものか…、とつくづく感じました。両チームとも内野の動きがよかったのが目を引きました。9回裏の池田の攻撃、実はサヨナラヒットの前に1、2塁から送りバントが一塁悪送球になっていましたが、ここも海南はきっちりカバーリングに入って事なきを得ています。

 

一夜明けて新聞記事を見ると、両監督の談話にはそろって同じ言葉が並びました。

「力以上のものが出た」。

(海南高校。アルプススタンドへのあいさつ終了後、一礼してグラウンドを去る)

 
















































 

 


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