早慶戦で考えたこと
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ムサベン代表T.KATOH
2020年11月09日 00:19 visibility379
3年前の春に
「慶應が勝てば慶應の優勝、負ければ立教の優勝という早慶戦」
をNHKで観ていました(注:六大学の対戦表記については「いろは順」に統一しますので早慶戦と表記します)。
チャンネルを回した時、慶應がリードしていたものの、終盤に入って早稲田が逆転。そのまま早稲田が勝ち立教の優勝をアシストしたという早慶戦以来のNHKでの早慶戦中継を見ました。
今回は
「慶應が勝てば慶應の優勝、早稲田が引き分け以上で早稲田が優勝という早慶戦」
でした。やはり見始めたのは慶應リードの段階。
慶應はスワローズの1位指名を受けたエース木澤を投入し、逃げ切りを図る。8回裏の慶応の攻撃でイーグルスの1位指名を受けた早稲田のエース早川はまだブルペン。
2アウトを取ったもののピンチの場面で漸く早川を投入。
ストレートでなんとか打ち取り、1点ビハインドのまま9回に入る。
https://twitter.com/t_katoh1985/status/1325325583660716032?s=21
ここで私がこんなことを呟いた。
木澤は簡単に2アウトを取り、優勝まであと1人。
バッターは期待の一年生ショート熊田。
木澤のボールを上手く捉えレフト前ヒット。
ここで堀井監督が動く。
https://twitter.com/t_katoh1985/status/1325326878161346561?s=21
やはりここで私はこんなことを呟いた。
刹那、慶應の生井が投じたボールを早稲田の蛭間が逆転ツーラン。
その裏を早川が抑え、早稲田が優勝した。
野球というのは(他のスポーツもですけど)、データだけでは推し量ることができない部分も加味しないといけないと思うのです。
以前「直感と論理には相互補完性がある」というところで打者のタイミングが合う球種を直感で…と言及しましたが、論理もクソもない100%直感と言うべきものが
「チームの士気」
だと思うのです。
2016年の大阪桐蔭高校の新チームの正捕手に選ばれたのは岩本という捕手でした。その岩本の好リードとエース徳山を中心とした投手陣でセンバツ出場を決めました。
ところがセンバツ直前に正捕手岩本にアクシデントが。
左手有鉤骨骨折。
これにより正捕手不在のままセンバツを迎えることになりました。
代わって正捕手になったのがキャプテンの福井でした。彼は元々捕手ではありましたが、内野手にコンバートされておりました。
岩本はデータ班としてスコアラーでベンチ入りし、福井は背番号3ながら徳山や根尾をリードし、なんとセンバツで優勝を果たします。
それ以降背番号2は岩本ではなく福井が付けることになりました。
理由は単純に「福井がマスクで公式戦で負けなしだから」でした。
大阪桐蔭ファンとはいえ、東京の人間である私が秋季大会を見ていなかったので、
「福井君ほどのキャッチャーでもハイレベルな配球をしていたのだから岩本君は一体どんな配球をしていたのだろう?」
と思っていたところ、夏の甲子園で背番号9をつけた岩本のマスクをやっと見ることができました。
ピッチャーはセンバツの際に急遽岩本に代わってベンチ入りしたため背番号2をそのままつけ、この大会では背番号11をつけた柿木(キャッチャーではない)。なんとほぼ全球ストレート。
打者に合わせてストレートに合っていないとみるやストライクゾーンに押し込み、ストレートに合わせているとみると打ちごろに見えるボール球で勝負をしていたのです。
「福井君には悪いが、自分は『どちらが正捕手?』と聞かれたら間違いなく岩本君と答えるだろうな…」
と感じたのです。
福井の配球の素晴らしさは何と言っても
「変化球の使い方が非常に上手い」
ことで、裏を返せばストレートも使い方が上手いのですが、ストレートと変化球ではより変化球が上手いという感じに思えるのです。
逆に岩本の配球の素晴らしさは
「ストレートの使い方が非常に上手い」
こちらも裏を返せば変化球も使い方が上手いのですけれど、なんですが。
変化球とストレートだとどちらが打ちやすいのかといえば、ストレートです。
故にストレートで打ち取られるというのは、かなりチームの士気が落ちると思います。
そうなると必然的に「ストレートで打ち取れる配球ができる捕手」を正捕手にすると相手の士気を低下させ、より自軍を有利な状況に持っていけると思うのです。
今年から早稲田の正捕手は岩本、慶應の正捕手は福井と同じ高校の同級生の捕手同士が勝った方が優勝を決めるという早慶戦でホームを守り続けるという、恐らく長い東京六大学野球の歴史の中でもはじめての出来事だったのではないでしょうか。
やはり今日の早慶戦でも福井の配球は本当に素晴らしく、特に「ここぞ」というところの変化球の使い方が本当に最高のものでした。
対する岩本も岩本で、配球に関しては本当に素晴らしく、「岩本、福井の両捕手の配球は甲乙つけ難い」と言えるほどでした。
8回裏の慶應の攻撃で2アウトから早川投入で岩本はストレートを続けて打ち取りました(危なかったけれど)。
ストレートに振り遅れていたので続けてもいいなと思いきや鋭いあたりをレフトに持って行かれたのですが、なんとかアウトになり逆転を信じます。
この魂のこもった直球勝負が流れを早稲田に引き寄せたのだと思うのです。
しかしそこを打ち砕こうとしたのが、木澤-福井バッテリーだったのです。小気味良く2アウトを取ると1年生ショート熊田にヒットを打たれます。
ただでさえ1年生が同点のランナーとするレフト前ヒットを放って早稲田がノっている状態で木澤を降板。早稲田としては
「エースを引き摺り下ろしたぞ!!」
で士気がかなり高まっていました。
そしてピッチャー交代してすぐ、逆転2ラン。
データ的には左対左でおまけに変則フォームの防御率0点台。しかも前日にホームランを打たれているということで交代は適切だったと言えると思うのですが、早稲田の士気の勢いに呑み込まれていってしまった感じがしました。
ハッキリ言ってこの士気というのは顕在化しないものですからデータなどの根拠を求められたり、具体的に数値化できるようなシロモノではありません。ですが、エースというのは、相手チームの士気の高まりを断ち切り、自チームの士気を高めることができる存在なのかなと思うようになりました。
バッテリーは如何に相手チームの士気低下させるのか。
色々と勉強できた素晴らしい早慶戦だったと思います。
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