公立の近畿大会覇者　（富田林高校）

この写真は昨年の高校野球秋季近畿大会のパンフレットです。毎年秋の近畿大会ではこのようなパンフレットが試合会場で販売されています。（表紙のデザインは年度ごとに変わります。この時は大阪開催でした。） 

一枚目をめくるとご覧のように年度ごとの決勝戦のカードとスコアが列記されています。昭和23年から平成22年までの決勝戦が書いてあります。

これでみると大阪府の公立校が近畿大会を制覇したことが過去に2回あったのがわかります。

昭和28年の泉陽高校、そして昭和33年の富田林高校です。

泉陽高校は以前に古豪シリーズの「才女とシンデレラの母校」というタイトルで取り上げたことがあります。かつては女子校だったのが学制改革で共学校になって僅か5年ほどでセンバツに出場したという公立校でした。

そして今回は残る1校、富田林（とんだばやし）高校について取り上げます。

 

この学校の歴史は大変古く、明治34年（1901年）に大阪府第八中として設立されました。何と110年以上の歴史がある伝統校です。

校名は設立間もなく「富田林中学」と改められたそうです。そしてこれ以降の大阪の新設校は数字ではなく地名で学校名が付けられていったようです。

昭和23年（1948年）には学制改革で共学の「富田林高校」となりました。（それ以前は男子校。）

 

あれよあれよと言う間に勝ち進み、決勝では強豪・平安高校を倒して見事近畿大会優勝を遂げた富田林高校。

しかし甲子園では初戦で敗退。残念ながらこれ以降、大阪の公立校が近畿大会を制覇したことはありません。これが最後になるのか？それともいつの日か大阪の公立校が近畿王者に輝く時がやって来るのか？

それはある意味奇跡のようなものでしょうが、ミラクルというものは突然やって来るものですから夢は持っていたいです。

 

ところで富田林の校章はこんなデザイン。六稜星（りくりょうせい）の中に菊水の紋が入っています。

六稜星はもう何度も取り上げましたね。大阪の歴史の古い学校に共通するマークで、「中等学校」の「中」の文字を星形に変形させたデザインなのです。これを使用しているイコール伝統校というわけです。（一部例外的に六稜星を使用していない伝統校もありますが。）

そして中の「菊水」はこちらもいわれのある紋です。

南北朝時代を描いた「太平記」の主要登場人物、「楠木正成（くすのき　まさしげ）」が後醍醐天皇から授かった家紋なのです。菊は天皇家の紋章ですから、それを与えられたというのは凄いことです。

楠木一族はこの富田林をはじめ、南大阪一帯を治めていた豪族で南北朝の動乱時に活躍した地元の英雄なのです。それを慕ってこの紋を校章に採用したそうです。

 

学校のすぐ横はこんなのどかな風景が広がっています。もうちょっと南へ下ると「千早赤阪村（ちはやあかさかむら）」という大阪府唯一の村もあります。

 

こちらの正門部分の校舎は最近新しくなっています。

 

偶然ながらこの日はグランドで何か試合のようなものを行っていました。

他校との練習試合なのかそれとも紅白戦か実戦形式の練習だったのかは遠目だったのでわかりませんでした。

ただ、選手が着用していたユニフォームのマークが2パターンだったので紅白戦か実戦的な練習だったのでは？と思います。他校との練習試合でマチマチなマークのユニを着るのはおかしいですからね。また、他校との練習試合の解禁には時期的にまだ早いようにも思えます。

ユニフォームのマークの一つは漢字で「富田林」、もう一つはローマ字で「TONKO」でした。

「富高（とんこう）」というのがこの学校の略称（通称）だそうです。

おそらくは漢字の方が公式戦ユニでローマ字の方が練習試合用ユニではないかと思います。

 

 

（↑　その後、夏に富田林高校の試合を観戦する機会がありました。漢字のユニフォームが公式戦用でした。結果は残念ながら初戦でコールド負け。相手が強豪の柏原高校でしたのでやむを得なかったですが。）

 

ところで富田林高校からはこんな不思議な塔が見えます。何だかお分かりでしょうか？

関西在住の方ならすぐに分かるでしょうね。答えはPL教団の平和塔です。

高校野球で誰もが知っているPL学園。その教団本部が近くにあるのです。PL学園の校舎はもっと北側ですが、すぐ近くに甲子園で名を成した全国レベルの学校が存在するわけです。

近くて遠い甲子園。

そして甲子園へ行くためには目の前にあるこの強豪を倒さねばならないのです。更にはPLだけではなく、大阪には私学の強豪校が多数存在します。大きな壁をいくつも越えて再び甲子園の土を踏むことが出来るのか？

グランドで躍動する富高球児に心の中で「頑張れ！」とエールを送りながら立ち去りました。