我的愛球史 第54話 「猛牛最後の優勝」


 2001年、当時の関西3球団のうちのひとつ大阪近鉄バファローズが、その歴史の中で最後の優勝を飾りました。

 近鉄はこの年、西武、ダイエーと三つ巴の優勝争いを繰り広げ、数々の名勝負を残しました。

 僕が印象に残っているこの年の近鉄の試合は3試合あって、まず8月3日の岩隈久志投手のプロ初完封勝利。

 あの時は今とフォームが違って、

 「あんなテークバックでよくボールが走るもんだ、不思議なピッチャーだ」

 と思って見ていました。今や日本を代表する投手になりましたね。

 そして、9月24日のタフィー・ローズが55号ホームランを打った試合。

 この試合はローズ選手の日本シーズン本塁打タイ記録として記憶に残っている・・・だけじゃありません。

 近鉄は西武に4-6で2点のリードを許し9回裏の攻撃に入りました。

 西武のピッチャーは松坂大輔。

 北川博敏選手(元阪神)がソロホームランでまず1点返します。

 そして、2死一塁の場面になりバッターは中村紀洋。

 松坂投手の渾身の投球をライトスタンドに打ち返しサヨナラ2ラン!

 肩を落とした松坂投手の姿が今も目に浮かびます。

 これが松坂投手のプロ初のサヨナラ被弾でした。

 そして、もうあと1試合は言うまでもないでしょう。

 9月26日の北川選手の代打逆転サヨナラ満塁優勝ホームランです。

 僕は近鉄球団がなくなってから2度、大阪ドームにオリックスの試合を見に行きましたが、レフトスタンドを見るたびに

 「ああ、あそこに北川選手が優勝ホームランを打ち込んだんだな・・・」

 という感慨を抱きます。

 あの年の近鉄は弱い投手陣を助けて打線が本当によく打ちました。主力の数字を並べるだけでも・・・

 大村直之 .271 16本塁打 53打点
 水口栄二 .290 3本塁打 30打点
 T.ローズ  .327 55本塁打 140打点
 中村紀洋 .320 46本塁打 132打点
 磯部公一 .320 17本塁打 95打点
 吉岡雄二 .265 26本塁打 85打点
 川口憲史 .316 21本塁打 72打点

 すごい打線です。

 圧倒的な打線が弱い投手陣を補った1985年の阪神と2001年の近鉄の優勝は、プロ野球の歴史の中でも異色の優勝だと思います。

 チームをマネージメントする立場からすれば、極端にオフェンスが強くてディフェンスが弱いチームはリスクが大き過ぎて編成し辛いことこの上ないでしょう。

 ゆえに、この様な超攻撃型チームは長期戦略で練り上げられたものではなく、「たまたまこの年はこういう戦い方しか選択できなくて、一生懸命やった結果が優勝した・・・」という偶然の産物だと思います。

 しかし、打ち勝つ野球の華やかさはファンを酔わせます。

 そして、その幸福な記憶は年を増すごとに味わい深くなる極上の美酒のように、ずっとファンの胸で熟成されていくのです・・・。

 

 































































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