漢。

先制点はオーストラリア。後半、右CKを途中から入ったキューエルが鋭いキックを入れ、ニアの選手は両チームとも触れず、ファーに入ったアロイージがゴールゲット。
日本はすぐに左サイドの俊輔からファーサイドの巻へ。
何とかヘッドで折り返したが、オーストラリアディフェンダーのクリア、と思いきやこれをミス、転がったボールに体を入れた高原が振り向きざま強引に右足で巻き込むようにシュート!
と思ったらそれはキックフェイントだった!
切り替えしてから落ち着いてニアサイドをぶち抜いて同点。

後半30分頃に相手MFグエッラが高原への肘うちでレッドカードになり、
退場になってからが見所の一つであった。
残り時間、および延長を考えて、セットプレイあるいはPK戦で何とか勝利をもぎ取ろうとしたオーストラリア。往々にして攻めていて、かつ攻め切れなかったチームがPKで負けるというのは
不思議ながらかなり高い確率で起こる現象だ。
あれはイエローではなかったかとは思ったが、残り時間、体の大きいオーストラリア選手ががっちりとゴール前を固め、PKまで持ち込むという展開が見えてきた。
ゴール前での判断力、落ち着きなどが欠けて案の定のPK戦。

展開から予想すると理性的には難しい、と思ったけれども感性的にはなぜか「問題ない」と思っていた。
川口が相手キックを2本止め、日本側は高原以外の全員が決めて準決勝進出を決めた。

以下個人採点
川口7 PK、最初の2本止めたところで勝利を確信。「ミスターアジアカップ」と今後は呼ばれるかもしれない。
加地5.5 よくアップダウンしたが判断の遅さ、ゆるいクロスなどでチャンスを作れず。
中澤7 感動的な出来。インターセプト、カバー、攻め上がりなど鬼神のごとき活躍。
阿部6.5 カードをもらったプレイ以外は完璧に近い出来。
駒野6 逆サイドの加地と比べるとアグレッシブさがあるのが良い。
啓太7 相手の攻撃をディレイして、オーストラリアの攻撃を無効化。
憲剛6.5 ミスもあるが勇気のある攻撃を見せた。確かブレシアーノ、に簡単に振り切られたシーンは要反省。
俊輔6 プレイが遅いところもあったが要所でいい仕事。ディフェンスも頑張った。
遠藤5.5 この大会に入ってからは一番良くない出来。ボールロスト、ミスパスなどらしくないところがあった。
高原6.5 値千金とはこのこと、というべき同点ゴール。
巻6 一時期に比べるとミスが減ってきている。前線でよくプレッシャーに耐えた。
今野5.5 上がってからの工夫に欠けた。
寿人5.5 最初に良いチャンスを作ったが憲剛からのスルーパスではストライカーらしからぬプレイ。
矢野は略。

アジアカップという舞台はもちろんW杯よりずっと小さな舞台ではあるし、
昨年のリベンジというよりも今後に向けてどんな内容の試合が見られるか、
と思ってみていたが感動する試合だった。
中澤の出来は素晴らしかったし、阿部は前半の途中くらいから何度か足を引きずるようなしぐさを見せながらも体を張り続けた。啓太は集中力を切らすことがなかったし(これはシンプルなことだが他のどの選手も出来ることではない)、憲剛は何度も体をぶつけられながら、立ち向かっていた。昨年のW杯はもちろん、ズィーコ時代のアジアカップ、と比べても技術、戦術、精神的に満足度の高い試合だった。
またオーストラリアは精度を欠いたプレイも多かったが、
力強いディフェンス、人数が少なくなってもあきらめずに唯一取りうる戦術を必死に
遂行していて、やはり良いチームだった。
それでも世界のトップクラスではなく、セカンド、のその次位か。
加えて、日本が移動なし、アジアの戦いにある程度なれているのに対して、
オーストラリアは初めてのアジアカップ、移動もあった。
まだ単純に日本の方が強いとは言い切れない。
しかしこの試合で何人もの選手が見せた漢の意地が、
少しずつでも日本を良いチームにしていくと思える試合だった。

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