「56歳、タイムリーヒット」に追いつく

  • 虎男
    2017年05月28日 23:06 visibility298

私の職場は大勢のボランティアの方たちと一緒に働いている。その大勢の中に70歳を越えてがんばっていらっしゃった方がいて、その方は4年前に癌を患い、そして3年前に他界されてしまわれた。その方は陽気で野球が大好きで、ご自身が学生時代には早稲田大学の準硬式野球部にいらしたそうだ。その方が良く言ってらしたのが、「俺は56歳まで草野球をやってて、その56歳の公式戦の中でタイムリーヒットを打ったんだ。」

 

このセリフを何度聞かされただろうか。だが、野球好きな私はそのボランティアKさんと気が合い、野球の話をするたびに、草野球の面白さや楽しさを短い時間ではあったが、おしゃべりをするのがお互いに好きだった。その方の言葉「草野球の試合に56歳でタイムリーヒットを打った。」がいままでずーっと私の頭の中でリフレインする言葉だった。そして56歳になってのシーズンが今年の4月に幕開けとなり、隔週の土曜日の活動ではあるが、8試合を終えたところになる。私の成績はと言うと、開幕戦から「快音無し」で、全くのスランプである。

 

6試合を終えて打率は000の状態が続き、三振もかなりしている。これがチームの元4番打者とは到底思えない数字だ。「必ず打つ、打ってやる!」と思っていたのは、このボランティアKさんの言葉があったからという理由が強い。彼が打ったのと同じ年に到達したので、絶対にここで快音を残してやる。タイムリーを打って56歳の記念の「タイ記録を」と試合前に念じたのが良かったのかもしれない。

 

通算7試合目の最初の打席でその「機会」はやってきた。しかも2点をリードされて1点返して無死死満塁と言う場面で、私の前の打者が三振。そこで私はいつものように右バッターボックスへ歩を進めた。ヘルメットをかぶり、愛用の木製のバットと白いバッティング手袋をつけて緊張感を押し殺すようにして、審判と相手チームの捕手が待つバッターボックスへ。

 

投手はスライダーを多投してくる長身の投手で、私としてはあまり対戦したことが無いタイプである。この打席どういうわけだか、色々考えなかった。まずはランナーが満塁であるので、最低限外野フライを打つことを心がけ、高めの球が来たら狙って打つ。二球目にその球は来た。予想していた高めの球にバットを振り切ると、ライナーで右翼線へ。ライトの選手がワンパウンドして捕球したのを見て、ファーストベースを足でタッチしてすぐにファウルラインの方へ駆け抜けた。当然、サードランナーはホームインしていたのは見えなかったが、セカンドにいたら2点目のランナーがスライディングもせずに本塁生還していたのを見られたので、今季初の2打点ゲットで56歳のボランティアさんの記録においついたことになる。

 

野球とはおもしろいもので、こんな年齢的な部分での意地の張り合いと言うか、目指す目標にすることもあるってことだ。天国で見ているボランティアのKさん。私はやりましたよ。追いつきましたからね。2打点ですよ。

ありがとうございました。

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