「捕手は過去に苦労してこなければ、大成しない?」=「昭和のお家のために耐えるつつましい嫁さんのような存在」

  • 虎男
    2017年09月03日 18:06 visibility264

面白い批評があったので、備忘録として書き留めておきたい。日本一のキャッチャーは誰だと言われれば、私はまず「野村克也」を私はあげるだろう。650本のホームラン、日本一経験の多さ、そして三冠王を取った捕手は彼以外にいない。さらに言えば「生涯一捕手」と言うだけの守備の実績、そして監督になってからの野球の知識の豊富さ。誰が彼を抜ける捕手になるのか。古田も谷繁も伊藤も及ばない。これだけの実績を持ってこそ、あれだけの書物を書いて、人々が「野村は今度は何を言いたいのか」と思わせ、彼の本を購入する人間の多いこと。彼の巨人小林の評を聞いたり読んだりするとろくなことを言ってない。「過去に苦労をしてきていない捕手は大成しない。」と言うのが、野村氏の持論らしい。小林の野球歴を見たら、ぴか一の球歴だ。広島広陵高校、同志社大学、日本生命、巨人ドラ1位、エリート路線を歩んで来た「エリート捕手」だと誰もが感じる。しかし、片や「雑草のごとく這い上がって来た捕手」宇佐美慎吾捕手は市柏高、城西国際大、巨人ドラ4位で、誰が見ても小林との旧暦の差は歴然。野村氏が言うには「良い高校、大学でやってきた捕手は投手に助けられて、自分が配球ミスをしたところで、打たれないケースも多々あったはず。投手の力で勝ち抜けたことが多々あったはずだ。そうなると、配球で苦労をしたと言う過去が、弱小チームから来た捕手とは雲泥の差で、打たれた根拠となぜ、この球を投げて打たれたのかの分析が甘くなる。そこには、投手の力で打者をねじ伏せてしまったと言う捕手が気が付かないできてしまった負の財産を蓄積してしまっている場合もある」のだと言う。

 

 

確かに、捕手のインサイドワークに「根拠」が無いボールを投手に要求しているケースは多いだろう。根拠の無い初球と言うのはプロでは考えられない。これだけデータがはっきりどの球団ももらさず画像にして、スコアラーが分析し、そして各正捕手には確実に連絡が来る。シミュレーションをするだけでも、かなりの時間がかかるだろうが、先発投手の持ち球、性格、ウイニングボール。牽制のうまさ、クイックモーションの速さ、緩急がつけられるのか否か、コントロールの良し悪しなど把握しておかねばならない。そして対戦相手チームの打者のどこを見るのか。最近の打っているボールの傾向。そしてカウントが若い時に打つケースが多いのか、もしくはその逆か。どのコースのボールを得意とするのか。好きなコースには投げないと言うのではなく、リスク覚悟で得意コースのボールで少しだけはずしてバットを振ってこさせると言う技術があるのかないのか。そしてどのボールを選択するのか。投手はどのボールが得意球としていて、このバッターのカウントによって、どこでそのボールを投げさせれば良いのか。状況の把握もしておかねばならない。上位打線から始まるイニングなのか、下位打線からなのか。そして、一番気を付けなければならない打者は誰なのか。調子の上がっている打者と、調子が下降気味の打者を頭の中に入れ、調子の悪い打者の前の打者でイニングが終わるようにしていく必要がある。なぜなら、先頭打者が調子が悪い打者であれば、そのイニングのワンアウトは取りやすくなる。捕手は、投手が投げる事前に投手に投げさせるボールを指示する「司令塔」である。そして、投手の力が弱ければ、頭を使わなければならないポジションであり、常に打者の裏を書かなければならないことになる。苦労は配球になるのは明らかだ。なぜ、良い捕手が入れ歯チームの大半ができたことになると野村氏が言うのは、捕手以外の野手が司令塔になるわけが無いからというのが理由だろう。

 

投手力の弱いチームの捕手は苦労をする。投手が何を投げても打たれてしまう。そして無駄な四死球を出してランナーを貯め、そして盗塁をやすやすと許し、外野フライで簡単に1点を献上してしまうケースが多々あるからだ。ヒットで取られる失点と、外野フライでやられた時の失点は、おそらくだがアウトを取っているのに点数を取られた方がチームにとっては「やられた感」が強いはずだ。時にはヒット1本も打たれていないのに得点されてしまうケースはもっと嫌に感じるだろう。四球で走者を「タダ」で生かし、いきなり二盗でスコアリングポジションに到達され、バントで走者三進、一死三塁で犠牲フライで1点。3人の打者が一人も打数が記録されない。ヒットも無いのに3人で1点取ったと言うことになる。弱いチームは、このようなケースに自分たちで攻撃している相手チームにサポートとアシストしてしまっている。下手をすると二盗時にベースへ入った遊撃手がエラーをして、その間に二進した走者が三塁まで陥れて無死三塁なんてケースになる可能性もある。そこへ犠牲フライで1点取られたら、打者2人で1点取ったことになり、まずます傷口は広がっていく。そんな時の捕手の気持ち、そして捕手の考え方は「苦しい台所事情」をどう切り盛りするかと考える主婦とよく似たものであることは間違いない。

 

宇佐美は小林の球歴と違い、まったく表街道を歩いてきていない。と言う事は、捕手の力量を見極めてスカウトがドラ4で取っておく必要があると考えたのであろう。苦労を知っている捕手宇佐美がどれだけ、協力投手陣を持っていたとしても、過去において弱体投手たちをどのようにリードしてきたかの「財産」が彼にはあると言う。逆に言えば、小林のような花形街道を歩んで来た捕手が、壁にぶつかった時に「投手が悪い」と言うような発言をするようになれば巨人としては、宇佐美のような雑草魂を持った捕手を正妻にしていくのはやむを得ない。昔の昭和の嫁さんの鑑のような「夫を立てて、自分は身を粉にして陰で夫を支える仕事を続けて行く。でしゃばるでなく。つつましやかに、目立たず、文句も言わず、お家のための奉公精神。」これが一流の路線を通って来た「花形捕手」が務まるわけが・・・・・今後の巨人の正妻争いに注目したい。

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