【高校サッカー】高校総体福岡県予選福岡地区１部（３）

武蔵台－筑前の公立高校同士の対戦です。

先程の第２試合が、サッカーの練習で鍛えられたサイボーグのような体躯の選手ばかりだったのに対し、この試合は両チームともいかにも普通の高校生、という感じです。

ここまで武蔵台は１勝２敗の勝ち点３・筑前は３敗の勝ち点０ですが、３試合とも０－１の残念は敗戦です。

この試合はサッカーのプレイよりも大事なものをいろいろ感じる試合となりました。

試合展開を追いながら紹介したいと思います。

前半は一進一退の展開のなかで、20分過ぎから武蔵台が10番・11番の連続ゴールで２点を先制し、ディフェンスも小柄なＧＫが筑前の決定機をことごとくファインセーブし終了します。

当然先制された筑前の監督は機嫌が悪いのですが、勝っている武蔵台の監督も、審判が足がかかってないのにファールとジャッジされたり、逆に足がかかっているのにノーファールと言われたりして、直接審判にクレームをつけるなどして序々に機嫌が悪くなり、何かそのツケは一部の選手に及び、この試合は途中からグラウンド内には選手の声よりも数倍大きい監督の怒声ばかりが飛び交う展開となります。

１０分のハーフタイム中、武蔵台の選手はずっと椅子に座った状態で、監督の独演会状態でした。（写真は試合開始前のものですが、これと同様の光景がずっと続きました）

　後半に入ると開始早々から試合が大きく動きます。５分すぎに筑前はコーナーキックに９番の選手がヘッドでゴールを決めて１点を返します。その時に、武蔵台の監督はディフェンスのポジショニングが悪かった選手（この選手は前半からよく指示されていたのだが）をピッチからおろし、ものすごい剣幕で一喝します。その選手はその後、ベンチの端でシャツを顔から被り試合終了まで塞ぎ込んでしまいました。

　一方、その直後には今度は筑前のＤＦがイエローカード２枚で退場になります。その選手も、責任を感じたのかチームのベンチから遠く離れたところでやはり１人で伏せて、彼も試合終了までチームの輪に加わろうとはしませんでした。

　その後、試合は落ち着くことなく進展します。後半17分に武蔵台がコーナーキックから上がっていたＤＦ３番のゴールで３－１となりましたが、あきらめない筑前は25分に１点目とほぼ同じコーナーキックのボールに11番がヘッドでゴール、さらに人数が少ないながらも攻勢を続け30分にはついに10番の選手が同点ゴールを決めます.。

　その後の試合はさらに白熱というか、混乱し、両チームの選手がロングパス１本で相手ゴール前になだれ込む展開が続き、決定的チャンスの繰り返しになるという関係者が見ていたら心臓が止まりそうになるシーンが続くのですが、１対１のチャンスを何度か外し同点のまま終了しました。

　この試合を荒れたものにしたのは審判のジャッジもあったかもしれませんが、やはり監督の影響でしょう。選手たちがすっかり自信を失くし、とにかくゴールに向けてパスを出して点を狙うだけで、自分たちで「サッカーを作る」という意識がなくなっていたように思います。

　特に、武蔵台は普通なら勝っていた試合でしょう。勝てなかった理由の１つには、ハーフタイムの過ごし方があったのではないか、と思います。選手が監督の話を緊張して聞くだけで、本来ハーフタイムにすべきである休養・リラックス、選手同士の会話、戦術の立て直しがなかったのが、同点に追いつかれ、最後はほとんど足が止まってチャンスを物に出来なかった一因のような気がします。

　ただ、普通の公立高校が強豪私学と同じ１部リーグにいるというのは本当に大変なことで、これは両チームの監督の先生がしっかり指導しているからに他なりません。今日はたまたまいろいろな要素が重なって、それが悪い方向に出ただけでしょう。

　筑前高校は退場者を出しながら、その後気迫で同点に持ち込みました。退場した生徒はチームメートのプレーに感動し、仲間に感謝の念を抱いたのではないか、と思います。このような厳しい試合を１つひとつこなしながら、チームワークは醸成され、仲間意識が強くなっていくのだな、と思いました。

　武蔵台の一喝された生徒も、周りのチームメートからいろいろ声をかけられ、試合終了後にはだいぶ元気になっていました。

　２人とも、たぶん今頃はＧＷにあったことなど忘れて、元気にサッカーボールを蹴っていることでしょう。ぜひ、今後の試合で大活躍することで、仲間・監督に挽回して下さいね。