近代サッカーの「縦に速い」サッカー


2014Wカップ以降、少ないパス本数で相手ゴールを脅かすスタイルが主流となっていますが、早く前への推進力を高めるためにどうすればいいか、それと早く前へボールを運ぶための個人戦術について考えてみました。


まず、我がチームでもよく見受けられる光景ですが、早く前へボールを運ぼうとするあまり、アバウトな縦へのロングボールを多用する傾向があります。これは「縦への速い仕掛け」ではなく、ほぼダイレクトプレー或いはパワープレーとなります。

ダイレクトプレーならまだいいですが、パワープレーになると折角奪ったボールを簡単に相手に渡してしまうリスクが大きくなります。

また、比較的プレスの弱いサイドだけで縦パスを組み立てると、早く前へは進めますが相手の「目線」を変える事ができず、更に最後は単調なクロスしか攻撃の選択肢しか残りません。


前への推進力を高めるためには重要なことは、


 ①攻守の切替を早くする

 ②前方のスペースへのフリーランニング

 ③「クサビ」のパスの意識(単調な縦パスではありません)


①と②は、「スピードとスタミナ」を無視すると意識すれば誰でもできることですが、③については「個人」だけの意識ではダメです。受け手の能力も関係してきますし、出しての勇気も必要になります。しかしこの「クサビ」が入らない限り、どれだけ速く縦へボールを運んでも相手を崩すことはできませんし、バリエーションに富んだ攻撃も不可能です。


但し、主に「クサビ」を受ける選手のポジションは中央が多く、ゆえにプレッシャーも激しいことは言うまでもありません。パスを出そうとしても、すぐ背後に相手がいると出し手が縦パス(クサビ)を躊躇し、リスクを恐れて横パスを出すことも多くあります。

しかし、このクサビのパスが入る(成功する)かどうかで、その後の局面は大きく変わります。当然失敗すると悪い方向へ変わります。


ここで考えて頂きたいのは、リスク管理(リスクマネージメント)」という言葉です。

近年サッカーでも良く聞く言葉ですが、少々間違った解釈をされている方も多くいると思います。リスク管理とは「リスク回避」ではありません。前述であれば「縦パスを躊躇し横パスを出す」事は、ただのリスク回避です。ここでリスク管理するとすれば、「後方に残っている相手人数<味方の人数」、「パスの受け手のプレー(パス)の選択肢の数」、「パスを出した後のサポートスペースの広さと数」など、パスを出した直後のボールを奪われる可能性の低減と奪われた場合の対応を考えなければいけません。


もし、ボールを奪われた場合、


「後方の相手人数<味方人数」であれば、数的優位を確保できています。

「パスの受け手のプレーの選択肢の数」が多いと言う事は、周りに味方が多いはずなので速いプレスに行くことができるはずです。

全てにおいてこれが当てはまる訳ではありませんが、要は奪われても奪い返すまでのアクションに時間が掛からない状況を「準備」しておくと言うことです。


これは、個人戦術の中の「周囲の状況を確認して次のプレーのイメージを持つ」と言う事で、攻撃はもちろんの事、奪われた時のディフェンスについても同時にイメージしておく事も含まれます。

また、クサビのパスを出す時「バウンドしたボールを出さない」、「背後の相手選手がマークしている方向と逆の足にパスを出す」などの配慮も必要です。

これはそれぞれ個人戦術の中の「ボールはバウンドさせてキープしない」、「できるだけワンタッチでボールコントロールする」と言う事を、相手の立場に立ってパスの出し手として「思いやる」事をプレーで表現したものです。


グダグダと書いてしまいましたが、要点をまとめると、


縦へ速い攻撃とは

①ダイレクトプレー、パワープレーではない。

②プレスの比較的弱いサイドだけの縦パスで攻撃を組み立てない


縦へ速い攻撃を行うには

①攻守の切替を早くする

②前方のスペースへのフリーランニング

③「クサビ」のパスの意識


クサビのパスを成功させるには

①受け手の技術(能力)と出し手の勇気(状況判断)

②リスクマネージメント

③個人戦術の理解と配慮


チームの戦術によりやり方は変わると思いますが、選手個人の意識としてはほぼ同じではないかと思います。縦パス、特にクサビのパスはリスクの伴うプレーです。しかしこのパス無くしていい攻撃は生まれません。


勇気(心)・技術(技)・運動量(体)を充実させ、クサビのパスにチャレンジしてみましょう!


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