補強の対極にあるもの。
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DIME
2007年12月30日 14:24 visibility188
なんだか、その大前提をしてズレてる新聞記事が多いなぁと感じます。
こちらの産経新聞の記事(育成の巨人どこへ ラミレス2年10億、総額20億円大補強)とか、こちらの毎日新聞の記事(<巨人>大型補強の手法、「若手育成路線」に逆行?)とかね、的外れだなぁと。
今年の春先に書いていた内容ですが、改めて触れておきます。
よく補強をして育成の対極であるかのように語られますが、実際は育成とは補強の一手段に過ぎません。ドラフト、FA、外国人、トレード、それら補強の中の一部を指しているものです。
では育成の対極にあるのは何でしょうか。育成に必要な資源が何であるかを考えてみればおのずと答えは出ます。
育成に必要なのはまず選手(=選手枠)、んで育成機会です。機会とはすなわち試合への出場頻度になります。若手に優先的に枠と機会を回しているとどこに皺寄せが来るか。ベテランのそれに来ます。
今販売されている週ベの最新号でしたかね、鹿取氏と水野氏の対談で出ていましたが、清水が怪我から復帰してきた頃、若手を優先的に出場させていたチーム事情がわかっていたので、2軍の試合に出場したいとはなかなか言えなかったというエピソードが紹介されています。それが良い事なのか悪い事なのか、どちらを優先すべきなのかは別としてこうやってバッティングするわけです。
つまり育成の対極にあるのはベテランの処遇だといえるでしょう。育成を目指すためには何をするべきか、ベテランをしっかり切ることが必要です。
例えばドラフトで指名した選手のうち、一定以上の打席数、登板数を残した選手の割合でいうと西武がもっとも高いのですが(そのデータが載っていた雑誌を転居で行方不明にさせちゃったので具体的な数値はいえないのですが)、その西武は結構中堅選手、ベテラン選手を思い切って切りますよね、小関など典型、今年の柴田もそう、その選択があながち間違いでもないのは柴田のトライアウトの結果から明らかです。ちなみに巨人は12球団中4位だったと思います。
また、育成機会といっても、私は「1軍での出場」は本質的に育成の機会であってはならないと思っています。そこは育成の機会ではなく、最低限でも「可能性があり期待できる選手のテスト」の場であると思います。
1軍での「育成段階にある選手の出場機会の減少」を「育成が疎かになる」と表現することは間違いだと私は考えています。
これまでの巨人はFA補強をしたにもかかわらず、同時にベテランの放出をすることがありませんでした、補強そのものではなく、補強後の対応、それが弱体化の原因となったのです。
補強をした事そのものが問題となったかといえばそうではなく、FA補強によってベテランの数が増えたにもかかわらず、その調整をしないことで全体の機会に含めるベテランの割合が増加し、育成が疎かになって弱体化したわけです。
自前のベテランと外側のベテランと2つの選択肢があり後者が優れていればそれを選択するのはチームを強化するなら当然の行為です。
ただそれに付随して劣る方の自前のベテランはちゃんと放出しなければいけない、それを疎かにしたことで、育成に対して皺寄せが来ていたわけです。
どれだけ外から補強をしようとも、その時に内部の選択肢と外部の選択肢がってその優れたほうを選び、劣る方を除外していれば問題は有りません。補強の有無がチーム全体に与える影響は少なくともリスト上の影響はなくなります。
絶対的な評価で言えばまだ使える選手であっても、相対的なつまり球団内部での競争に負けている選手は切る、それが出来ているかどうかが「育成の巨人」となっているかを評価する指標です。
巨人が育成も同時に目指すのであれば、加わった分だけ他のベテランを放出する事が必要です。育成にあたって重視するべきは「ちゃんとベテランを切れているか」がオフシーズンの間の評価になります。決してドラフト以外の補強を行使しないことではありません。
去年も仁志敏久を筆頭に大きくベテランを切りました、今年にしても外野手を中心に他球団が「まだ戦力になる」と思う選手でさえすっぱり切り落としています、これが今年も補強をしたことに対する対応です。
少なくとも育成という観点において巨人軍の改革・正常化は順調に進んでいる、直近の失敗の原因がしっかりわかっていると私は見ています。
育成と補強というのをアンチノミーで、つまり二律背反する、同時に達成できないものであると考えている時点で、考え方がおかしいです。
この2つはアンチノミーな命題ではないです、補強と育成の両立を目指すというのが巨人の方針でしょう、それにあたって必要なのは、普通より高いレベルでの中堅・ベテラン選手の足切りです。
足した分だけ減らして、全体における若手の割合は補強がない他球団と同じ水準を維持する、それさえしておけば、一応今のドラフトによってだいたいどの球団も同じぐらいの「機会」が与えられますから運さえ悪くなければ試行回数をこなしていれば他並に育成できます。それに加えて外国人選手に関しても育成の意図を持った獲得もしていますからその分だけ確率は上がると思います。
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■若手活躍の場消える?球界バランスも崩れ
なりふりかまわぬ大型補強を続けていた巨人が、仕事納め翌日の29日、ヤクルトを自由契約となっていたアレックス・ラミレス外野手(33)の総額10億円の2年契約での獲得を発表した。セの最多勝投手となったセス・グライシンガー投手(32)=前ヤクルト、剛腕、マーク・クルーン投手(34)=前横浜=らを含めると、総額20億円近い大補強。リーグ優勝を果たしながら、日本シリーズ進出を逃したための結果ともいえるが、一方で、球界のバランスを崩す1球団集中に批判も出そうだ。(丸山和郎)
今季のラミレスはセ・リーグ新記録の204安打をマーク。122打点で打点王にも輝いた。ヤクルトに在籍した7年間で211本塁打の長打力だけでなく、通算打率も・301と安定。中日からフリーエージェント(FA)宣言した福留孝介外野手は獲得できなかったが、「長年の課題のひとつ」(清武英利球団代表)だった右打ちの強打者を確保した。
今オフはリーグ最多勝のグライシンガー、日本球界最速の守護神クルーンも獲得したが、大型補強の背景には日本一奪回への強い思いがある。クライマックスシリーズで敗退直後、渡辺恒雄球団会長は「(近年の)外国人の補強は全部間違っている」と怒りをあらわに。球団の国際スカウトが独自で発掘するのではなく、国内で実績のある助っ人をかき集める結果になった。
3選手の今季年俸は計5億5000万円程度。それが来季は倍の計11億円にものぼり、日本人選手の年俸体系との不平等感は否めない。また、最下位だったヤクルトから2人のタイトルホルダーがリーグ優勝の巨人へ移籍。自由競争の世界とはいえ、資金力のある球団ばかりに選手が集まるのは、球界にとって憂慮すべき事態といえる。
巨人の選手育成の姿勢にも首をかしげざるをえない。来季の外野陣は高橋由、谷、ラミレスの布陣となり、矢野や鈴木尚らが割って入るのは容易ではない。また、1軍の外国人枠も李承ヨプを加えた4選手でほぼ確定。仮に故障者が出た場合も、二塁のゴンザレスや左の中継ぎとして獲得したバーンサイドが控える。球団が育成するはずだった台湾出身の姜建銘に活躍の場が残っているのかは未知数だ。
ラミレスは球団広報を通じ、「巨人のスタッフが、自分を取って失敗だったと思わないように頑張りたい」とコメントを寄せた。もちろん、打撃成績は申し分ないが、左翼にラミレス、中堅に谷の布陣では守備に大きな不安を抱える。外野の膨らみが少ない東京ドームはともかく、敵地の甲子園やナゴヤドームでどれだけ接戦を戦っていけるか。ベンチの選手起用も難しくなる。
ラミレスはヤクルト時代からコメディアンをまねたパフォーマンスで人気を集めてきた。巨人戦のテレビ視聴率が落ち込む中、球団はその明るいキャラクターにも期待を寄せている。ともあれ、来季、これら大型戦力を率いる原監督にとって結果が求められる1年になる。
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まぁ「球界のバランス」だとか「自由競争の世界とはいえ、資金力のある球団ばかりに選手が集まるのは、球界にとって憂慮すべき事態」だというあたりも全く持って思い込みにしか過ぎません。
戦力均衡がリーグ発展に繋がるとなっているのはアメリカのビジネスモデルに限った話で、こういう考えを疑いもせずに受け入れているのは、良く新聞が批判するアメリカ追従姿勢の国政と全く同じです。
ってまぁ脱線はこれぐらいにして、育成に関係する部分で言えばこのあたりでしょうかね。
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巨人の選手育成の姿勢にも首をかしげざるをえない。来季の外野陣は高橋由、谷、ラミレスの布陣となり、矢野や鈴木尚らが割って入るのは容易ではない。また、1軍の外国人枠も李承ヨプを加えた4選手でほぼ確定。仮に故障者が出た場合も、二塁のゴンザレスや左の中継ぎとして獲得したバーンサイドが控える。球団が育成するはずだった台湾出身の姜建銘に活躍の場が残っているのか
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谷佳知というハードルが非常に低いものであるというのはこれまで何度も書いている通りです。彼ぐらいは越えてくれていなければ、他球団の若手、桜井や森野に比肩するものは期待できません。
姜建銘に関しては、今年で言えば2軍でさえ満足する成績を残しているわけでは有りません、姜をつかうぐらいだったら、深田拓也が先だし、栂野が先だし、野間口が先、ちょっと1軍で優先的に使われすぎてたなとさえ思っています。
そもそも06年シーズンのがただの出来すぎ、あの年の姜建銘を私はずっと2軍で見ていましたからわかりますけど、1軍の姿、特に四球を出さないとか本塁打を打たれないとか言うのは偶然に過ぎず彼本来の姿、2軍で結果を残していた姿とはかけ離れています。
その幻想を本人まで背負ってしまったことで今年はうまくいかなかった。自らのスタイルがどんなものであったのかをもう一度彼は見直すべき、四球を出さないような組み立ても、本塁打を打たれないような組み立ても、本来の姜ではない。
球団が育成するはずだったとか書いてますが、今年の結果からすればまずは2軍で優れた成績を残してからというのが今の姜に対する妥当な評価、1軍枠を考えるようなところに達していないし、育成とは1軍でするものではないのですから、なんら関連性が有りません。
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<巨人>大型補強の手法、「若手育成路線」に逆行?
ラミレス獲得に成功した巨人の清武球団代表は「(ラミレスが)最後の『1(ワン)ピース』になり、最強のチームになってくれる」と表現した。だが、同じリーグのヤクルト、横浜のライバル球団から自由契約となった実績ある選手をかき集める手法は、結果的に自らの首を絞めることになるのではないか。
懸念されるのは、若い選手の出場機会を奪い、やる気をそいでしまうのではないかという点だ。日本球界から多くの選手が米大リーグに流出している現状を考えると、若い選手を育成していく必要性は以前に比べて高い。まして巨人が「球界の盟主」を自負しているなら、生え抜きのスター選手を作りあげて球界を盛り上げることこそ務めのはずだ。
長嶋監督2度目の在任(93〜01年)のころから、外国人だけでなく、清原(現オリックス)、小笠原らFAとなった選手を獲得し続けてきた。堀内監督時代の05年シーズン途中、ファンから「若手選手を使え」などという声が球団に寄せられ、滝鼻オーナーら球団首脳は路線変更を打ち出し、「育成の巨人」を強調してきた。併せて長期、中期、短期のチーム編成プランを練ったという。「そのプランは現在も進行中だ」と反論するかもしれない。
しかし、クライマックスシリーズ敗退後、渡辺球団会長が「補強は当たり前だよ。こんなバカな状況で、補強せずにいられるか。ろくな外国人もいねえでさ」と怒りをあらわにした。これで「育成の巨人」というのでは説得力に欠ける。
巨人が5年ぶりにリーグ優勝を遂げても、巨人戦の年平均視聴率は9.8%で、過去最低だった前年比0.2ポイント(ビデオリサーチ社調べ、関東地区)しか伸びなかった。強さが人気回復に直結していない。ファンが何を求めているのか。巨人はもう一度、チーム作りの進め方を見直す必要がある。
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まず一部日本語が理解できないんですよね。なんで渡邉氏が発言しただけで、説得力に欠けるのでしょうか。よっぽどこの記者は渡邉氏というのを神格化して、その言葉は素晴らしい御託だとでも思っているんでしょう。
まぁ冗談は置いといて、記事として論理性が無いですよね、結論先に有りきで、しかもその結論を導けられないものだから、具体例で目先を狂わせて強引にまとめる、新聞記者ともあろう者が実に美しくない文章を書くものです。
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巨人が5年ぶりにリーグ優勝を遂げても、巨人戦の年平均視聴率は9.8%で、過去最低だった前年比0.2ポイント(ビデオリサーチ社調べ、関東地区)しか伸びなかった。強さが人気回復に直結していない。
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また、この記述に関しては、全く同意できかねます。こちらの日記で触れたように(巨人 06-07主催試合観客動員推移)、稼働率90%を越える中、つまり伸びしろが10%未満でありながら2%も増加しました、わざとなのか忘れているだけなのかは知りませんが、都合の良い数値だけを取り上げて、都合のいいように書き連ねているだけです。
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外国人の契約が期間が切れると他球団と自由に交渉できるのに対して、日本人選手が自由に他球団と交渉することが出来ない、この不平等は解消しなければならない、という主張自体にはまったくもって反対ではありません、この不平等はなくすべきです。
ただし、ではなぜその解消をするには「外国人選手のほうをより制限をかける」という解決策しかないかのように書かれるのか、他に選択肢があるにもかかわらず自覚か無自覚か知りませんがその選択肢が無視されているのかがわからない。
巨人首脳陣もそうだと思いますが、この解決策は「日本人選手がもっと自由に契約できるようになる」ことでも解決は可能で、そしてそれが正しい解決策だと私は考えています。
週ベのコラムでしたかね、「外国人選手だけは契約期間がきれれば自由に獲得できる矛盾」と表現されていましたが、それは逆だろうと思います。
勝利を目指すプロスポーツにおいて、本来はもっと自由であるべき選手獲得、チーム強化の手法が不当に制限されていることこそ矛盾です。
私はそう考えていますし、巨人もそう考えている、外国人の契約がこうなっていることになんら問題は無いと考えているからこそ積極的に行う。
別にどっちが正しいかを論議することも追求するつもりも有りません、実際どちらが正しいかというのは一種のイデオロギー論争であり簡単に結論の見えるものでは無いでしょう。
ただしかし、片方のイデオロギーのみを絶対とし、その前提で持って全ての活動を評価するというのは公平な姿勢ではないし、事実をしっかり伝えているものでもない。上記の2つの記事はそういう意味で全く持ってダメです。
巨人の活動について、巨人とは違うイデオロギーという色眼鏡で見ているからそもそもおかしいんですよ、巨人は違う色のメガネで世界を見ています、ただそれだけの違いです。
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- 事務局に通報しました。
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