野球というスポーツを

  • DIME
    2007年12月30日 13:11 visibility411

どう表現するかといわれれば、私は「負けるスポーツ」であると表現します。

例えば直近のシーズン(現在行われているものはその1つ前)、BJリーグ勝率1位の大阪は.750、Xリーグで勝率1位だったオンワードスカイラークスは全勝(1.000)、Vリーグ女子の勝率1位はパイオニアと久光製薬が.778、Vリーグ男子の勝率1位はサントリーが.714、JリーグがJ1が鹿島の.800、J2が札幌の.867(Jリーグの場合は引き分けは除いて出しています)

では野球はどうであるかといえば、今年の巨人が.559、日本ハムが.568、明らかに他のスポーツとは一線を画している数値です、他のスポーツ並になった例は試合数の少なかった戦前か、大エキスパンションによって戦力格差がありすぎた1950年あたりに見られるだけです。だから私は「負けるスポーツ」と野球を表現します。
もちろん、このような数値が出るのは、プロ野球が戦力均衡が高いレベルで達成されているからだという理由もありえますけど、それに首肯する方はいないでしょう。
となってくると、長期戦という試行回数によってある程度運の要素を排した結果がそれでもこのような低い勝率にしかなら無いと言う事は、そもそも1試合の勝敗そのものが実力という要素の影響が低いとしか、この異常な低率を説明できません。
つまり、野球というスポーツは「戦力」が「結果」に対してもたらす影響が非常に低く、例えば2倍の戦力差があった時に他のスポーツでは50の差が付くところを、野球では5とか10とかしか影響が出ない。その為に、怪我人、選手の調子、運などの他の要素で発生する差が戦力差の要素によってもたらされている差を簡単に超過するって言うことです。
戦力差というものが、必ずしも強さに結びつかない、それが野球の面白さであり、また同時に野球の難しさです。

言い換えれば他のスポーツと比べてどれだけの高みにあっても「負け」から逃れることが出来ない。
だからこそ、例えば川上監督をはじめとして禅や護摩行の中に野球に通じるものを見出す名選手・名監督が多かったり、精神的なものが大事にされたりするのだろうと思いますけどね。
どれだけ負けようとも心を持ち続けられる精神力或いは考え方、そういうのが他のスポーツよりもっともっと必要なのですから。精神的な安定を作ることの修行をすることはそれに通じるでしょう。とはいってもそれが悪い方向に作用してしまうと、根性論とかスポ根礼賛とかへなってしまうので加減が難しいところです。
ってまぁ話が逸れてきましたのでそういう話はまた機会があればしてみます。

例えば、ヤンキースにしてもずっと補強を続けていて、それでもシリーズ制覇をしていないので、以下のような書かれ方をされているのを良く見かけますがこれはそういう野球の特性というのを全く無視したものです。
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ヤンキースにぜいたく税26億円
V逸ヤンキースが懐寒いクリスマスに震えている。ヤ軍今季総年俸が24日、大リーグトップの約2億770万ドル(約228億円)となり、5年連続で課徴金(ぜいたく税)約2388万ドル(約26億3000万円)を課せられることが分かった。

金満ぶりは突出しても結果を伴わない。年俸総額は4年連続で2億ドルを突破。2位レッドソックスを約4460万ドル(約49億円)も上回り、今年も史上最高額を塗り替えた。課徴金は年俸総額が一定額を超えたチームに課せられるもので、ことしの規定額は1億4800万ドル。シーズン途中復帰のクレメンスに約1744万ドルを支払っており、わずか6勝の大誤算。しかもクレメンス加入で約700万ドルも課徴金が上積みされた。

ヤ軍は制度導入後の03年から毎年課せられており、総額は1億2000万ドルを突破した。わずか5年で、今季の総額最下位レイズを5球団分抱えてもお釣りがくる「浪費」ぶり。ただその間に世界一はなく、今季は10年ぶりに地区優勝を逃した。

ヤ軍のV10を阻んだレ軍も4年連続の課徴金を課せられたが、こちらは606万ドル(約6億6600万円)。3年ぶりの世界一に輝いたことで、効果的な投資となった。
ニッカンスポーツ
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はっきり言ってしまえばこういう記事を書く、或いはこういう記事にその通りだと思う、そういう人は失礼ながら野球がまだまだ見えていない。私も他人にそういえるほど見えてはおりませんが(笑)
むしろ野球というスポーツの特性を考えれば10年間地区優勝し続けるというのがどれだけ突出した特異な例か。
その先の短期戦は更に運の要素が高くなってきますから、ワールドシリーズを制覇していないのはただ単に運が無いため、プレーオフにずっと出場し続けているということこそ本当の実力の発現であり戦力評価の基準となるものです。


で、何が言いたいのかというと、今年の補強についてです。「来年優勝争いが出来るぐらいの戦力補強は出来ましたよね?」とか聞かれるんですが、それに対して言えるのは、そんな高いレベルの要求をするには全く戦力補強として足りていないっていうことです。
具体的に言えば、上記のヤンキースの例ぐらいは補強をしないと毎年優勝争いが出来て優勝を狙えるという高みにまでは到達できません。
補強が全部済んだ時点での今の巨人を見たときに、とてもとてもそんなところには届いていない、麓にさえたどり着いて無いと思います。
足りないポジションがどこかと考えていくと、ダルビッシュ、グライシンガー、ウィリアムス、岩瀬、川崎(2塁手として)、福留、稲葉、ぐらいは欲しいですね、それで最低ライン。
合格点を挙げるぐらいとなれば、怪我人の離脱を考えてあと先発が左右1枚ずつ、中継ぎに2枚、遊撃・3塁手に1枚、外野手に1枚ぐらいは日本代表クラスの選手が欲しいところです。
それぐらいであってようやく「90%は優勝できる」ぐらいに到達できると思います、「満足する補強はできました」と私もいえます。でもそれは無理でしょ、今の制度じゃ。

浦和がほんとうらやましいですよ、梅崎とって、エジミウソンとって、今野に食指を伸ばして、高原にも伸ばしているとか。でもそれが批判されないのは、リーグがそういう「制度」になっているからですよね、動員が多くて収益のあるチームがそのお金をチームに再投資するのは当然っていう制度に。
プロ野球も私はそうなるべきだと思います、そういう制度になっていくべきだし、それを目指した活動を巨人は続けるべきです。
「勝利を目指すこと」、それがまるで悪いことであるかのように言われています、或いは巨人にだけはそういっても良いと思われてる、これはプロ野球全体にとって決していいこととは思いません。
なんか、忘れ去られている気がしますけど、巨人ってのは阪神に次いで動員多いんですよ、プレミアムシート(ボックスとか)を考えれば観客収入はソフトバンクも加わって最高峰を形成していると思います。そのお金を再投資しないほうがファンを裏切っている状態ですよ。
前にも書いたように(日記:再開します。)、総額にサラリーキャップが嵌められている訳でも無いし、バランスシートもないですから、外国人選手に使っているからといってその分のしわ寄せが日本選手に来ているというのは邪推に過ぎません、その証拠は無いし、そう考えられるだけの必然性も無い、幾らが適正かという評価は人それぞれでしょうが、ほぼ1シーズン1軍にいたのにアップなしとかダウンなんて選手は(複数年除けば)巨人には出てませんよ、巨人には。

結局何が言いたいかというと、野球というスポーツに「補強のしすぎ」ってのは無いか、あっても異常なまでの高みにそれはありますって事です。
それを知っているぐらい野球というものをわかっている人、それぐらい本気で野球と向き合っている人が編成に携わっていてくれれば、今年ぐらいの補強をするのは当然というか、むしろ十分な戦力が用意することが出来ないことを悔しがってくれるぐらいであるはずです。
また「巨人は巨大戦力を有しているのに全然勝てない」とかいうのも真実ではない、どうなっても勝てるぐらいの巨大戦力というのはV9以降のどの年度の巨人を持ってしても過ぎた評価です。V9後唯一いえるのは西武黄金時代だけでしょう。このあたりは道作さんのコラム(シュタイニッツの強制システム)も参考になろうかと思います。
自らの戦力でもたらされる幅の中での極小値が、他のどの球団の極大値よりも上回っている、それが“十分な戦力”だと私の中では定義されています。そして今の中日、阪神の極大値を上回るのは、そう簡単では有りません、というかムリ、2球団とも戦力水準高いですもの。
だから、来年も勝てますかって聞かれれば、「野球ってのはそんな簡単に“勝てる”っていえませんねえ」ってのが応えです。
私の希望としては巨人にはそれぐらいが出来るぐらいに本当の「巨大戦力」にはなって欲しいですけど、今のプロ野球のままじゃあムリでしょう。

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まぁNFLも“全勝”に限れば難しいのですが、あれの場合はワンマッチしかせず、怪我人の離脱する可能性が高く、戦力均衡が高いレベルで達成されているので難しいんですよね。
そういう意味で、今年、“パーフェクトシーズン”を成そうとしているペイトリオッツがいる今は非常に貴重な機会で、今現在行われているジャイアンツ戦を生で見られないのが非常に残念です。歴史の1ページが刻まれる瞬間を見られないなんて。

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