ドーピング違反について。

  • DIME
    2008年05月27日 08:23 visibility1444

違反行為があったことそのものに関しては、個人の倫理観と規則遵守の精神の問題。それ以上でもそれ以下でもない。
ただ、先日「あんな野球ファン以前の部分に問題のある人間を阪神ファンと認定するのは阪神ファンに失礼だ」と言ったように、個人の資質の問題であるところで発生している問題を理由にしてその属していた集団がどうこうと言い始めるのはおかしい。
集団とは巨人でもあるし、NPBでもある。これで球界は違反者だらけだ何て言い出す輩の10人や20人は出てくるんだろう。
一人の違反者の存在を手がかりにして妄想を膨らませるのは自由だが、妄想でしかないことぐらいは自覚しておくべき。私はそういうモノの考えは正直理解できない、よくもまぁそんなモノの考え方で生きていけるなと感心するぐらい。そんな邪推をされるだけの隙を見せるのも悪いのだけれど。
紛れ込んでしまったことは手落ちでそこは非難されてしかるべきだが、ゴンザレスの存在を理由としてチームとしての品格とかを非難し始めるのはお門違い、そういう点では加害者ではなく被害者なのだから、あの時「阪神ファンのレベルってのはあの程度のものだ」などと言われて悲しい思いをした阪神ファンのように。個人の個人的な行動で揺るがせになるものではない。
で、もちろん実際に薬物を使用していたのかどうかについては、私の知るところではない。
当事者でないどころか当事者の知人さえ居ない私が知ろうと思って知れるはずもなく、当事者が発表している内容に対して、それ以上の推測を付け加える方が問題であり、発表された内容を内容のまま受け取るのが一番正しい選択だと思っている。
だからその辺りに解しては特に何も思うところはない、発表されたことが全てで、そこに付け加えられるであろう、夕刊紙や雑誌の飛ばし記事の内容が混入してしまわないように、今のうちに正確な情報を把握しておくべきだと思うだけ。

やっぱり気になるのはタイムスケジュールの問題。
続報を確認する限り、23日の突然の出場選手登録抹消については事実上は「A検体での陽性」を理由にしたものであるとみなしてしまって問題は無いだろう。
改めて時系列順に書いてみると以下のようになる。

4月30日 試合後 ゴンザレスに対してドーピング検査を実施 
5月20日  陽性の検査結果(A検体)が、NPB側に提出 5/19付
5月21日  対千葉ロッテ戦(18:15〜) 
 同 夜 NPBアンチ・ドーピング特別委員会開催、委員会終了後、球団に通知 
5月22日  試合なし 
 同  ゴンザレス側が薬物使用を否定する文章提出 5/22付
    ゴンザレス側からB検体の分析要請
5月23日  対西武戦(18:00〜)
 同  ゴンザレス出場選手登録抹消 
    ※選手登録は試合前までに行われる。
5月24日  対西武戦(18:00〜)
5月25日  対日ハム戦(18:00〜) 
 同 B検体の分析結果陽性
5月26日 対日ハム戦(18:00〜)
 同 NPBアンチ・ドーピング特別委員会にて制裁決定


結果として、「A検体で陽性反応」が出た段階での発表はなく、内々での調査が済んだ上での発表となっている。正直これはプロスポーツとして良い対応とはいえない。
で、これは巨人の問題としてというよりもNPBとしての問題、別に巨人に問題が無くといってるのではなくね。
この場合、NPBとして発表が行われない以上、巨人側が先走って発表する事はできないだろう、当事者球団として「この段階で発表するべき」などと具申するのはともかくとして、自球団の意向だけで発表してしまうのはそれこそ「“盟主”をかさに来た行為」に他ならない。
内部から違反者を出したという立場からしても、NPBが正式な決定をするまでは巨人がどうこうすることはできない、できるとすればNPBが先にそういう発表を行ってからということになる。
かといって、ガトームソンの時にソフトバンクが批判を浴びたように、「正式決定が出ていなかったので試合には使った」というのは更に問題がある、ガトームソンの件とは違って故意の可能性があるのだから尚更。
そういう事情から結果的に、「表向きの理由を立てて登録を抹消する」という非常に日本らしい対応をするしかなかった、それはやっぱり見ていてスッキリしない活動であるのは間違いない。

「B検体を確認したうえで、正式に制裁を決定する」のは正しい、でも発表のタイミングは「A検体で陽性反応が出た」時点でその旨を出すのがWADAなどでの活動からしても一般的だろうし、世間受けも良いはずだ。
それが出来なかったのは、第一に先日も書いたように日本プロ野球全体としての「ビジネス」としての取り組みの甘さ、リスク管理や何かが起きた場合の対応策などを持てていないって事だろう。
例えば、A検体陽性で発表しておいてB検体が陰性で最終的に白だと法的に認められた場合などにおいて、A検体での陽性時点で発表したことに対する損害賠償などのリスクも考えると発表できなかった、などの理由が考えられる、この辺りも結局は準備不足って事になる。
契約書に「違反したら契約解除」といれているのであれば、そこからもう一歩踏み込んで、「最初の検査で陽性と判断された場合、最終的な結果に関わらず、陽性反応が出た事実を発表し、その検査結果に基づいた一定の対応を行うことを認める」ってことも契約にいれておかなきゃいけない。
もっといえば、そういう記述については、個別の契約ではなく統一契約書で行っておくべき、現在改定中の統一契約書だがその辺りも踏み込んでおいて欲しい。
プロ野球というのはスポーツであると同時に、エンターテイメント、客商売。そりゃ選手個人の人権を守ることも大事だが、同時にクリーン性というのも客商売として無視してはいけない大事な要素。
それを考えれば、ある程度、リーグ全体として、事前にこういうアウトラインで行いますから、それを了承して置いてください、ぐらいは契約に入れなきゃダメだろう。

ガトームソンの件の時点で「最初の検査で陽性がでたときに何故発表しなかったのか」という事は、突っ込まれていたはず。
それに対して対応策をちゃんと考えていれば、今回の件は最初の陽性の時点で発表が出来たし、巨人側にしても「疑いがある」という本当の理由で登録抹消をすることができたはずだ。

だからやっぱり、まだまだ甘いんだよ、全般に。

巨人にしても、情報の開示が甘い。
下記のニュースを見てもわかるとおり、経緯に関しては触れているが、どのようなドーピング対策を行っていたのか、それで何故防げなかったのかという点をもっと開示しなければいけないし、再発防止策にしてもあまりに抽象的に過ぎる。現実的にどんな策が具体的にできるのだ、といわれれば言葉に詰まるのだけれども。
現実問題として、選手全てに24時間体制で監視を付けてその摂取する飲食物その他全てをチェックするなんていうのは不可能であり、最終的には選手個人の問題であって球団が責任を負いきれるものではない。だから問題なのは、こういう事態が起きた時に、「我々はこれだけやった、これ以上球団にできる事はなかった」と言えるだけのことをやっていたのかって事。
そういう意味で、現時点での巨人側の発表やコメントは、具体性にも欠けているし、その中身にしても、「やれるだけの事をやっている」レベルにあるとは思えない。
まず、注意喚起を三度行ったのであれば、それがいつどこで誰から行われたかぐらいは示すべき。
シーズン中にはNPBが抜き打ち検査をしているのだからチームとしてそこに加えて更にやっておけとは思わないけれども、最低限契約を行う時やキャンプ開始時点などの節目節目では独自検査をやっておくべきだし、やっているのだとすれば、それらの検査実績はすぐに開示されていなければいけない。やっていなかったのだとすれば取り組みが甘すぎる。
他にどんな実効性のある対策を打てたのかというのは、ぱっと思いつかないので何ともいえないが、他にも何か行っていたのであればそういうこともすみやかに開示すべきだろう。

ちなみに、そのシーズン中の検査に関しては、それが緩いのかどうかというのはNPBの問題であり巨人の問題ではない。
で、こういうのはこうやって問題が起きた時には緩いと見られるものだろうけど、全検査というのは感情的には受け入れやすいが、統計的な算出に基づいて行われるランダムの抜き打ち検査と比較した時に「見つける確率」にほとんど上積みはない。
検査費用は1検体辺り数万はかかったはずで、コストもバカにならない、少なくとも全選手とか毎試合とか言うのはコスト的に無理。例えば144試合全てで各球団2名ずつならリーグ全体で年間3456検体、一回5万とすれば1億7280万円って事になる。数千万単位でのコスト増に対してほとんど変わらない見つける確率となれば今ぐらいの水準でおかしいとは私は思わない。

話を巨人に戻すと、その対策にしても球界内で比較的厳しいかどうかなんて問題ではない、球界全体が甘いのかもしれないわけだし。
比較の問題ではなく絶対の問題として、客観的に「これ以上はどうしようもないね」と人に納得してもらえるだけのことをしていたのかどうか。
もちろん、巨人に関しては、やること為すこと全てフィルターにかけて悪意的な解釈しか出来ない人が相当数いるので、「一般的に納得するであろうレベル」のことをしていようとも、批判するやつは批判する、それがどんだけ非現実的な対策を巨人に求めているものだとしても、言うやつは言う。そういうのは放っておけばいい、相手をするだけ無駄。
そういうのは別として、一般的に「やれるだけの事はやっていて、これ以上は選手個人の問題だな」と思われるだけの事をやっていたのかどうか、少なくとも現時点での巨人が開示している情報では決してそうだとは思えない。

あと、携帯サイトの方では大きく取り上げてあるが、PC用の公式HPではニュースの1つしてしか取り上げていない、これはあまりにも取り扱いが小さすぎる。
少々サイトのデザインを弄ってでも一番目に付く位置におかなければいけない、現実的な対策としてはバナー枠を使うなりして“特別な扱い”をしていることを示さねばならない。

それと、細かいことだけど、スポーツ報知にしかその言葉が無いので、マスコミ側が言葉を選び間違っただけかもしれないが、「犠牲者」という表現はどう考えてもおかしいだろう。たぶん新聞側のミスだと思うが。

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それにしても、こういうときだけ「球界の盟主」を“自認”しているだとか書き立てるのは呆れてしまうけど。勝手に祭り上げてるだけのくせしてね。
まぁそれでもそういう「意図的な悪意」に周囲を囲まれてるのはわかっているはず、こういう言い方をすると、被害者に対して「あなたにも落ち度があったのではないか」などと迫るかのようだが、実際こういう騒ぎ立てられ方をするタネを出さないチェック体制を敷けていなかった事は批判されてもしょうがない。


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ルイス・ゴンザレス選手のアンチ・ドーピング規則違反に関するお知らせとおわび
 日本プロフェッショナル野球組織(NPB)のアンチ・ドーピング特別委員会は26日、当球団のルイス・ゴンザレス選手に対して行ったドーピング検査の結果、禁止物質の興奮薬が検出されたため、1年間の試合出場停止処分とすることに決定しました。

 球団は処分を深く受け止め、このような事態を招いてしまったことを重視し、清武英利代表と島崎雅夫国際部長をけん責処分としました。ゴンザレス選手は契約違反に該当すると判断し、契約を解除します。

 2006年にプロ野球界でドーピング検査が導入されて以来、球団ではNPBの関連諸規定を遵守し、再三にわたってミーティングなどで選手に注意喚起を促すなどしてまいりました。しかしながら、支配下選手の規則違反が明らかになったことは誠に残念であり、ファンの皆様に深くお詫び申し上げます。今後は再発防止に万全を期し、信頼回復に努めてまいります。

 以下に今回の事態の経緯、選手の話、ならびに球団としての見解をご説明いたします。

【経緯】
 4月30日、対広島戦が開催された東京ドームで、NPBによるドーピング検査が行われました。検査は特定の選手に絞ったものではなく、ジャイアンツでは、くじ引きによりゴンザレス選手を含む2人の選手が検査対象となりました。2選手は所定の手続きに従って尿検査を受け、「A検体」「B検体」の二つのサンプルが取られました。
 5月21日午後7時半ころ、NPBから「ゴンザレス選手のA検体に陽性反応があった」と球団代表に連絡が入りました。検出された禁止物質は「クロベンゾレックス」「アンフェタミン」「パラヒドロキシアンフェタミン」の3種類。分析機関の所見では、「クロベンゾレックスを投与した状況と一致している」ということです。クロベンゾレックスを体内に摂取すると、しだいに体内で代謝されてアンフェタミン、パラヒドロキシアンフェタミンが生成されます。いずれも興奮薬として競技会検査の禁止対象となる物質に指定されています。またこれら検出された物質は、通称「グリーニー」といわれる薬物に特徴的なものであるとのことです。
 この日行われたロッテ戦終了後、球団代表が千葉市内のホテルにゴンザレス選手を呼び、検査結果が陽性であることを通告し、事情を聴きました。ゴンザレス選手は「まったく身に覚えがない」と述べ、分析機関に保管されている「B検体」の再分析を希望しました。球団としても判断に慎重を期すため、翌日の22日、球団代表がNPBに対してB検体の再分析を申請しました。この日は一軍の試合はありませんでした。
 翌23日、球団はゴンザレス選手の一軍登録を抹消しました。
 25日にはB検体の検査が行われ、こちらも陽性であることが判明しました。その結果を受けて、26日に開かれたアンチ・ドーピング特別委員会が今回の処分を決定したものです。

【ゴンザレス選手の話】
 ゴンザレス選手は「科学的事実を突きつけられて、それを否定するということはないが、自分は意図して禁止物質を摂取したことはなく、(出場停止)1年という処分は、重過ぎると考えている」とコメントしています。
 また、今後の対応については代理人と相談して決めたい、としています。

【球団の見解】
 清武代表は26日夜、東京・大手町の球団事務所で記者会見し、「このよう深刻な事態に至ったことは大変残念であり、ファンの皆様にお詫びします」と謝罪しました。再発防止策については「全選手に対してアンチ・ドーピングを呼びかける」と話しました。ゴンザレス選手の契約を解除することには、「ファンの信頼を裏切ってしまった。NPBの処分も重く、選手の潔白は信じたいが、科学的事実に基づいた判断を下さざるを得ない」としました。また同日の対日本ハム戦の終了後、清武代表は東京ドームで一軍の選手に対して経緯を説明し、あらためてアンチ・ドーピングを徹底するよう指示しました。

以上

読売巨人軍公式HP

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2008年5月26日

読売ジャイアンツ球団
ルイス・ゴンザレス 殿

日本プロフェッショナル野球組織
アンチ・ドーピング特別委員会
委員長 根來泰周

読売ジャイアンツ球団所属ルイス・ゴンザレス選手の
アンチ・ドーピング規則違反に対する制裁の通知


第1 制裁の内容

 ルイス・ゴンザレス選手に対し、2008年5月26日から2009年5月25日まで1年間の出場停止処分を科する。

第2 事実と理由

 ルイス・ゴンザレス選手は2008年4月30日の対広島東洋カープ戦(東京ドーム)において、他の3選手とともにNPB(日本プロフェッショナル野球組織)ドーピング検査実施要項によって、検査対象選手となった。
 試合終了後、4人の選手はNPB医事委員会の渡辺幹彦医師による検査に応じ、ゴンザレス選手には読売ジャイアンツ球団から医療コンディショニング担当職員が同席した。
 4選手の検体は手続きに則って、5月1日、財団法人日本アンチ・ドーピング機構公認検査機関である三菱化学メディエンス株式会社に持ち込まれた。その結果、検体番号145479のA検体から、興奮薬として禁止物質に指定されているクロベンゾレックス(clobenzorex)、アンフェタミン(amphetamine)、パラヒドロキシアンフェタミン(p-hydroxyamphetamine)が検出されたとの、5月19日付け検査結果報告書が、翌20日、NPB医事委員会に提出された。検体番号を調べたところ、ゴンザレス選手の検体であることがわかった。
 NPB医事委員会は同21日夜開かれたNPBアンチ・ドーピング特別委員会に検査結果を報告、特別委員会委員である長谷川一雄NPBコミッショナー事務局長が委員会終了後、読売ジャイアンツ球団の清武英利球団代表に検査結果を通知した。これら検出された物質は通称「グリーニー」と言われる薬物に特徴的なものであることも説明した。
 清武代表は同日、千葉マリン球場での千葉ロッテ戦後、ゴンザレス選手に検査結果を伝え、事情を聞いたところ、ゴンザレス選手は禁止薬物などの摂取を全面的に否定した。その内容は22日付け文書で長谷川事務局長宛、提出された。
 22日午後には読売ジャイアンツ球団の原沢敦球団副代表を通じて、ゴンザレス選手からB検体の分析要請があり、NPBアンチ・ドーピング特別委員会は直ちに手続きを取った。
 24日午後、NPB医事委員会の増島篤委員長、長谷川事務局長は、清武代表、原沢副代表同席のもと、球団通訳を介してゴンザレス選手と面会した。
 ゴンザレス選手は以下のような説明をした。

(1) 検査があった4月30日から数日さかのぼっても、この類の薬だけでなく、その他の錠剤を飲んだ事実はない。
(2) また、特別なものを口にしたこともない。
(3) 広い交友関係はないが、その時期に誰かから、何かを勧められて飲んだり、摂取したこともない。
(4) すべての検査の経過が公平に、まったく問題なく進められた。検査に異議を唱えることはない。
(5) 大リーグで興奮剤がさほど問題視されていなかった03、04年に興奮剤を飲んだことはあるが、グリーニーは飲まなかった。選手生命に及ぼす影響をわかっていたので、自分は使わなかった。日本でもドーピングが厳しいことは知っていたし、体への悪影響だけでなく、制裁のこともわかっていた。
(6) ただ、陽性という科学的事実が覆らないことは理解している。


 5月25日に手続きに則ってB検体の分析が行われ、同日午後7時過ぎ、A検体とまったく同じ物質が検出されたとの結果がNPBアンチ・ドーピング特別委員会に伝えられ、26日午前、長谷川事務局長が清武代表に電話で検査結果を伝達した。

 上記の事実を総合的に判断し、5月26日の委員会において、頭書の制裁を決めた。

以上

読売ジャイアンツ球団所属ルイス・ゴンザレス選手のアンチ・ドーピング規則違反に対する制裁の通知

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衝撃大きい巨人=防止策も実らず−プロ野球ドーピング
 「球界の盟主」であるはずの巨人から、極めて不名誉なドーピング(禁止薬物使用)の事実が判明した。東京ドームで試合が行われている最中に、都内の球団事務所で記者会見した清武英利代表は、「注意喚起をしてきたが、大変残念。深くおわびしたい」と謝罪。自身と島崎雅夫国際部長をけん責処分とすることを明らかにした。27日からは各選手と面談し改めて注意を喚起するという。
 5月21日にA検体が陽性反応を示したとの連絡を受け、清武代表はゴンザレスに事情聴取したという。結果的に26日の発表になった理由については、「B検体もあり、選手生命にかかわることなので」と説明した。だが、23日に同選手の出場選手登録を抹消した際には負傷を理由としており、不透明さがあったことは否定できない。
 巨人では、選手に注意を喚起するとともに使用中の薬やサプリメントを報告させていた。2006年のオフからは、ドーピングが判明した場合には契約を解除する、との文言を契約書に盛り込んでいたという。それでも抑止することはできなかった。
 今回、球団側に処分は下されなかったが、意図的な使用も疑われるドーピングが判明した衝撃は大きい。球界で主導的な立場を取ってきた巨人には、より実効的な再発防止策が求められる。

時事通信 2008/05/26-23:39

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依然甘いドーピング対策=避けられぬ厳罰化の流れ−プロ野球
 昨年8月のガトームソン(ソフトバンク)に続く、プロ野球史上2度目の薬物違反発覚。依然として甘い日本球界のドーピング対策の実態が浮かび上がった。
 昨年と今回のケースに共通するのは、外国人であることに加え、ともに来日2年目以上の在籍であった点。球団やチームメートにとってもある程度気心が知れ、「目の行き届く」範囲の選手だったことの衝撃は大きい。また、今回検出されたクロベンゾレックス、アンフェタミン、パラヒドロキシアンフェタミンの禁止物質は、いずれも一部のプロ野球関係者が服用を取りざたされたことのある「グリーニー」と言われる薬物に特徴的なものだった。
 「球団にミスはなかった」(長谷川一雄コミッショナー事務局長)として、NPBは巨人に処分を科さなかった。しかし、随一の歴史と人気を誇る球団での違反発覚は、問題の球界全体への根深さを浮き彫りにした。
 日本球界も昨季からようやく本格的なドーピング検査を実施。米大リーグでは昨年12月にいわゆる「ミッチェル・リポート」で薬物汚染の実態が明らかになり、何人もの有名選手の名前が挙がった。今回はドーピングを否定したゴンザレスを「検査そのものを信頼し、摂取しないと存在しない物質」(長谷川事務局長)と断じ、厳罰を下した。世界的な潮流としても、「反薬物」への視線は厳しさを増していると言える。

時事通信 2008/05/27-00:53
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禁止薬物でゴンザレス解雇へ
 日本プロ野球組織(NPB)は26日、巨人のルイス・ゴンザレス内野手(28)から禁止物質に指定されている3種類の興奮剤が検出されたため、ドーピング(薬物使用)違反で同日から1年間の出場停止処分を科した、と発表した。違反者の発覚は昨年8月のソフトバンク、リック・ガトームソン投手に次ぎ2人目。同内野手は薬物摂取を全面否定したが、巨人は契約を解除する方針で、ドーピング違反による解雇は日本プロ野球で史上初となる。

 NPBの説明によると、ゴンザレスは4月30日の広島戦(東京D)後にドーピング検査対象選手に選ばれ、他の3選手とともに検査を受けた。検体(尿)は5月1日、日本アンチ・ドーピング機構の公認検査機関に持ち込まれ、興奮薬として禁止物質に指定されているクロベンゾレックス、アンフェタミン、パラヒドロキシアンフェタミンを検出。通称「グリーニー」と呼ばれる薬物に特徴的な物質だった。

 同21日、NPBから検査結果を通知された清武英利球団代表(57)は、その日のロッテ戦(千葉)終了後にゴンザレスを事情聴取。同選手は全面否定し、球団を通じて再検査を要請した。24日にNPB側と面会したゴンザレスは改めて否定。来日前の03年から04年にかけて興奮剤を飲んだことはあったが、グリーニーは使用しなかったという。25日には保管してあった別検体の再分析が行われ、最初の検査とまったく同じ物質が検出。翌日、NPBアンチ・ドーピング特別委員会は、アンフェタミンが覚せい剤取締法に指定されている薬物でもあることから、無期限出場停止に次ぐ重い処分となる1年間の出場停止を科した。

 東京・内幸町のコミッショナー事務局で会見した長谷川一雄コミッショナー事務局長は「体内で絶対に生成されるものではない」と言い、覚せい作用のある違法物質が検出された場合、警察に通報する取り決めになっているが、同事務局長は「捜査の結果、おとがめなしという判断が出たと聞いている」と説明した。

 巨人は今年に入って3度、ミーティングで注意喚起を呼び掛け、使用中の薬やサプリメントも報告されるなど、アンチドーピングに積極的に取り組んできた。06年オフからは全選手が契約更改時、禁止薬物を使用した場合、解雇もあり得る―との内容に同意しており、ゴンザレスとの契約を解除する方針を決めた。

 清武英利代表は「意図した摂取ではないという(ゴンザレスの)言葉は信じたいが、契約を解除する方針。選手には再三、注意喚起してきただけに残念。ファンにおわびする」と話した。23日に死球の影響を理由に出場選手登録から外したのは、この時点で再検査の結果が出ておらず「選手生命にかかわるので」と説明した。球団への処分はないが、事態を重視し、清武代表と島崎雅夫国際部長の2人がけん責処分となった。


 ◆ルイス・ゴンザレス(Luis Gonzalez)
 1979年6月26日、ベネズエラ生まれ。28歳。96年にインディアンス入団。04年、ロッキーズでメジャーデビュー。3年で291試合に出場、打率・283、23本塁打、98打点。07年に巨人入り。今季は32試合に出場して打率・307。今月23日、左脇腹打撲のため出場選手登録を抹消されていた。日本での通算成績は57試合に出場、打率・283、5本塁打、29打点。180センチ、93キロ。右投右打。

 ◆再発防止徹底へ
 ○…清武代表は球団事務所での会見後、東京ドームへ移動した。試合終了後、選手会副会長の阿部と外国人選手のリーダー格、ラミレスに経緯を説明し、再発防止を促した。「PT(理学療法士)やトレーナーが出したもの以外は口にしないことを、今後も徹底させる。二度と犠牲者を出してはいけない」と同代表。27日にはG球場で2軍選手と面談する。

 ◆ガトームソンは20日間の出場停止
 昨年8月10日、NPBはソフトバンクのガトームソンがドーピング(薬物使用)検査で陽性反応が出たとして出場停止20日間、球団には制裁金750万円を科した。約2年前から使用している発毛剤に禁止薬物「フィナステリド」が含まれていたもの。本人が禁止薬物と知らなかったこと、また、球団に服用を申告していたが、球団がNPBに照会しなかったことから、本人には比較的軽い処分となった。

 ◆NPBのドーピング検査
 国際的な「反ドーピング」の流れを受け、06年を啓発期間にあて、昨季から本格的に実施。禁止薬物、検査方法は国際大会と同基準で検査日は非公開。NPB医事委員会が試合当日の試合開始60分前までに「ドーピング検査対象試合」であることを当該球団に通知。5回終了時、両軍の担当者が2人ずつ計4人をくじで無作為に選び、試合後に尿検査を行う。キャンプ中は検査対象者を呼び出して行う。春季キャンプで講習会を開催、選手には資料用としてドーピング手帳を配布している。違反者は〈1〉けん責〈2〉10試合以下の公式戦出場停止〈3〉1年以下の出場停止〈4〉無期限の出場停止―となる。球団関係者が関与した場合は1000万円の制裁金を科す。

 ◆グリーニー
 覚せい効果のある興奮剤アンフェタミンの一種で、錠剤が緑色(グリーン)であることからの呼称。アンフェタミンは食欲を抑制する作用があることから、医療で使用する国もあるが、一般的な使用はほとんどの国で違法とされ、入手も極めて困難。大リーグの選手は1950年代に使用し始めたとされたが、2006年シーズンから禁止薬物に指定された。06年12月には覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた野村貴仁元投手(39)=後に有罪判決=が、公判中に現役時代のグリーニー使用を告白したこともあった。

(2008年5月27日06時02分  スポーツ報知)

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ドーピング:ゴンザレスは解雇へ 球界の管理の甘さ露呈
 
プロ野球で再びドーピング(禁止薬物使用)汚染が明らかになった。しかも震源地は「球界の盟主」を自認する巨人だった。日本プロ野球組織(NPB)は26日、巨人のルイス・ゴンザレス内野手(28)を、禁止薬物のアンフェタミンなどを使用したとして、1年間の公式戦出場停止処分とすることを発表。巨人はゴンザレスを解雇する方針を固めた。昨年8月のリック・ガトームソン投手(ソフトバンク)の違反発覚以来、NPBは改めてアンチ・ドーピング意識の徹底を目指していたが、またしても球界の認識と管理の甘さを露呈した。

 巨人の清武英利球団代表は同日夜、東京都内の球団事務所で緊急会見を開いた。清武代表はゴンザレス本人に解雇を通告したと明らかにし、「選手に何度も注意を呼び掛けてきたが、このような事態になり残念。ファンの信頼を裏切り、申し訳ない」と謝罪した。球団は、清武代表と島崎雅夫国際部長をけん責処分とした。

 巨人は21日夜にNPBからの通告を受けて以降、計3回にわたって、ゴンザレスから事情聴取。ゴンザレスは禁止薬物を摂取したことは否定したものの、「科学的な事実の前では抗弁できない」と話したという。

 巨人は23日にゴンザレスの出場選手登録を抹消したが、理由は「左脇腹痛」だった。清武代表は「検査の途中なので試合に出せないと判断したが、一方でまだ『灰色』の段階だったのでそれを重視した」と釈明した。

 清武代表によると、巨人は今季これまで3回、ミーティングで選手たちにドーピングへの注意を促した。06年からは契約書に「ドーピング違反は契約解除に値する」との文言も入れてきたという。清武代表は「疑義を持たれたらプロ野球は終わり。再発防止に万全を期したい」と苦渋の表情で語った。

 一方、ゴンザレスは27日未明に球団事務所で会見し、処分に対して不服申し立てする意向を示した。

 ゴンザレスは「口にするものは、リューマチの薬2種類とかみたばこ。それを検査してもらえないかと代理人に伝えた」とし、「自分の潔白を証明したい。リューマチ薬はドーピング検査の時に報告している。1年間の出場停止処分や、契約解除について見直すことができないかという気持ち」と語った。
【二瓶和弥、立松敏幸、鈴木英世】

毎日新聞
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