【ニュース】 松坂の入札金額と李の契約

  • DIME
    2006年11月17日 11:34 visibility75

は似てるよなぁと思う。

選手の適正価格というものは単純に実力だけで評価されるものではない。

プロスポーツというものがエンターテイメント産業である以上同じ実力であっても人気が高い方が金銭評価は高くなるものだし、むしろ高くならないほうがおかしい。あまりに当たり前のことである。

ただそれが忘れられやすいのは基本的に選手の実力と人気というものは正比例するものなのでほとんどの場合わざわざ分離して考える必要がないからだ。

ところがことこの2名に限ってみればそうでもなくなってくる。なぜなら彼らは、それまで相手先球団にとって全然縁の無かったマーケットを手土産に抱えているからだ。 

 

MLBを1つの商品としてみたときに、アメリカ国内はプロダクトライフサイクル内で成熟期に入りつつあるといえるだろう。それに対して日本国内はMLB放映権料の変遷をみれば現在導入期を抜け、成長期に入っているのがわかる。

こうなってくるとこの成長期の間にどれだけシェアを獲得しているかが今後の成熟期においての収益を左右してくる。

成熟期にある市場で稼ごうとするのはテストの成績を85点から95点に伸ばそうとするようなものだ。それに対して成長期にある市場で稼ぐのは35点から45点に伸ばそうとするようなものである。どちらが大変かは言うまでも無いが、どちらでも稼げるのは同じ10点である。収入に置き換えて見ればどちらも同じ金額であるなら35点の方に行く方が努力(=コスト)が低いわけでそちらのほうにより資源を注入すべきだ。

 

そういう視点から考えれば、松坂獲得に対して5000万ドルという投資はむしろこれぐらいで獲得できたのならばお買い得だったんじゃないかと思う。この金額がそれほどおかしな数字ではないというのは他球団だって3〜4000万ドルは入札していたことから伺える。数千万ドルぐらいなら十分ペイできると多くの球団は考えていたわけだ。

こうなってくると、そもそもその球団が持っている市場規模がモノをいってくる。同じぐらいの影響力を持つのであれば、1億ドルの営業収益を持つ球団より2億ドルの営業収益をもつ球団のほうが影響力に伴う稼ぎは大きくなる。メジャー有数の収益をあげているボストンならその効果も大きくなると踏んだのだろう。

 

例えば現在ヤンキースタジアムに出している日本企業の広告出稿量は億単位だといわれている。これは単純に億稼げるということだけではない。

ここでも日本市場というこれまで獲得できていなかった市場が参加してくることで大きく変化する。

それまで広告主という需要はアメリカ企業だけだったのだが、松坂入団に伴って日本企業という新しい需要先が生まれてくる。市場原理として需要が高くなるにもかかわらず供給量(広告スペース)は一定ならば、当然その金額は増加する。

結果として日本企業の広告料が単純に増えるというだけでなく、本拠地球場の広告料金全体のランクが上昇することになる。

 

ただこれはあくまで経営的な部分を含めての評価であって、選手本人の実力評価ではない。それを忘れてはならない。

アメリカの報道でも「メジャー経験の無い投手に対しての評価としては高すぎる」という発言もあったりするようであるがこれは金銭評価とは実力を評価するものだという誤解から生まれている考えだといえるだろう。

球団という会社組織からすれば、なぜ勝とうとするのか、なぜいい選手を獲得しようとするのかという問いに対する答えは「優勝したほうが、強い方が儲かるから」ということに過ぎない。

勝つことは目的でなく手段である。最終的な目的は「収益を上げる」ことであってその目的に対する第一の手段として勝利があるっていうことを忘れてはならない。もちろんスポーツというのは夢を売る産業でもあるから面と向かって収益を上げることが目的となってはいないだろうが(笑)

 

 

そういう意味で考えたときに李承ヨプの契約と似ているなぁと思うのである。

李承ヨプの入団を契機として、日本テレビは巨人主催全試合を韓国に対して売っていた。もちろん単純に李承ヨプさえいれば韓国に対して売れるのならロッテが既に売っているはずであるから李の入団が直接の契機ではないのじゃないかという意見もあると思うが、ロッテがそれを出来なかったのはロッテでは自前で放送作品を制作する能力が無かっただけだ。ロッテにそれがあれば行っていただろう。

 

やはりまず最初にスポーツを売り込むときに「自国選手の活躍」は大きな武器となり、最初の一歩になる。日本のことを考えてもたとえばサッカーのヨーロッパ各国リーグの放送の契機となるのはだいたい日本人選手の活躍である。MLBの放送にしたって日本人選手がいるチームが優先的に放送されている。

これらの放映権料の変遷を見ているとだいたい最初の数年は非常に安い金額で契約が成立している。これは市場として導入期にある時期といえる。この時期に関してはとりあえず多くの人に見てもらう必要があるので何らかの広告塔が欲しい。そのときに「自国選手の活躍」はうってつけなのだ。 

ただ端緒さえそういう自国選手に担ってもらえればあとはその球団そのものに魅力があれば自国選手がいなくなっても客は残る。これも日本国内を見ればわかるだろう。今では日本人選手がいなくても有力チーム同士の激突であればヨーロッパの試合は放送されている。これは既に自国選手の活躍でなくそのチームそのもののファンであったりリーグのファンになっている人が増えているからといえる。そこからが市場として成長期になるといえるだろう。

 

巨人の主催試合の放送が入ったのは今年から。となってくると巨人側としてはあと数年は李にいてもらいたいだろう。

既に巨人のグッズショップはソウル中心部に2店舗が開店されている。もちろん報道などではどこまで鵜呑みにしていいかわからないが大盛況と言っているし、地元の巨人ファンの日記・写真とかを見ても大混雑していたのがわかるので実際に結構売れ行きはよいようだ。

もちろん韓国では日本のように恣意的な偏向報道がないので巨人そのままを見ているだろうから、人気があるのも何の不思議も無いけど。

 

また日本テレビが売っているのは日本で放映されるNFLの映像のように現地用に加工された映像をそのまま流している(日本の放送席が写ったりしている)。となると日本テレビ側が韓国に販売するに当たり別途必要な制作費はほとんど存在しないだろう。結局日本で放映権料が2千万下がろうとも韓国で3千万で売れれば何の問題も無い。

 

結局巨人からすれば、既に成熟期にある日本国内で稼ぐよりも導入期にある韓国のほうが稼げる期待が大きい。その分のお金を考えれば今の李の年俸など安いものだろうな。

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