★ラストイニング1・2★

  • 鷹乃廉
    2009年05月15日 13:08 visibility104


この作品は私、鷹乃廉の自伝的小説です。


処女小説なので寛容な心で読んで頂けたらと思います。
緑茶でも飲みながらどうぞ。

*****************************

初めての公式戦は2年の夏、灼熱の太陽に照らされた霞ヶ丘球場だった。
「代打だ。流れを変えてこい!」


そう監督に告げられた。


ベンチ内が俄かに盛り上がる。


同級生の仲間や先輩が俺の肩や背中を叩いて励ましてくれる。
「頼むぞ!」
「行ってこい!」 



準備はしてあった。


いつも通り、チームで一番小さいヘルメットを被り、バットケースから相棒を取り出す。
『V−KONG 01』


それが俺の相棒の真名だ。


名のあるバットの中でも最も長く、最も太く、それ故最重量を誇る得物である。


俺以外チームメイトの誰も試合ではコイツを使っていない。


 ベンチに持ち込めるバットの本数には限りがあるが、
先輩達には無理を言って試合に持って行くバットの中の1本に入れさせてもらっている。



ベンチを出るとそこは自分の慣れ親しんだ場所ではなかった。


ベンチからグラウンドに立った瞬間だった。全ての景色が白く見えた。
(大丈夫。俺は落ち着いている。)


そう言い聞かせ歩き出した。


ネクストバッターサークルに置いてある滑り止めの粉を軽く手につけバッターボックスに向かう。
遠くの方から微かに場内アナウンスが聞こえた。


「代打のお知らせを致します。9番原君に代わりまして。バッターは鷹乃君。背番号17。」



 一振り。二振り。バッターボックスの手前で力強く二度素振りをする。
バッターボックスの白いラインの外側に立ち、球審に一礼する。
そして右足、左足とバッターボックスの中に足を踏み入れた。


入念に足場を均す。


ホームベースの前方、奥と手前の角にコンコンをバットの先を当てる。
(大丈夫。練習を信じて全力を尽くすだけ。)


もう一度心の中でそう呟くき、胸のマークを触った。


 


ゆっくりと構えに入る。


相手投手は今大会最速左腕、MAX147kmの直球を武器にする大会屈指の投手である。試合が開始されてから今に至るまで、この投手からは未だ1つのヒットも打てていなかった。 ……

著者・鷹乃廉 

chat コメント 

コメントをもっと見る

通報するとLaBOLA事務局に報告されます。
全ての通報に対応できるとは限りませんので、予めご了承ください。

  • 事務局に通報しました。