import_contacts 「★ラストイニング★」に関するブログ
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激しい激突、右肩に激痛が走る。足元には潜り込めたが身体の右半分は完全にブロックされ、伸ばした左手もボールが収まったキャッチャーミットによって本塁上で完全に押し潰されていた。その時、球審の腕が水平に開いた。「セーフ!!」俺の渾身のヘッドスライディングはキャッチャーの堅固なブロックの隙間を潜り抜け、左手中指の先2cmだけホームベースに触れていた。たった2cm。この僅かな距離のためにどれだけの練習を重ね...
|15年前 -
「セーフ!」、二塁審の手が横に開いた。完璧なスタートと変化球による僅かなの送球の遅れ。そんな状態で俺を刺すことは不可能だ。一打同点のチャンス。俺の仕事はワンヒットでホームまで生還すること。たかだか50メートルちょっとの距離が今日に限っては果てしなく遠い。二塁ベースの上で振り返り、相手外野手の守備位置を確認する。セオリー通り浅くはないが深くもない位置取り。彼らひとりひとりの肩の強さも研究済みである。...
|15年前 -
ベンチの監督からサインを確認する。(ノーサイン)ピッチャーが足を上げホームに向かって投球する。と同時に俺はリードを一気に広げる。ボールを掴んだキャッチャーが俺の大きなリードを見て、一塁にボールを投げる。予想できるプレイだ。悠々と塁に戻る。「セーフ!」 (当然だ。この程度の牽制でアウトになってちゃ、ランナーは務まらない――)アウトに出来そうで決してアウトにできない絶妙のプレイをし、針の穴ほどの一瞬の...
|15年前 -
(窮地には変わりないが、仕事の時間だな。)打席から投手の握る球の縫い目を確認できる眼を持ち、周囲の観察力と咄嗟の判断力を武器にする俺の専門は代打ではない。本職は代走、「ランナー」なのだ。入部したときから足の速さを買われ、自主練習でも走塁ばかりしていた。あるときは、大胆かつ大きなリードで相手バッテリーの集中力を削ぎ、俺というランナーに注意、警戒を向ける。またあるときは、小さなリードで相手を安心させ、...
|15年前 -
フルカウント、2ストライク、3ボール。ストライクを取られれば俺はアウト。逆にボールであればフォアボールで労せず1塁に進むことができる。ここまでストレートを3球、変化球を2球見せてもらった。今度はそのどちらが来ても対応できる。しかし、大会屈指の豪速球投手である。ウイニングショットはストレートに決まっている。 運命の6球目。ピッチャーの足がいつもより高く上がったような気がした。鬼気迫る形相である。大会...
|15年前 -
4球目、ピッチャーの足が上がり、左腕からボールが放たれる。(もらった、真ん中低め!)膝、腰、肩、腕、全身を連動させ体内に集約した力を開放し、俺は迫りくるボール目掛けて渾身のスイングをした。が、しかし――スイングを始めるとほぼ同時にボールが急激に沈み始める。ここまでの3球が直球であったが故に、ストレートに目を慣らされていた。数メートル先で起きた突然の変化に対応しきれない。渾身の一振りだったが、俺のバ...
|15年前 -
「プレイ」球審のコールを受けて相手バッテリーがサインの交換を始める。(俺への初球はストレートでくるのか、それとも変化球で来るのか?)ピッチャーの足が上がった。彼の左手から俺の胸元目掛けて矢のようなストレートが放たれた。(僅かに外れてる――)スイングしにいったバットを止める。「ボール」審判が低い声でコールする。俺の目は確かだった。(しかし初球が胸元のストレートとはこのバッテリーいい度胸をしている。)...
|15年前 -
この作品は私、鷹乃廉の自伝的小説です。処女小説なので寛容な心で読んで頂けたらと思います。緑茶でも飲みながらどうぞ。*****************************初めての公式戦は2年の夏、灼熱の太陽に照らされた霞ヶ丘球場だった。「代打だ。流れを変えてこい!」 そう監督に告げられた。ベンチ内が俄かに盛り上がる。同級生の仲間や先輩が俺の肩や背中を叩いて励ましてくれる。「頼むぞ!」「行ってこい...
|15年前
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