★ラストイニング3★

  • 鷹乃廉
    2009年05月15日 13:09 visibility105

「プレイ」


球審のコールを受けて相手バッテリーがサインの交換を始める。


(俺への初球はストレートでくるのか、それとも変化球で来るのか?)


ピッチャーの足が上がった。


彼の左手から俺の胸元目掛けて矢のようなストレートが放たれた。


(僅かに外れてる――)


スイングしにいったバットを止める。



「ボール」


審判が低い声でコールする。


俺の目は確かだった。


(しかし初球が胸元のストレートとはこのバッテリーいい度胸をしている。)


インコース高めというのはコントロールが甘くなれば体に近いだけに、


ボールを見やすいので長打になり易く守備側としてはなかなか攻め難いコースである。


 


続いて2球目。


(俺の狙いはストレート――)


狙い通りの球種だった。


しかし、ストライクゾーンから高めに大きく外れる。


(よし、ボールだ――)


「ボール」


再び審判が低い声でコールする。


(しかし、2球連続でボールとは俺との勝負を避けているのか? 3球目、ここは相手の意図を確かめるべく様子を見よう――)


 


3球目。


「ストライーク!」


外よりのストレート。


コースはやや甘かったが、俺は球筋を見極めることに集中しバットをスイングしなかった。


カウント、1ストライク、2ボール。


次の1球でピッチャーとバッターの優劣が決まる。


 


この3球を見てわかったことがある。


ひとつは、相手投手は細かいコントロールを不得手としており、球威ある直球に物を言わせて攻めてくるタイプだということ。


もうひとつは、今大会最速と謳われている彼のストレートがさほど速く感じないと言うことだ。


確かに速い。滅多にお目にかかれるスピードではない。


だが打てないほど速いという訳ではない。


 


どちらにせよ次の1球はピッチャーにとっても重要な1球である。


2ストライクと追い込めばピッチャー有利。


逆に3ボールとなればバッター有利となる。


(外しは無い。次が勝負――) ……

著者・鷹乃廉

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