
★白球、天を衝く 第5球〜合宿〜★
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鷹乃廉
2009年06月26日 13:58 visibility115
このお話はフィクションです。架空です。嘘っぱちです。
それでも読んで頂けるなら、ご覧ください。(o*。_。)oペコッ
・・・絶対にフィクションなんだからねっ。
第1球 〜始まり〜 第2球 〜合宿所〜 第3球〜初練習〜 第4球〜ルール〜
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徐々に暑さを増す太陽の下、馬車馬の如く走り続け、ただただ身体を鍛えるだけの日々。
ボールは拾う時と磨く時にだけ触ることが許される。一年生は未だグラブを使う必要もないらしい。
中学までエースかクリンナップだった人間は不満の声を漏らすことも少なくない。勿論、練習後先輩達がいなくなった後のボール磨きの場で愚痴るだけだが。もし万が一、このような愚痴が上級生に見つかれば主犯格の一年は私刑確定だが、他の一年生全員も連帯責任を負わされるのは既に経験済みである。
そんな日常のなか、奴隷のごとき新入生にグラブを持参せよとの指令が天皇陛下(主将)から下った。
野球部員になってから一ヶ月、五月の連休を控えてのことだった。
三日間富士の山奥で合宿をするらしい。この話を聞いた時は、ついにこの時が来たかと一年の誰もが喜び涙した。だがその直後、同期の一年生、十三人間で泥沼の言争劇が勃発する。
その理由は唯一つ、持ち物について。遠征合宿に必要なチームの道具を一年が分担して持って行かなければならないからだ。
練習着2着、アンダーシャツ・ストッキング・ソックスを三日分、帽子・グラブ・スパイク・練習靴、これらが個人の荷物。それに加えて、試合球2ダース・練習用ボール50球・ヘルメット10個・試合用バット8本・練習用マスコットバット29本、キャッチャー道具一式3セット、などのチームの道具がある。
どう考えてもバッグ1つに納まりきる量ではない。
誰が何の荷物をどれだけ持って帰るかであわや乱闘騒ぎ。
以下 暴言の数々を纏めた議事録
A:「俺バッグ一つしか持ってねぇからさ」
B:「関係ないだろ、ヘルメットは被って行けば荷物に入らなくない?」
C:「キャッチャー道具は捕手希望のヤツが持って行くべきだろ」
B:「俺一人で三セットも持てるわけねーだろ。考えろ!頭使えってんだこの脳無し!」
C:「じゃぁテメーが考えろ!ボケ!」
D:「あ・・・俺、試合球だけ持ってけばいい?」
B&C:『ふざけんな!!1人だけ楽しようと思ってんじゃねぇぞ』
こんな感じで延々二時間ほど、醜くむさ苦しい激論が繰り広げられた。
リーダーシップを取って主に盛り上がってるのは血気盛んな内野手軍団の方々、一歩引いた外野手組は端で帰り仕度をしながら、ニヤニヤ見てるだけ。あいつらホント仲良しだなと。
さて、これだけ揉めたにも関わらずなかなか決まらないので、実践的で民主的な解決手段を用いることにした。最終手段ではあるがこれなら誰もが公平で平等で且つ、短時間で決着がつく。
・・・じゃんけんの結果、自分は練習用ボール4個とヘルメット1個、それにバット5本入りのケースを一つ持つことになった。日頃の行いが良いからだろう。じゃんけんは全勝、そしてこの荷物の量なら最良の部類である。
最も可哀想なのは、なんとか皆をまとめようと議論の最初から全開だった内野手のB君。キャッチャー道具2セットに、11本入りバットケースである。捕手セット2個とマスコットバット11本ってどれだけ重さあるんだろう。とりあえず考えるのはやめておくのが無難だ。
いつもより重い荷物を背負って家路へ急いだ。二時間も馬鹿騒ぎをしたおかげで帰る頃にはすっかり日付が変わっていた。明日は初めての合宿、朝の7時に駅に集合ってことは、一年生は一時間前には集まってなくてはいけなくて、いったい何時間後に起きればいいんだ? と考えながら眠りについた。 寝坊しませんように。
続く
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- 事務局に通報しました。
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