2011年6月

  • 東研作
    2011年10月21日 13:23 visibility32

入社後1ヶ月もしないうちに、前任者が愚痴っぽい人だとわかってきた。異動も納得いっていないし、自分の給料にも納得いっていない、他の人の給与にも納得いっていない。そんなタイミングで業界未経験の新人が入ってきたものだからさあ大変。僕は捌け口として利用されはじめていることに気付き始めていた。

 お昼をごちそうしてくれるわけでもなく聞かされる愚痴、土日の夕方になると説教まじりで電話してくるその口調は酔った人間のものだった。そこからはじき出される愚痴。
 翌日に社長に報告し、あの人からの電話は仕事の説教が混じっていて微妙にお断りしにくいが、土日は土日なんで電話を拒否していいかとたずねたところ、それは構わないとのことだった。他にもあちこちに電話をかけていたようで、被害者は自分だけではなかったの巻だった。
 そんな中、その人のお母さんが脳梗塞で倒れた。彼はバツイチで養育費や慰謝料による借金を重ねているため病院に一時金を払えず社長に3万円を借りたそうだ。彼の携帯電話を引き継いだ僕が、その後あちこちの消費者金融から電話がかかってくる二次被害もあるがここでは置いておく。
 翌日まで、僕の携帯には彼からの着信履歴が8件ほどあった。何を言われても僕にはお見舞いを申し上げることしか出来ないので、いい年のおじさんの愚痴を聞くことは拒絶した。最終的に彼は社長に対して僕に漏らしていた不平不満を泥酔状態でぶちまけたそうだ。社長から「ちょっといいかい」と呼び出され、泥酔した彼からこんな電話を受けたが変わった様子はなかったか、と聞かれたので、黙っていたけど実は以前にそういった内容の愚痴は聞いていた、と告げた。そしてこの日の夕方、休んでいた彼が会社にやってくるというので、「だったら我々(僕とギャル社員)は居ない方がいい。入ったばかりの会社でそういう渋い話は耳にしたくない」と言って早退させてもらった。
 しかし彼は「体調不良です」の一言でやってこなかった。そして翌々日の夕方、号泣しながら彼は会社に入ってきた。しかししおらしいのは最初だけ。あとは聞くに堪えないような会社の不満を延々と垂れ流していた。あまりのバカバカしさに僕は仕事もそこそこに定時きっかりに帰った。結果として「会社都合による退職」として収まったそうだ。ただでさえ人員不足の会社でいきなりのマイナスひとり。前任者が突然いなくなったため、引き継ぎも強制終了、今後は自分の判断でやるしかなくなってしまった。
 いい意味でも悪い意味でも開き直ってやるしかない、そうであれば現有勢力に不満があっても上手く付き合って自分の仕事を楽にするしかない、そう思ってギャル社員をおだてたりほめたりしながら自分の仕事を楽に進めようと謀ったが、その計画が翌月にはいきなり破たんすることになるのを、この時点の僕(とこれを読んでいる人)には知るよしもなかった。

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