今年のルーキーたちについて2010 (3) 土本恭平

  • 舎人
    2010年11月15日 04:42 visibility3188


ルーキーたちの話の三回目、今日はドラフト3位入団の土本についてです。


原監督がぜひとも欲しいと指名を要請した即戦力投手でした。


この投手の活躍を巨人はルーキーながら優勝するための計算のうちに入れていました。


しかし、全くと言っていいほど一軍で活躍ができず、


シーズンのほとんどをファームで過ごすことになってしまいました。


そういった意味で土本は巨人V逸の戦犯の1人と言っていいと思います。


 


昨年のドラフトは1位の長野に始まり、


2位の鬼屋敷以外本ドラフトの5人が全て大卒社会人でした。


若手選手の成長にロマンを求める私のような者には、


どうしても関心が高卒選手に向かってしまいます。


なぜならば高卒選手はモノになった時のスケールが大きく、活躍期間が長いからです。


しかし、モノになる確率は大卒社会人出身よりも低く、いわば投機的な補強と言えます。


ドラフトの際、その時のチームの状態で育成を覚悟で高卒にするか、


すぐ使いたいから即戦力として大卒社会人にするかを決めることになります。


それを見極めないでチームの柱がしっかりしている時に即戦力ばかり求めると、


徐々にチームは小粒になってきますし、チームの柱が必要な時に高校生ばかり取っていると、


チームは底なしの暗黒時代に向かっていきます。


そのあたりのバランス感覚はチームの補強を考える上で非常に大事な訳で、


ロマンがあるからと言って高校生ばかり指名することが良しとは私も思っていません。


昨年の本ドラフトで巨人は大卒社会人右腕を2名指名しました。


これは昨年の時点で連覇を考えた場合、必ず投手が必要になるという


当然の危機管理からでしょう。


しかし、結果的は土本が一軍登板4試合で0勝1敗、小野に至っては一軍昇格なしです。


ドラフト時の評判は良かったにしても、即戦力としての期待は完全にあてが外れました。


土本にしても小野にしても少しでも一軍の戦力になっていれば


巨人は優勝していたかもしれません。


 


しかし、小野は以前も話した通り当初は指名の予定ではなかったと思います。


昨年のドラフトは本来、即戦力投手1名、高卒投手1名のはずだったのです。


それが5位を指名する段階でめぼしい高校生投手が残っておらず、


大学生の小野が指名されたのです。


つまり小野は即戦力として期待していたと言うより素材重視の指名だったということです。


巨人としては即戦力投手は土本1人で十分だった。


巨人にとって土本の活躍は確信に近いものだったのでしょう。


しかし、私は昨年のドラフト時、土本について非常に嫌な予感がしていました。


と言うのは巨人は過去に社会人出身の右投手で成功例がほとんどないのです。


 


過去30年間(1980年〜)の社会人出身右腕投手の成績 ※(括弧内は巨人時代の成績)


1982年 D2位 岡本 46試合 3勝2敗 防御率3.55


1985年 D2位 広田 342(159)試合 29勝19敗30セーブ(18勝9敗19セーブ) 防御率3.00    


1986年 D2位 水沢 一軍登板なし


1988年 D2位 松谷 59(39)試合 4勝4敗1セーブ(3勝4敗1セーブ) 防御率5.06


1989年 D2位 川辺 17(0)試合 1勝3敗1セーブ(一軍登板なし) 防御率4.89


1992年 D3位 西山 207試合 24勝18敗12セーブ 防御率4.11


1996年 逆指名D1位 入来 215(173)試合 35勝35敗3セーブ(27勝24敗) 防御率3.77


1997年 D6位 中村 一軍登板なし


1998年 D6位 玉峰 一軍登板なし


1998年 D7位 進藤 一軍登板なし


1999年 逆指名D2位 谷  2試合 0勝0敗 防御率37.80


1999年 D4位 内薗 26(22)試合 0勝0敗(0勝0敗) 防御率5.50


2004年 自由枠野間口 84試合 11勝10敗1セーブ 防御率4.64


2005年 D2位 栂野 25試合 0勝0敗 防御率5.66


2009年 D3位 土本 4試合 0勝1敗 防御率7.36


 


過去30年間に遡って調べてみましたが、96年に逆指名で入団した入来が最も良い位です。


しかし、これも大成とまでは言えないものだったと思います。


昨年の日記を書くにあたってさらに遡って調べてみると、


ようやく成功例に当たったのですが、それは江川事件で阪神にトレードされた小林繁でした。


“巨人で社会人右腕が成功しないのは江川事件に呪いかも!?”などと書きましたが、


冗談でなくこの手のジンクスは決して無死してはいけないことだと思います。


この時、私が仮説として考えたもの・・


 


甲子園や大学球界のスター選手を次々と入団させてきた巨人という球団は、


社会人出身者にはなかなか華というものを求めず、いぶし銀の地味さを求めてきた。


そのため、レギュラーやエースとして育てることよりも、縁の下の力持ち的な役割を求めた。


それが、社会人出身者に水が合わなかったり、大成した選手が少ない原因ではないか?


上背のない力投型でキレの良いフォークボールを使うことなどから、


私は土本に入来を期待していました。


社会人出身という不安はあったとしても、ルーキー時の入来のように馬車馬のように、


連日ブルペンで待機し、縁の下の力持ちにはなれると思っていたのです。


しかし、土本は入来になれませんでした。なぜ、土本は入来になれなかったのか?


その一番の原因を考えるとどうもその原因は、


土本の被弾癖に端を発しているように私は思います。


 


2010年土本登板結果


2月17日 紅白戦 1回      0安打0奪三振0四球0失点


練習試合


2月21日 福岡戦 1回      0安打1奪三振0四球0失点


2月28日 西武戦 1回      0安打0奪三振1四球0失点


オープン戦


3月05日 千葉戦 1回      0安打1奪三振0四球0失点


3月07日 福岡戦 1回      2安打1奪三振0四球1失点 S


3月13日 オリ戦 1回      0安打1奪三振0四球0失点 S


3月16日 阪神戦 1回      1安打2奪三振1四球0失点


3月21日 横浜戦 1回      1安打0奪三振0四球1失点 スレッジに被弾


一軍公式戦


3月28日 ヤク戦 1回      2安打1奪三振2死球0失点


3月31日 横浜戦 1回      1安打1奪三振2四球3失点 ●スレッジにサヨナラ被弾


4月04日 広島戦 1回      0安打1奪三振0四球0失点


4月09日 広島戦 1回    0安打1奪三振1四球0失点


ニ軍公式戦


5月05日 湘南戦 1回1/3 3安打2奪三振1四球1失点 ●九回裏先頭四球から野田にサヨH


5月08日 ヤク戦 1回2/3 1安打2奪三振1四球0失点


5月15日 西武戦 1回   3安打2奪三振1四球0失点 坂田に2点被弾


5月25日 楽天戦 1回    0安打1奪三振0四球0失点


5月27日 楽天戦 1回    2安打2奪三振1四球0失点


6月06日 楽天戦 2回    4安打0奪三振1四球2失点


6月10日 湘南戦 4回    3安打2奪三振4四球2失点 先発


6月15日 ハム戦 1回    4安打0奪三振2四球0失点


6月20日 千葉戦 3回1/3 2安打2奪三振4四球0失点 先発


6月26日 楽天戦 0回2/3 3安打0奪三振0四球1失点


7月07日 ヤク戦 5回    3安打7奪三振2四球0失点 ◯先発


7月19日 千葉戦 5回2/3 2安打7奪三振2四球0失点 ◯先発


7月28日 西武戦 5回1/3 10安打3奪三振5四球12失点 ●先発、4被弾の大乱調!


8月07日 ヤク戦 1回    0安打0奪三振1四球0失点


8月09日 千葉戦 0回0/3 2安打0奪三振1四球1失点


8月15日 湘南戦 1回    1安打2奪三振0四球1失点


8月24日 ヤク戦 1回    2安打1奪三振0四球0失点


9月02日 千葉戦 0回2/3 1安打1奪三振1四球0失点


9月05日 湘南戦 2回    5安打1奪三振0四球1失点


9月13日 ハム戦 6回    5安打3奪三振1四球4失点 ●先発、2被弾


9月20日 楽天戦 1回1/3 6安打0奪三振0四球2失点 先発


 


キャンプの頃、土本は抜群の投球をしていました。その好調はオープン戦まで続きます。


150キロに迫るストレートと切れ味鋭いフォークボールは、


文句なし即戦力の名に恥じないものでした。


しかし、オープン戦の最後の登板で、その後の土本を暗示する出来事が起こります。


プロ入りしてから初めての失点はスレッジのホームランでした。


これは直接勝敗に影響するものではありませんでしたが、


この時の被弾は10日後の試合のとんでもない伏線となります。


3月31日の横浜戦は巨人が初回に4点を先取するものの追いつかれ、


5対5の同点の九回裏に土本が登板したところ、10日前に打たれたスレッジに、


またもホームランを打たれたのです。巨人にとって今シーズン初のサヨナラ負けでした。


この後、土本は2試合ほど一軍で登板しましたが、二軍に落とされます。


そして、今シーズン土本は再び一軍に昇格することはありませんでした。


 


二軍に落とされた土本はリリーフとして良かったり悪かったり、


登板する試合によってジキルかハイドのような気まぐれの投球をしていましたが、


徐々に本来の調子を取り戻し、6月から7月にかけては先発も任されるようになりました。


特に7月の前半は非常に調子がよく、一軍の先発不足もあって、


いよいよ一軍復帰かと噂されていました。今度は先発としてです。


ところが、昇格目前にオールスター戦があり、


もう一試合イースタンで調整するつもりで登板した7月28日の西武戦、


土本はとんでもない大乱調!なんと5回1/3で12失点という失態を犯します。


この日、土本はマウンドが合わなかったのか先頭バッターにいきなり四球を与えます。


初回に1失点だったものの、その後は何とか立ち直り二回、三回は無失点、


しかし、四回に本塁打2発で3失点、六回には本塁打2発を含む5本の長短打で7失点です。


12失点は全て自責点だったため、防御率も2.83→5.56にまで悪化しました。


この試合の失態のために土本の一軍再昇格は見送られます。


そして、その後まずまずの投球をしても、


ついに閉幕まで土本の一軍昇格の話は出ませんでした。




今シーズンの序盤あれほど調子の良かった土本が、


なぜファームでも打ち込まれるまでになってしまったのかを考えると、


私は本塁打に対する警戒心から、


徐々に投球が小さくなってしまったのではないかと思えます。


怖いもの無しで思い切り腕を振っていた小柄な投手が、


本塁打を怖がるようになって必要以上に制球を気にするようになり、


徐々に腕が振れなくなっていったのではないか?


コントロールは元々可もなく不可もなくの投手です。


上背もないオーバースローは球に角度もないでしょう。


要は投げっぷりの良さがあったから結果が出ていた投手なのであり、


その思い切りの良い腕の振りがあってこそのフォークボールだったのだと思います。


私は今年の土本のことを考えるとそんな風に思えます。


 


来シーズンに向けて土本は投球フォームを改造するといった話も出ているようですが、


私はもう一度本来の腕の振りを取り戻すことが大事だと思います。


来シーズンこそ巨人の優勝のために役立って欲しい。


そして、社会人出身投手が大成しないというジンクス打破を目指して欲しい。


 


動画はすでに紹介した5月5日のものに加え、


まだアップしていなかった5月19日と6月20日の奪三振シーンを合わせてみました。


調子の良い時の土本の投げっぷりの良さが写っています。


 


土本恭平 2010年の活躍 


http://www.youtube.com/watch?v=iaE4Mji6NsY


 


既出


土本恭平(巨人) 2010年5月5日


http://www.youtube.com/watch?v=7BT0Txk2FH0


土本恭平奪三振2010年7月19日


http://www.youtube.com/watch?v=YctenWQRvx4














































































































































































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