今年のルーキーたちについて2010 (5) 小野淳平
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舎人
2010年11月29日 01:01 visibility1462
ルーキーたちの話を断続的ながら書き始めましたが、あと残り4人になりました。
しかし、大立はケガで今シーズン全く登板の機会がなかったので省略するとして、
残りは小野、星野、神田の3人ということになります。
その中で今日は本ドラフト5位で入団した小野について振り返ってみたいと思います。
小野はチアリーディング日本一で有名な日本文理大出身ですが、
オリックスのドラフト1位ルーキー古川とは大学時代の同期。
左右の2本柱としてチームを引っ張りました。
大学繋がりとしては脇谷が6期上の先輩ということになります。
この日本文理大学の野球は面白く、投手をあまり引っ張らずに、
4、5人の投手を1〜2イニングずつ継投するという特長があり、
主に小野は先発で、古川は抑えとして登板していました。
ドラフト時の小野の評価は、まだまだ投球フォームが定まっておらず、
素材感が強いものの、ストレートにしてもスライダーにしても1球1球は素晴らしく、
プロで緩急やストレートと同じ腕の振りの変化球を覚えれば、
将来リリーフとしてかなり期待できると評されていました。
特にストレートは高めに抜けることがなく、
MAX152キロ、常時150キロ前後の豪腕とのことで、
球の力だけならすでに一軍クラスとのことでした。
大学時代は先発ながら短いイニングをガンガン飛ばすスタイルだったので、
巨人も将来のリリーフ、抑え候補と期待して指名したのでしょう。
小野はヤクルトが上位で指名するなんてウワサがありました。
何度か話しましたが、巨人は昨年のドラフトでは投手を2名指名する予定で、
1人は即戦力として土本、もう一人本当は高校生投手のはずでした。
しかし、狙っていた高校生投手が残っておらず、
欲しいと思っていた4人の選手を指名した後、
まだ指名されずに残っていた選手の中にこの小野がいたのです。
巨人にしてみれば欲しかった高校生投手の代わりに、
この小野を素材の良さから指名したのだと思います。
したがって、長野や土本のように、どうしても欲しいと思って指名した訳ではなく、
縁があって巨人が指名することになった投手ということになります。
このあたり今年4位で指名された小山と経緯が似ている気がします。
小山も当初巨人は指名する予定ではなかったそうです。
本当は枠の関係で澤村、宮國、田中で指名を打ち切るつもりだったところ、
小山がまだ指名されずに残っていたため、指名したのだとか。
小野も小山もドラフト会議の“あや”によって、巨人と縁があったのです。
150キロ前後を常時計測するとは並の投手ではありません。
どんなに凄い投手か期待して春の教育リーグを待っていたところ、
3月13日、ついに小野を見る事ができました。
八回1イニングを内野ゴロ三つに抑える無難な投球でしたが、
球速はMAXで142キロ、ストレートの平均は139キロほどというものでした。
「今季も始まったばかりだから仕方がないかな」と思い、
次に登板する時こそ、150キロ越えのストレートを期待していました。
しかし、次に見た3月18日も七回に1イニング投げたのですが、
MAXは140キロ止まり、平均すると137キロ程度しかありません。
これは入団前の評判よりも10キロも遅い!?常時150キロ前後ではなくて、
常時140キロ前後の投手だったのです!
その後、何度か小野の投球を見る事がありましたが、
3月31日の登板でもMAXが140キロ、その後故障による離脱を挟んで、
シーズン後半の8月21日のMAXが142キロ、8月22日が141キロ、
結局私が見た中で最も速かったのは3月21日の西武戦、
九回に登板して美沢に投げた144キロがシーズン通じての最高球速でした。
この時もこの144キロが突出して速かった感じで、
ストレートの平均球速としてはやはり140キロ前後というものでした。
このスピードガンというものは非常にあやふやなもので、
球場によって甘かったり辛かったりするばかりか、
時として誤計測もある訳で、絶対的なものでは決してありません。
ドラフト1位で巨人入団が決まった澤村は最速157キロ右腕などと言われていますが、
実は今年の秋に神宮球場で159キロの球速表示を出しています。
しかし、この159キロを出した時の球種はスライダーだったそうで、
明らかな誤計測だったようです。
どうやら神宮球場では右投手が外角低めに投げる球が一番速く計測されるそうで、
由規の日本記録となった161キロも外角低めの球でした。
ところが、この由規の161キロはテレビの画面には152キロが表示されており、
先程の澤村の159キロ同様、疑惑の球速表示として価値を疑う意見もあります。
小野が150キロを出した根拠となっているのは、
昨年6月に行われた大学日本選手権、開催地は神宮球場です。
したがって、この時の球速表示も少し疑ってかからなくてはいけません。
今年の神宮球場とガンの表示が辛くなった今年のジャイアンツ球場では、
だいたい4〜5キロほど神宮球場の方が甘く感じます。
したがって、小野の150キロもジャイアンツ球場では
145キロ程度に表示されたのではないか?
逆に今年3月21日の小野がジャイアンツ球場で出した144キロは、
神宮球場なら149キロとして表示されたのではないか?そんな風に思ってしまいます。
もっとも、小野はその後秋の九州大会、熊本市の崇城大学野球場という所でも、
自己最速の152キロを記録しているようなので、疑ってばかりはいられません。
しかし、どうも常時150キロ右腕という評判はドラフト時に、
かなり水増しされて評価されていたことは間違いないでしょう。
実際は常時140キロ前後、調子が良い時にストレートが150キロまで達する、
素材型のパワーピッチャーというのが正しい評価ではなかったかと思います。
入団後にファームで投げ始めた小野でしたが、
プロ初登板となった3月5日の教育リーグの試合では制球が定まらず、
いきなり逆転サヨナラ負けで敗戦投手になってしまいます。
しかし、その後はまずまず安定感のある投球をしていました。
好投するか失点するかは最初のバッターに対してが全てで、
すんなり先頭バッターを抑えると、そのまま試合に入って行ける感じですが、
先頭バッターを出すとほとんど失点に繋がる投球をしてしまいます。
どの投手でも先頭バッターを出すことは失点に繋がることは間違いありませんが、
小野の場合はそれがやたらと顕著なのです。どうやら外国人の投手のように、
ランナーを背負ってからの投球に課題があるのでしょう。
2010年小野淳平登板結果
春期教育リーグ
03月05日 湘南戦 2回1/3 5安打6奪三振1四球 ●
1点リードの七回から登板するも八回大田のエラーにより同点、
さらに九回四球四球と続けて与えサヨナラ被安打
03月13日 千葉戦 1回 0安打0奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
03月18日 千葉戦 1回 1安打2奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
イースタン公式戦
03月21日 西武戦 1回 1安打2奪三振1四球0失点
03月22日 西武戦 2回 1安打2奪三振2四球 ◯
同点の七回から登板し、八回勝ち越し本塁打を打たれるも味方が逆転し、プロ初勝利!
03月31日 ハム戦 1回 0安打1奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
04月04日 楽天戦 0回2/3 0安打1奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
04月06日 ヤク戦 0回1/3 2安打1奪三振1四球
6点リードの七回から登板するも安打安打四球でノーアウト満塁とし、三振を奪った場面で降板、
代わった上野の時にゴロと安打で2自責点
07月18日 西武戦 1回 0安打0奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
07月19日 千葉戦 0回1/3 0安打1奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
07月31日 ハム戦 1回1/3 1安打1奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
08月06日 ヤク戦 0回2/3 0安打0奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
08月09日 千葉戦 0回1/3 0安打0奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
08月14日 湘南戦 0回2/3 1安打0奪三振1死球
七回一死ランナーなしで登板するも死球と円谷のエラーにより失点2
08月21日 楽天戦 1回 0安打1奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
08月22日 楽天戦 1回 0安打1奪三振1四球0失点
[先頭バッター凡退]
08月24日 ヤク戦 3回2/3 5安打2奪三振0四球
先発の笠原が三回一死一二塁で降板、後をうけて登板するも、3連続被安打 、
4失点(小野の出したランナーによる失点は1)
08月28日 西武戦 0回2/3 0安打0奪三振0死球0失点 セーブ
[先頭バッター凡退]
7点リードの九回から登板した神田が乱調!3点を返され一死満塁の場面で登板、
打者を初球セカンドゴロ併殺打で打ち取り、僅か1球でプロ初セーブ!
08月29日 西武戦 0回1/3 1安打1奪三振1四球1死球
[先頭バッター凡退]
同点の七回から登板するも一死後、死球安打四球で一死満塁とし降板、
星野を挟んで代わった中里が打たれ2失点、味方が逆転し負け星は付かず。
09月02日 千葉戦 5回1/3 10安打6奪三振1四球1死球
プロ初先発も3本の被本塁打で5失点
09月09日 ハム戦 1回 0安打1奪三振0四球0失点
[先頭バッター凡退]
09月17日 西武戦 3回1/3 6安打0奪三振3四球
二度目の先発登板も初回から掴まり四回途中で降板
チャレンジマッチ
07月14日 湘南戦 1回 0安打1奪三振0四球0失点
シリウス
07月02日 JFE東日本戦 2回 2安打1奪三振0四球0失点
フェニックスリーグ
10月06日 広島戦 6回1/3 3安打0失点 先発◯
10月11日 阪神戦 3回 7安打
六回から登板するもヒットと大田の2つのエラーなどで3失点
小野は4月6日のイースタンヤクルト戦から、7月4日のシリウスの試合まで、
約3か月間登板がありませんが、これは左足をケガしていたからです。
このケガさえなければ一軍に上がっていたのは、
黄ツーロンや林イーハウではなく、小野だったかもしれません。
ケガによってシーズンの約半分を棒に振ってしまったのですから、
なんとも残念なルーキーイヤーになってしまいました。
この成績は即戦力として期待していたなら物足りないものだったでしょう。
しかし、元々小野は即戦力としてよりも素材の良さを期待しての入団、
その点で見れば、高い奪三振率も、四死球の少なさもまずまずだったと思います。
今後の課題としては投球にメリハリを付けること。
球種はカーブもスライダーもフォークも一通り投げられますが、
それが配球という形で活かされていません。
見ていてなんだか思い付いた通りの球種を投げているだけです。
もっとも大学時代は投球の9割がストレートだったようで、
変化球を本格的に使い始めたのはプロ入り後なのです。
今までの小野は変化球を投げられると言っても投球の中で、
ただのアクセントに使っているに過ぎなかったのでしょう。
それがフォークだろうとスライダーだろうとどうでも良かったのです。
先頭バッターに痛打されると必ずと言っていいほど失点するのは、
要はストレートの出来次第で、結果が決まってしまうからだと思います。
配球を考えずに投げるのは投手ではなく投げ屋と言いますが、
今シーズンの小野はどちらかというと投手ではなく投げ屋に近かった感じでした。
今後の小野に必要なのは配球に基づく投球ができるようになること。
また、ストレートの出来不出来にかかわらず打者と渡り合える、
引き出しの多さを身に付けることでしょう。
まずは投球フォームを固め、試合の中で頼りになる変化球を1つ手に入れることです。
そこから自分なりの配球を組み立てられるようになれたらと思います。
それが小野がただの投げ屋から投手になることだと思います。
11月13日のソフトバンク戦で小野は先発を努め、
四回を無安打1四球無失点の好投を見せました。
これは川口コーチと取組む緩急自在のピッチングが成功したようで、
修得中のカーブが見事武器になったようでした。
このカーブなり緩急が本物なら、来シーズンの小野は相当期待できると思います。
ただカーブと言う球種は修得が最も困難で、センスが要求されます。
それが本当に使えるようになったかは俄に信じ難いです。
しかし、カーブであろうと他の球種であろうと、
自分の投球を組み立てられるような変化球の修得は、
今後小野がプロで成功するためには必要不可欠です。
ぜひとも自分のものにして欲しいと思います。
動画はまだアップしていなかった3月21日と3月31日のものを新しく作りました。
球速表示以上に速く感じるのが小野のストレートの特長だと思います。
新しくアップ
小野淳平 2010年3月21日
小野淳平 2010年3月31日
既出
巨人D5位入団 小野淳平のピッチング 2010年3月13日
小野淳平奪三振 2010年7月19日
小野淳平 奪三振 2010年8月21・22日
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