今年のルーキーたちについて2010 (7) 最終回 神田直輝

  • 舎人
    2010年12月27日 00:44 visibility1545











































































































































この「今年のルーキーたちについて」も今回が最終回・・
このシリーズ、本当はドラフト前に終わりにしなくてはいけなかったのに、
ずいぶんと遅くなってしまいました。
最後に取り上げるのは育成ドラフト5位入団の神田についてです!

神田は群馬大学の準硬式野球部の出身、異色の経歴です。
群馬県は私の現在の赴任先でもあり、地元みたいなものですが、
群馬大学はその群馬県のスティタスの1つであり、
群大の学生は少し特別な視線で見られている存在でもあります。
キャンパスのある前橋市内の学習塾や家庭教師派遣のポスターや看板には、
「群大生による何々・・」なんてわざわざ書いてあります。
そういった但し書きが何の意味を持つのかハッキリとは分かりませんが、
群大生のほとんどが将来、教員か医者になる学生だという事で、
信用に足るという地元の人の思いがあるからなのでしょう。
神田も群大の教育学部出身、体育の先生の免状を持っているそうです。
もしもジャイアンツの入団テストに合格していなかったら、
どこかの学校で「先生」と呼ばれていたのかもしれません。
もっとも、プロを経験して大成しようとしまいと教師になることはできます。
若いうちはより困難な道を選んだ方が将来の自分のためになるかもしれません。
そんな思いから神田は教職よりもプロ野球の入団テストを受けたのかもしれません。












































































































































この神田を実際に初めて見たのは星野の時と同じ、
3月9日の西武ドームの試合でした。
以前話したとおり非常に寒い試合で、かじかむ手を息で暖めながら、
必死でレポをし、ビデオを回していたような試合でした。
その試合の3番手として神田は登板したのですが、
同点の場面で勝ち越しタイムリーを打たれ負け投手になっていました。
この試合の神田の球速はMAX132(2回)、
ストレートの平均球速129~130キロでした。 
これは先日話した星野よりも7キロほど遅い球速です。
投げ方はかつての斎藤雅樹をまさに彷彿とさせるもので、
巨人には無いタイプとして非常に魅力的に写りましたが、
いかんせんこの球威では厳しいと思いました。
スライダーのキレも悪くなく、ブレーキが良く利いていましたが、
なんだか素人目にもフォームのゆるみが分かる程で、
テスト入団だからこんなものなのだろうと納得した覚えがあります。
2010年巨人新戦力[尾藤・神田・河野・星野] 2010年3月9日












































































































































次に神田を見たのは5月15日の高崎の試合でした。
育成選手の神田はなかなか公式戦では投げさせてもらえないのですが、
出身の群馬県で試合があるという事で出場の機会を与えられたのでした。
試合前、ご当地選手ということで歓待を受け、花束を贈呈されていました。
試合では六回一死から辻内に代わり簡単に打者二人を打ち取ると、
イニング跨ぎで次の七回も登板します。
しかし、先頭の大島は打ち取ったものの、続く岳野の四球を与え、
一死一塁から梅田にタイムリーヒットを打たれていました。
さらに、黒瀬に内野安打を打たれた場面で神田は降板しました。
この日のMAXは139キロ、平均球速でも137キロほどありました。
春先よりも球速は上がっている感じです。
もっともこの城南球場のスピードガンはかなり甘め・・
マイナス2キロの補正をした方がいいでしょう。
とは言え3月の試合では平均球速が130キロに満たなかった投手が、
力のこもった投球をしていることに少し驚きと喜びが交差しました。
神田直輝 地元群馬凱旋登板 平成22年5月15日 ←New






































































































































その次に神田を見たのはお盆休みの8月15日、
横須賀スタジアムの湘南戦ナイターの試合でした。
この試合、すでに先発の深田が打ち込まれ、0対9と試合が壊れていたのですが、
六回途中、古川の残した一塁ランナーを背負って神田は登板しました。
これは右の大砲、ファームで調整中の吉村に対するワンポイントの登板のはずでした。
神田は期待通り吉村をサードゴロに打ち取ります。
しかし、サードを守っていた大田がセカンドへ悪送球!?
図らずも無死一二塁のピンチを招いてしまったのです。
大量リードの中とは言え、さらに大量失点の危機です。
バッターはリーグ本塁打王の筒香、目を覆いたくなる思いでした。
ところが神田は筒香を外角のカット気味の球を有効に使い翻弄します。
そして、最後は低めのボール球で空振り三振!
さらに同じ左バッターの稲田もフルカウントから空振り三振に奪い、
スタートを切ったセカンドランナーが刺されたため、
ゲッツーとなり無失点で切り抜けたのです!
実に肝の据わった投球でした。
残念ながら球場にスピードガンが無かったため、球速は分かりませんが、
ピンチの場面で今までで一番の投球と球威を見せていた感じでした。
おそらく球速も140キロ前後はあったことと思います。
神田直輝 奪三振 2010年8月15日

私が今年神田を見たのはこの3回でしたが、見るたびに球威が増している感じで、
マウンドでも堂々としてきた感じです。
10月11日のフェニックスリーグ阪神戦を観た“エース朝井”さんによると、
2chの実況スレで神田の投球をこんな感じでレポしています。

521 :エース朝井 :2010/10/11(月) 15:13:23.19 ID:jfU3ZgQP
9回表 
7→8 松本、代→7 福元 
投手 神田! 
高濱 137km 中飛 
柴田 133km 投ゴ 
水田 137km高め からさん

727 :エース朝井 :2010/10/11(月) 17:48:16.33 ID:jfU3ZgQP
③神田について 
本日巨投唯一のさんぼん投手 
サイドハンドから137、138kmのストレート 
それに120km台のスライダー?を投げる 
フツーの球場なら140km前後は出るようだし、
このストレートでフライアウトを一つ、
三振を一つ奪っておりキレもある 
またスライダーが外角に実に良くコントロールされていた 
最もピッチングらしいピッチングを見せた投手 
順調に行けば来年が楽しみ

感覚として神田の球威が上がっている感じはしましたが、
実際に春先よりも球威が上がっている事は間違いないようです。

そんなことを思っていたところ、巨人の公式HPの契約更改のニュースで、
神田の球速アップについて触れられていたのです。

GIANTSニュース
2010.11.25 野間口投手ら8選手が契約更改
大立恭平、尾藤竜一、神田直輝の育成3投手も契約を更改。(略)
球速が10キロ上がった神田投手は「ピッチャーとしての能力アップと、
自信を全面的に出して、堂々としたマウンドさばきでやりたい」

球威アップが事実である事は誰もが認めることになっていたようです。












































































































































神田は教師を目指していた事もあって、行儀の良さと素直さを感じます。
人から言われた事を素直に聞き入れ、創意工夫を加えて自分のものにする才能を感じます。
その地道な努力がここに来て大幅な球速アップにつながっているのでしょう。

モバイルGで連載していたの岡崎監督の「Gっくり語る」でも、
神田の成長について同じような事が話されています。

Gっくり語る 第6回 育成・福元、神田の驚異的進化(9/7) 

巨人の岡崎郁2軍監督(49)がファームの現状を語る連載「Gっくり語る」の第6弾。

「来季の支配下(登録)に最も近い」と評す、1年目の神田直輝投手(22)、

2年目の福元淳史内野手(27)にスポットをあて、今季の「進化」について聞いた。

神田が驚異的な速度で成長を遂げているのは、「正常な努力」ができるからだという。

目的意識をもって練習していることが、進化につながっている。

「神田は非常にクレバーというか、コーチから指摘されたことをよく考えながら練習しています。

例えばセットポジション。試合で、首の動かし方がワンパターンで走られたら、

次の日のブルペンでは必ず首の動かし方を変えてみたりと、そういう工夫ができる選手です」

野球漬けの毎日はマンネリになりがち。長くても20年前後の野球人生では、

着実なステップアップが不可欠だ。「正常な努力ができないと効率が悪い。

なぜこの練習をするんだろうと、深く考えながらやっていかないと意味がない。

努力する才能ってあると思う。『神田は良くなる?』と聞かれたら、

自信をもって『良くなる』と答えられます」     (以下 略)

このように岡崎さんからもその成長にお墨付きをもらった神田ですが、
それは育成選手として成長したというものであってのもので、
これがもうすぐ支配下枠入りするだとか、
すぐにも一軍で通用するようなものかというとそうではありません。
球威がようやくプロでも通用するものになってきたということであって、
その他の投球技術については来年以降の課題として以前、問題が残っているからです。
今シーズンの登板を振り返ると、とにかくつまらない四球が多過ぎます。
そして、四球の後に必ずと言っていいほど痛打を喰らって失点しているのです。

2010年神田直輝登板結果
春期教育リーグ
03月09日 西武戦 1回 2安打0奪三振1四球2失点2自責点 負け投手
5対5同点の七回裏から登板するも先頭バッターに内野安打を許すと犠打で一死一塁、続くバッターに四球を許し一死二塁から高山に勝ち越し2点タイムリー二塁打を打たれプロ初登板でいきなり負け投手
03月17日 ハム戦 1回 1安打1奪三振1四球1失点1自責点
0対7の大きくビハインドの四回裏で登板し、一死後四球を与えランナーを一塁において中島にタイムリー二塁打

イースタン公式戦
05月12日 ハム戦 1回 2安打0奪三振1四球2失点2自責点
8対4とリードした九回表から登板し、二死後、四球中安打で一二塁としたところを大平に2点タイムリー二塁打
05月15日 西武戦 1回 2安打0奪三振1四球1失点1自責点
6対1とリードした六回裏途中から登板し、イニング跨ぎの七回裏、一死後四球を与えランナーを一塁において梅田にタイムリー二塁打
06月25日 楽天戦 1回 0安打1奪三振1四球0失点
16対0と大量リードした八回表から登板し、先頭バッターに四球を許すも次のバッターを併殺に打ち取り3人で終了
07月27日 西武戦 0回2/3 1安打0奪三振0四球2失点0自責点
4対5のビハインドの七回裏から登板するが、大田のエラーなどで自責点0ながら2失点
07月28日 西武戦 0回2/3 1安打1奪三振1死球0失点0
0対12の大きくビハインドの六回裏途中から登板するが、二死後死球二塁打で二三塁にするも後続を凡退
08月11日 千葉戦 1回 1安打0奪三振1四球0失点
8対2とリードした九回表から登板するが先頭バッターに二塁打、一死後四球で一二塁にするも次のバッターを併殺で打ち取り無失点
08月15日 湘南戦 1回 0安打2奪三振2四球0失点
0対9の大きくビハインドの六回裏無死一塁から登板するが、大田がセカンド悪送球のエラー、無死一二塁となるも連続三振と好投、二死後盗塁死で無失点
08月23日 楽天戦 4回1/3 4安打1奪三振4死四球3失点3自責点 負け投手
プロ初先発、初回は三者凡退だったが、二回以降は毎回四死球、1失点の五回一死一二塁で交代するも、藤田が四球の後に満塁被弾、プロ初先発は負け投手
08月28日 西武戦 0回1/3 6安打1奪三振0四球3失点3自責点
10対2とリードした九回表から登板するが先頭バッターに二塁打、続く松坂に本塁打、さらに二塁打ヒットで無死一三塁とし斉藤にタイムリー、次のバッターにも安打で6連続被安打のつるべ打ち、無死満塁から三振を奪い小野に交代

秋期教育リーグ
10月11日 阪神戦 1回 0安打1奪三振0四球0失点
0対12の大きくビハインドの九回表から登板し三者凡退の好投
10月15日 広島戦 0回2/3
10月16日 CC代表戦 0回2/3
10月17日 福岡戦 0回1/3 勝ち投手
10月19日 四国選抜戦 3回2/3 先発負け投手
10月23日 四国選抜戦 0回1/3

チャレンジマッチ
04月03日 湘南戦 1回 7安打0奪三振2四球4失点4自責点
05月05日 千葉戦 2回 2安打1奪三振0四球0失点
05月19日 ハム戦 1回 1安打0奪三振1四球2失点2自責点
06月09日 千葉戦 1回 0安打0奪三振0四球0失点
07月20日 ヤク戦 1回 0安打1奪三振2四球0失点

シリウス
04月07日 群馬戦 1回 0安打3奪三振0四球0失点
05月30日 フェデックス戦 1回 2安打2奪三振3四球3失点2自責点
06月22日 新潟戦 1回 0安打2奪三振0四球0失点
07月06日 新潟戦 1回 1安打0奪三振1四球0失点

2010年イースタン
9試合 0勝1敗0S 11回 17安打 6奪三振9四死球 11失点 9自責点 防御率7.36

今シーズンは投球内容よりも、プロの投手としてやっていけるかどうかといった、
言わば自らのパフォーマンスを確認するような年でした。
しかし、準硬式野球あがりで本道とは違う脇道を歩いてきた投手が、
初めて野球の王道に挑戦したのです。
自分の能力が十分通用することが確認できた年としては満足の行く年だったことでしょう。












































































































































来シーズンからはいかに試合を支配する投球ができるかどうかが課題です。
そのためにどういった武器が自分にあり、必要かということを見極めなくてはなりません。
そして、そこからさらに自己研鑽が始まります。
まだまだ神田の成功への道は遠く険しいことでしょう。

ジャイアンツの公式HPにはルーキーたちの特集が色々とあって、
神田のことも紹介されています。

一球一球を大切に~神田直輝投手(育成ドラフト5位)
ジャイアンツ広場 #252 ルーキー育成選手特集(2010年11月6日OA)

ジャイアンツ広場のインタビューで神田は今シーズンを振り返って60点としています。
「ケガなく過ごせたことで50点、シーズン後半公式戦に登板できたことで10点」
好きな食べ物は春巻きで、嫌いな食べ物はトマトだとか(笑)

来シーズンの目標については、シーズンを通して2軍で主力として投げることと、
(支配下入りして)一軍での初登板だそうです。
今年の成長曲線ならそれも十分に可能性があります。
今の素直さとクレバーな取組みを忘れずに来シーズンも過ごして欲しいと思います。

これで今シーズンのルーキーについての話はお仕舞です。
あとひと月ちょっとでキャンプが始まり次のルーキーたちの物語が始まります。
さらに三月になれば教育リーグが始まります。
どんな選手がどんなプレーを見せてくれるのか今から楽しみです。

年が明けたら「今年に賭ける選手たち」として、私が注目している選手を紹介したり、
今シーズンのプレーを編集した動画をアップして紹介したりしたいと思っています。
第一回は藤村について話そうと思っています。
乞うご期待!

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