野球と因縁対決の話

  • 舎人
    2010年12月22日 02:58 visibility1557































今日も例のごとく群馬の赴任先なのですが、今宵の徒然に持ってきた本はこれです。
「別冊宝島 プロ野球世紀の因縁対決」
なんともインパクトのあるタイトルですが、
この本は“王×江夏”や“江川×小林繁”“イチロー×土井正三”など、
ありとあらゆるライバル対決や因縁話を集めてあります。因縁話あるところにドラマあり、
今につながる球界の歴史があることがこの本から分かります。
そんな訳で今日はこのような野球と因縁話の構造について考えてみたいと思います。

先日の夕刊フジに李スンヨプのオリックス入りの記事が載っているのですが、
なんとタイトルは“G復讐に燃える李スンヨプ自分を捨てたのは間違った選択だ” というものでした。
来年の巨人オリックス戦は李と巨人の遺恨試合になるなんて書いてあります。
巨人は李に十分過ぎるほどの年俸と出場機会を与え、特別待遇で接して来たと思います。
おそらく李も巨人に対しては期待に応えられなかったという残念な気持ちはあっても、
巨人のことを恨む気持ちなどないのではないか・・
しかし、なぜこのような記事になるかというと、そういった遺恨があった方がドラマを感じるし、
記事として注目を集めるからにほかなりません。

このように、とかく日本人というものは遺恨や因縁というものが大好きで、
何かというと勝負事にそういったドラマを求めたがるのです。
私はV9末期の70年代前半の巨人のチーム事情について、
近いうちに書いてみたいと思っているのですが、
この頃に放送されたアニメの「巨人の星」も、
「侍ジャイアンツ」も遺恨因縁による一騎打ちがテーマ。
親子の確執、宿命のライバルとの対決・・
ここでは野球におけるチームプレーなどほとんど関係がありません。
つまりこれは野球の舞台を借りた“仇討ち”“果たし合い”のようなものなのです。
先週の14日は忠臣蔵の討ち入りの日でしたが、
「巨人の星」や「侍ジャイアンツ」は、江戸時代の庶民が
「仮名手本忠臣蔵」を見たのと同じ構造なのだと思います。 

ちなみに「巨人の星」「侍ジャイアンツ」共に梶原一騎が原作ですが、
元々、梶原一騎は「タイガーマスク」や「空手バカ一代」といった格闘ものを描く事が得意でした。
格闘は興業のためにも因縁が無くてはならないものです。
新宿伊勢丹で猪木夫妻がタイガージェットシンに襲撃されると言う事件がありましたが、
どうやらこれは新日本プロレスが興業を盛り上げるために仕組んだのではないかと言われています。
このようにプロレスなどの格闘ではあえて因縁をでっち上げたりするほどです。
その格闘における対決や因縁を野球に持ち込んだのが
「巨人の星」であり「侍ジャイアンツ」なのでしょう。










 









さて、この「別冊宝島 プロ野球世紀の因縁対決」ですが、
よくぞここまで話を集めたなと感心する内容で、
興味のある人はぜひとも読んで欲しいと思います。
色々な切り口から軽く50を超えるプロ野球における遺恨因縁の話を集めてあります。
古くはスタルヒン事件から最近では門倉の古巣横浜に対する暴言まで、
大小様々な遺恨因縁のエピソードが載っています。
しかし、驚くことになんとそのうちの四分の三は巨人絡みの話です!
時系列関係なく掲載順に列挙してみると次のとおり・・

因縁対決名場面
・長嶋対村山、展覧試合[1959年6月25日]
・ヤクルト藤井、巨人戦で暗黙のルールを無視した全力疾走[2001年5月22日]
・桑田対清原、日本シリーズKK対決[1994年10月22日] 
・落合対盛田(横浜)、度重なるビーンボールに落合激怒[1996年4月12日]
・星野対王、打倒巨人を掲げる男・星野の熱投[60年代後半〜80年代前半]
・王対江夏、シーズン奪三振タイ及び新記録を宿命の好敵手王から奪取[1968年9月17日]
・清原巨人との日本シリーズで男泣き[1987年11月1日]
・クロマティを倒した遠藤若菜の大洋頭脳派バッテリー[80年代後半]
・王対山田、日本シリーズっ王が放った劇的逆転サヨナラ弾[1971年10月5日]
・江川対掛布、怪物とミスタータイガースは永遠のライバル[70年代後半〜80年代]
・星野監督対水野、乱闘騒ぎをなだめる水野に対し星野監督が怒りの鉄拳[1990年5月24日]
・藪対清原、3度の死球に怒り爆発の番長清原[1998年7月10日]

暴言録
・清原「ケツの穴小さいな。チンポついとんのか!!」[2005年4月21日]
二死満塁カウント2-3からフォークを投げた藤川に向かっての暴言
・門倉「みんなプロになりたいんだろ。でも横浜はやめておけ。」[2006年12月9日]
06年オフに巨人へのFA移籍後、交渉が決裂した横浜フロントに向けた暴言

犬猿の仲
・堀内対原、頭脳とカリスマ・両極端の二人[00年代]

巨人対阪神、伝統の一戦を大胆解剖!

世紀の因縁対決
・長嶋茂雄対杉浦忠(南海)、立教大時代の元のチームメイトの宿命の対決[50年代後半〜60年代]
・江川対小林繁(阪神)、「空白の一日」を巡る二人の対決[70年代後半〜80年代前半]
・星野仙一、ドラフトでの裏切りに誓った打倒巨人[60年代後半〜80年代前半]
・清原対桑田、ドラフトから始まった悲劇、KKコンビにまつわる拭い切れない因縁[80年代後半〜90年代前半]
・二岡智宏、巨人を選んだ男に刻まれた地元広島市民の反感[90年代後半〜00年代]
・水原茂対三原脩、男のプライドを懸けた巌流島対決[1956年〜58年]
・長嶋茂雄対野村克也、カリスマへの強烈な嫉妬心、ヒマワリと月見草対決[50年代後半〜]
・世界の王を超えられなかった3人の外国人、バース・ローズ・カブレラ[80年代後半〜00年代]
・巨人対西鉄、両チームの熾烈な戦い[50年代後半〜60年代前半]
・日本シリーズ巨人対近鉄、近鉄加藤の一言が招いた世紀の逆転劇[1989年]

疑惑の事件
・別所引き抜き事件、ライバルチームからの強引な引き抜きに非難集中[1948年]
・小久保無性トレード、チームの主軸を無償で放出 オーナーとの確執が原因か[2003年]
・田淵阪神強硬指名、巨人入団が確約されていたが阪神が強行指名[1968年]
・スタルヒン事件、旭川高校から強奪!身元受取人に圧力をかけ辞退させる暴挙[1934年]

傍若無人列伝
金田正一、広岡達郎、渡辺恒雄

古巣との別れが復習の鬼に!
西本聖、広岡達郎

チーム内での因縁
・江川対西本、同時期に巨人で活躍した両エースの因縁対決 エリート対雑草の図式[70年代後半〜80年代]
・川上対広岡、監督vs選手の抗争劇 現役時代のワンプレーから生じた二人の因縁[50年代後半〜60年代]

こうやって見てみると巨人というチームはなんと業の深いチームなのかと思ってしまいます。
それぞれの見出しにいつの話か分かるように西暦や年代を付けてみたのですが、
ほとんど満遍なく、どの年代でもこのような因縁話があるというのが巨人というチームなのです。
巨人の歴史とは因縁の歴史であると言ってもいいようなものです。
もちろん、これは巨人が最も注目されているチームだったからという事情はあるだろうし、
他のチームにだって記事になっていないだけで色々な因縁話もあったことでしょう。
しかし、巨人のものが目立つと言うことは、
良くも悪くも巨人と言うのは球団経営に温度の高いチームであり、
熱い血を持った体温の高い選手たちや監督がいたということなのだと思います。


























しかし、ここに載っている話は実のところ話題にしても許される範囲のもので、
実際はもっとしゃれにならないものも数多くあります。
その1つが「湯口事件」と呼ばれるものですが、
これはドラフト1位で入団した投手がV9の陰で変死したものです。
心臓マヒとも自殺とも言われていますが、真相は未だ定かではありません。
才能は誰もが認めるものの口下手なサウスポーだったそうです。
あれ!?つい最近そんな投手の話をした覚えが・・

キリがないので今日はこれでおしまい。
また今度この事件のあった1970年代前半の事については話してみたいと思います。

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