今年期待の若手選手たち(3)笠原将生
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舎人
2011年01月24日 01:04 visibility2649
このシリーズで前回取り上げた大田については予想以上にアクセスがあり、みんなの関心の高さが伺えました。このアクセスの中にはもちろん巨人ファン以外の人の数字も含まれていることでしょうが、それだけファンもそれ以外の人にも注目されているということでしょう。世間の衆目は全て鎌ヶ谷の斎藤君に注がれている中で、巨人としては1人でもいいから話題の選手が出てきて欲しいところです。大田がその1人になってくれれば申し分ありません。期待したいところです。
さて、今日は笠原について、期待の3年目投手です。昨年のイースタンリーグでは開幕戦と最終戦を任され、7勝を挙げました。これは退団した深田に並んでチームトップの成績です。身長191センチと体格にも恵まれ、無限の可能性を感じさせます。1年目に比べて全ての成績を伸ばし、一見すると全く問題なく成長していると見える笠原の2年目でしたが、実は波瀾万丈、良く一年間ローテーションを守ったと感心するものでした。3年目の今年、一軍の戦力になるためには課題も多く見つかっております。笠原の魅力と課題について考えてみましょう。
昨年岡崎前2軍監督がモバイルGで連載していた「Gっくり語る」で笠原はこんな風に特長を語られています。
「笠原は、腕が遅れて出てくるところでしょうね。もう少しボールが速くなれば、もう1段階、上がってくる。今年ローテーションできちっと投げさせて、最短で来年の途中に1軍に行ければいいなと思ってます。」(Gっくり語る2回 2010/5/18 )
笠原は何と言っても191センチの長身をめい一杯使い真っ向から投げ下ろす投球が最大の武器です。しかも体が柔軟で肩の稼働域が広く球持ちが良いのが特長なのです。正面からよりも横からの動画の方が良く分かるので作ってみました。
笠原将生の球持ちの良さ←New
同じ球速でも球持ちが良くリリースポイントがバッターボクスに近ければ近いほど、打者は球が速く感じ打ち辛くなることは必定です。しかし、これは全ての投手が目指そうとしてもなかなか出来ることではありません。以前水島先生の漫画に「光の小次郎」というものがありましたが、主人公の小次郎がよりバッターボックスに近いリリースポイントの投球を修得するためにペナントレースの後半戦全てを犠牲にするというシーンがありました。球持ちの良い投球とは簡単なことのようでなかなかできないことなのです。身体が柔軟で、肩の稼働域が広い笠原のような投手だけが許された投球だと言えるでしょう。
2009年 02試合 01回1/3 01安打 02奪三振 04死四球 04失点03自責点 防御率20.25
2010年 14試合 80回2/3 92安打 53奪三振 39死四球 45失点40自責点 防御率 4.46
一昨年の笠原はイースタンでは登板2試合とほとんど投げさせてもらえませんでした。しかし、一昨年もフューチャーズやシリウスでは13試合も登板し3試合ほど先発も任されています。そこでの投球を認められたのでしょう。一冬経った昨シーズンはいきなりイースタンの開幕戦で先発を務める栄誉を受けるのです。
巨人投手陣イースタン投球回数
1位 深田 81回1/3
2位 笠原 80回2/3
3位 林 66回1/3
4位 黄 66回
5位 野間口 64回
巨人投手陣登板回数
1位 上野 40試合
2位 ロメロ 35試合
3位 林 31試合
4位 中里 30試合
5位 藤田 27試合
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16位 笠原 14試合
同じような期待を込められイースタンの開幕2試合目を任された林イーハウは途中から中継ぎや抑えを任され投球回数もさることながら、登板回数もチームトップクラスでした。しかし、笠原はチームトップクラスの投球回数ながら、登板回数は意外に少なく14試合にしか登板していません。イースタンリーグでは全て先発で登板し、シーズンを通じてローテーションを守り通したのですが、常に中1週間〜2週間の間隔を空けて使われています。大切に扱われたと言うことはもとより、チームとして誰よりも先発として特化した育成をされていたことがここからは分かります。
開幕戦を7回3失点とまとめ、初の公式戦先発登板をイースタン初勝利で飾った笠原でしたが、凄みを感じさせる投球をしたとか、安定感抜群の投球をし続けた訳ではありません。無失点で終えた試合の方が少ない位で、6回前後を投げるものの、常に2〜3失点程度は失っているのです。先発の役割とは試合を作ることが何より大事であると自ら言い聞かせて登板を続けているようでした。その通り、笠原は勝った試合も負けた試合も必ず5回までは投げ切り先発投手としての最低の仕事はしています。十分にイニングイーターとしての仕事は果たしていました。
ローテーションを守りながら勝ったり負けたりでしたが、シーズンも終盤に近づいた8月10日、笠原はついに完投勝利を果たします。これまでは最長で八回だったのがついに最終回まで投げ抜いたのでした。今までは立ち上がりにやや安定を欠いていましたが、その日は珍しく完璧な立ち上がりでした。打線もその好投に応え、三回までに7点を挙げ大いに援護します。四回以降は再三ランナーを出し、4点を取られましたが、序盤の大量リードがモノをいい、なんとか完投できたのでした。要した球数125球、三振もプロ入り初の二桁奪三振の12を奪っています。まさに力投による完投勝利でした。
しかし、この完投勝利が予想以上に笠原の心身を消耗させてしまったのか、この先の笠原は全く生彩を欠いた投球をしてしまうことになります。シーズンも残り1か月に迫った8月24日、笠原は昨シーズンで初めて五回を持たずにノックアウトをされてしまいます。次の登板の9月5日も五回途中でノックアウト、さらに9月18日の西武戦ではなんと三回を持たず、10安打9失点の大炎上となってしまったのでした。これで3連敗、投げれば投げるほど不調に陥る感じです。初めてシーズンを通して投げ続けたことによる疲れがここに来て出てしまったことは明白でした。それでも岡崎監督はシーズンを通してローテーションを守ったことに対する信頼と来シーズンへのたむけの意味もあってか最終戦の9月25日の先発を笠原に任せます。笠原は気合いが入っていました。毎回のようにランナーを出しながらも気持ちを切らさずに投げ続けます。七回途中までを1失点にまとめ見事勝ち投手!笠原の2010年のイースタンリーグは閉幕しました。
この試合バックネット裏から心配しながら私は見ていたのですが、春先に比べれば特別球威が落ちたとかキレを欠いたというものは感じませんでしたが、時折バランスの悪い投球をしていたことが気になりました。そういった時に身体の開きが早くなり打ち頃の球を痛打されている感じです。おそらく下半身に相当疲れがたまり、春先よりも踏ん張りが利かなくなっているのだろうと思いました。
その不調はポストシーズンのフェニックスリーグも引きずることになります。2試合を投げて9回1/3でなんと17失点です。2試合とも先発を任されながらも炎上してしまいました。現地のレポによるとMAXは142キロ、平均球速で138キロほどで、シーズン中よりも3〜5キロ球速も球速が落ちていたそうです。ガンが違うので一概には言えませんが、何か投球フォームの矯正などの課題を持って登板したのかもしれません。
そんな不調に喘ぐ笠原でしたが、10月末に行われたインターコンチネンタルカップにジャイアンツの投手としては唯一代表に選出されます。結果は4試合に登板して台湾戦での中継ぎ登板で失点した以外はまずまずの投球をしました。特に先発したタイとの試合と5位決定戦となった最終戦の韓国戦ではいずれもチームに勝ちを呼び込む好投を見せています。
2010年笠原全登板結果
春期教育リーグ
03月06日 ロッテ戦 3回 1安打1奪三振0四球0失点0自責点 先発
3回を細谷のヒット1本に抑え、無四球無失点、二塁を踏ませぬ好投
イースタンリーグ公式戦
03月20日 西武戦 7回 7安打4奪三振1四球3失点3自責点 先発◯
イースタンリーグの開幕戦の先発を任され、見事勝ち投手!六回までは散発の3安打無失点、疲れの見え始めた七回に4安打を集中され3失点
試合終了時累計成績 7回 1勝0敗 4奪三振 1四死球 防御率3.86
04月03日 楽天戦 6回 6安打6奪三振4四球3失点3自責点 先発●
2本の本塁打に四球が絡み毎回塁上にランナーを置く不安定な投球で負け投手
試合終了時累計成績 13回 1勝1敗 10奪三振 5四死球 防御率5.54
05月15日 西武戦 5回 6安打2奪三振0四球1死球1失点1自責点 先発◯
初回から三回まではいずれも2安打の不安定な立ち上がりにより1失点、四回五回と立ち直り共に三者凡退で勝ち投手
試合終了時累計成績 18回 2勝1敗 12奪三振 6四死球 防御率4.50
05月30日 ロッテ戦 8回 11安打2奪三振3四球4失点2自責点 先発●
2本の本塁打を含む長短11被安打3与四球の乱調で負け投手、中井の2つのエラーが絡み自責点は2
試合終了時累計成績 26回 2勝2敗 14奪三振 9四死球 防御率4.50
06月09日 湘南戦 6回 3安打7奪三振2四球1死球0失点0自責点 先発◯
3安打無失点の好投で勝ち投手!四回と六回にスコアリングポジションにランナーを溜めるも、いずれも三振でピンチを切り抜ける。
試合終了時累計成績 32回 3勝2敗 21奪三振 12四死球 防御率3.66
06月16日 日ハム戦 5回 4安打2奪三振2四球1死球0失点0自責点 先発◯
二回に3四死球で満塁のピンチを迎えるも左飛でピンチを切り抜ける。五回まで三者凡退は一度も無かったものの要所を締め無失点で勝ち投手。
試合終了時累計成績 37回 4勝2敗 23奪三振 15四死球 防御率3.16
06月30日 湘南戦 5回2/3 7安打4奪三振3四球5失点5自責点 先発
初回から六回までいずれもランナーを許す乱調も降板後チームは逆転し負けは付かず。
試合終了時累計成績 42回2/3 4勝2敗 27奪三振 18四死球 防御率3.80
07月08日 ヤクルト戦 6回1/3 8安打0奪三振3四球1失点1自責点 先発
二回に無死満塁のピンチを招くも、併殺と左飛でピンチを切り抜ける。三回も被安打3ながら最少失点で終了。調子が悪いながら七回途中まで1失点で降板勝ち負けは付かず。
試合終了時累計成績 49回 4勝2敗 27奪三振 21四死球 防御率3.49
07月18日 西武戦 6回 4安打4奪三振2四球1失点1自責点 先発◯
初回と三回にランナー2人を許すも無失点。六回まで投げ六回の長短打による1失点のみに抑え勝ち投手!
試合終了時累計成績 55回 5勝2敗 31奪三振 23四死球 防御率3.27
08月10日 ロッテ戦 9回 9安打12奪三振1四球1死球4失点4自責点 先発◯
初回から三回まではファーフェクト、四回以降は毎回のようにランナーを出すも最後まで投げ切りプロ入り初の完投勝利!
試合終了時累計成績 64回 6勝2敗 43奪三振 25四死球 防御率3.38
08月24日 ヤクルト戦 3回1/3 6安打1奪三振2四球4失点3自責点 先発●
初回に4安打を集中され1失点、二回三回とやや立ち直るものの、四回に一死の後、四球四球ヒットヒットヒットと集中砲火を浴び途中降板、負け投手。
試合終了時累計成績 67回1/3 6勝3敗 44奪三振 27四死球 防御率3.61
09月05日 湘南戦 4回0/3 5安打2奪三振6四球6失点6自責点 先発●
初回からピリッとせず毎回のようにランナーを出塁。五回に四球四球ヒットヒットとまたも集中砲火を浴び途中降板、負け投手。
試合終了時累計成績 71回1/3 6勝4敗 46奪三振 33四死球 防御率3.91
09月18日 西武戦 2回2/3 10安打0奪三振1四球9失点8自責点 先発●
初回から早くも集中砲火、初回3安打2失点、二回5安打1四球5失点、三回1安打1失点と炎上、負け投手、3連敗
試合終了時累計成績 74回 6勝5敗 46奪三振 34四死球 防御率4.74
09月25日 湘南戦 6回2/3 6安打7奪三振5四球1失点1自責点 先発◯
毎回ランナーを出すも気持ちがキレず四回の1失点のみに抑える。久々の勝ち投手!
試合終了時累計成績 80回2/3 7勝5敗 53奪三振 39四死球 防御率4.46
チャレンジマッチ
04月24日 日ハム戦 1回 2安打1奪三振3四球2失点2自責点
07月14日 湘南戦 1回 0安打1奪三振0四球0失点
シーズン累計成績 2回 0勝0敗 1奪三振 3四死球 防御率9.00
シリウス
05月03日 JABA新潟戦 4回 4安打1奪三振2四球1失点0自責点 先発
05月09日 フェデックス戦 3回 1安打1奪三振1四球0失点
05月27日 セガサミー戦 1回 0安打1奪三振1四球0失点
07月29日 佐久コスモ戦 4回 2安打3奪三振3四球0失点
シーズン累計成績 12回 0勝0敗 6奪三振 7四死球 防御率0.00
秋季教育リーグ
10月05日 中日戦 5回0/3 8安打6四死球8失点 先発●
初回に4安打1四球で4点、五回に4連続四死球などで2点を失うなど大乱調で負け投手。
10月11日 阪神戦 4回1/3 11安打4奪三振4四死球9失点 先発●
初回にセカンド藤村のエラーにより1失点、二回にサード大田の2つのエラーなどで足を引っ張られ炎上
インターコンチネンタルカップ
10月25日 タイ戦 5回 0安打5奪三振2四死球無失点 先発◯
先発を任され格下相手に5回コールド参考ながら無安打無得点の好投!
10月27日 イタリア戦 1回 2安打0奪三振0四死球無失点 中継ぎ
10月28日 台湾戦 1回2/3 7安打0奪三振1四死球4失点 中継ぎ
5対8の3点リードから登板するも7安打のつるべ打ちを喰らい乱調で4失点
10月31日 韓国戦 3回 2安打4奪三振0四死球無失点 先発
5位決定となる最終戦を任され散発2安打4奪三振の好投!
シリーズ累計成績 10回2/3 1勝0敗 9奪三振 3四死球 防御率3.38
笠原将生 2010年の活躍!←New
笠原のルーキー時の球速は私が把握している限りMAX144キロです。それが昨年はMAXは148キロまでアップしています。間違いなく成長はしているのですが、シーズン終盤にきてばててしまったということは、まだまだ体力不足なのです。特に大型選手であるからには何よりも土台である下半身の強化が大事です。そのあたりどうやってこのオフを過ごしているかが大事です。昨年、一冬で劇的に成長を遂げたようにこの冬の過ごし方次第ではまた劇的な成長を見せてくれるかもしれません。そして、岡崎さんが昨年思い描いたように今シーズン中盤に一軍定着です。今はそれを信じてみたいと思います。
よく知られている通り笠原の父親はロッテからドラフト1位指名を受けた投手でした。しかし、夢破れプロでは1勝も挙げられずに引退をしたのでした。笠原には父親の思いを受け継いでプロで大成するという誰よりも強い目的意識があると思います。まずは1勝です。その夢の第一歩を今シーズン果たして欲しいと思います。
次回このシリーズ橋本について・・次回も乞うご期待!
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- 事務局に通報しました。
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