20XX年、国立に再びあの高揚と熱気が戻り、失ったものの大きさに気づく
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miyashu
2008年11月18日 20:15 visibility81
どこまでも限りなく晴れ渡った青空。
広角レンズに収まりきれない弧を描いて目の前に「国立」が広がる。
キックオフ2時間前の高揚感。
またたくまに広がる青の波が、ゴール裏を占拠する。
熱に浮かされた空気を全身にまとい、はるか相手ゴール裏を眺め、身震いする。
すでに、相手ゴール裏は黄色に染まっている。
手ぐすねを引くということばが、頭に浮かぶ。
これが、ファイナルだ。
この何とも言えない肌触り。
青と黄色のチームのサポーターだけはなく、Jリーグが久しく忘れていた感触だ。
その証拠に、スタンドのあちこちには、いろんなチームのサポーターが、いつものユニフォームを脱いで紛れ込んでいる。
自分のチームでなくとも、この感触はこのうえなく心をざわめかせる。
久しぶりだ。まさか、また国立でこんなファイナルが見られるなんて思わなかった。
20XX年。
3大タイトルと言われたJリーグヤマザキナビスコカップに異変が起きた。
若手の育成を前面に出すという大義名分のもと、このカップ戦は各クラブU-23の選手と、オーバーエイジ枠3名の選手で構成されるチームで戦うというレギュレーションに変更された。
各方面から不満の声が噴出した。U-23メンバー主体では、チームが組めないというクラブもあった。しかし、オーバーエイジ枠3人以外の特例はない。
若手の充実したクラブも、U-23やU-19の代表との行き来やリーグ戦で疲弊した選手が、ナビスコカップに出なければいけないという事態が起こった。
U-23強化を前面に打ち出している手前、この枠は譲れない協会とJリーグは、ついにクラブユースチーム選手の出場を認めた。
うまい口車にのってしまい憤懣やる方ないのが、スポンサーであるヤマザキナビスコである。
レギュレーション変更以来、ナビスコカップの扱いは急落した。
予選、決勝トーナメント通じて、入場者は半分以下になった。
テレビ中継は、まったくなし。決勝でさえ、深夜録画放送枠となった。
スカパーも準決勝以降の放送権しか買わなくなった。
凋落の一途をたどるヤマザキナビスコカップ。
輝けるJリーグカップ戦の歴史を守るため、ヤマザキナビスコは名称変更に踏み切った。
ナビスコオレオカップと名付けられた新名称は、「犬飼に騙されたけど、これって、オレオレ詐欺といっしょだ」というスポンサーの無念の思いも込められたらしい。
スポンサーからの出資も当然減らされ、ティファニー製の優勝カップなんて今や伝説。
1億円だった優勝チームの賞金も、1000万となっている。
試合は、U-23育成とは名ばかりのもの。
ふだんチームとして練習はしていないし、ポジションもきちんとそろうわけがなく、付け焼き刃のポジションでうまくいくはずがない。
ユースチームまるごと出した方が、チームワークもポジションもフィットして、俄然いいチームになったりする。
業を煮やしたあるチームは、本当にユースチームをまるごとそのままスタメンで出してしまった。
笑い話となったのが、悪しき伝統を受け継ぐサッカー協会会長の談。
「プロ選手が一人もいないとは何事か。オリンピック選手育成につながるオレオカップは、権威ある大会。U-23ベストメンバーでのぞむべき。残念でならない。」
と、いつかのデジャヴーのような迷言を発した。
しかし、協会とJリーグは執拗に「権威」にこだわり、オレオカップの凋落を認めようとしない。
決勝は国立で行うことにこだわった。
7000人のがらーんとした国立ファイナル。
喜劇は、悲劇である。
サッカー界に正義はないのか。
選手、サポーターがともに心から喜び合えるあのナビスコカップは、夢でしかないのか。
カップ戦オリジナルのアンセムが重厚な低音を響かせて、スタジアムに流れる。
プライドを満面にたたえた選手が、勝利を信じた足取りで入場する。
両チームの選手の列の間には、シルバーの光沢まばゆいカップが鎮座している。
ホーム側のスタンドが、黄色と緑に染まった。
黄色と緑の横縞。
中央には「WIN BY ALL」のビッグフラッグが揺れる。
呼応するように、アウェイ側のゴール裏が染まる。
青と黄色のストライプが放射状に描かれる。
最上段には、「WE ARE OITA」の文字が浮かび上がる。
4万人の期待を孕んだ鼓動が、スタジアムの温度を急上昇させる。
ついに、あの「国立」が帰ってきた。
メインスタンド中央にしつらえられた表彰台。
バックスタンドの聖火台。
そこには、この栄誉を刻むカップタイトルが大きなロゴで描かれる。
「ちばぎんカップFAINAL」
(つづく・・・・というか続けないとおさまりがつかんなあ)
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あ、いきなり妄想小説モードに入りました。
長いんで、おつきあいいただける方だけでも読んでいただけると幸いです。
昨今の時事ネタをテーマとしております(笑)
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