原辰徳と中畑清

　自分の贔屓チームについて、どのあたりの打順まで記憶をたどれるのか、というのは是非一度試してもらいたい。

　私の場合は、柴田高田張本王末次土井河埜吉田という感じで、年～年頃の第一次長嶋政権の記憶になる。私よりもうちょっと上の世代から言わせれば、「長嶋の現役時代を知らないとは不幸だな」と笑われるが、そうは言っても子供心に王さんの一本足打法は強烈に印象に残っているし、号のホームランはテレビで見た。

　ただ、思い入れが出てくるとなるともうちょっと後になる。第一次藤田政権の時代だ。

　松本河埜篠塚原中畑ホワイト淡口山倉といった感じ。外国人の記憶が、スミスやらトマソン（笑）やらクルーズやらであまりはっきりしない。クロマティが来るちょっと前、年代前半。

　当時の私は、江川よりも西本が好きで、原よりも中畑が好きだった。何故、江川よりも西本なのかは今考えるとなかなか難しい。しかし原と中畑は簡単だ。「絶好調！」に代表されるように、アピール度は完全に中畑の方が上だ。子供から見てもお坊ちゃん的な原よりも、元気で明るい、単純明快なキャラである中畑に惹かれた子供は少なくないだろう。

　バットを投げるにしても、神宮球場での原の同点ホームランの時は（あれはあれで名シーンだけど）、「なんでそこでわざわざ改めてバット投げるの？」と思ったし、フォロースルーからそのまま跳ね上げるようにバットを放る中畑のほうがかっこよかった。

浜スタで中畑が二塁打を打ち、日本初の（本当かね？）ウェーブが起こった様子を、二塁ベースに片膝ついたまま、やや呆然と眺める中畑の姿も印象に残っている（冷静に考えれば、関東圏とはいえビジターの球場での出来事なので、なおさらスゴイ）。日本シリーズでの現役最後の打席、藤井寺での代打ホームランは、そりゃもう感涙ものだ。「最後の打席は、その後のサードフライだろ」と言いたくなる方もいるだろうが、そんな記憶は残っていない。

　中畑は労働組合としてのプロ野球選手会の初代会長だったし、引退間際のベンチでの姿（腐ること無く声を出す姿勢）にも感銘を受けた。バッターとしても、中距離打者として割を数回記録し、大卒でありながら二軍で鍛え上げられた経験もある。どう考えても優秀なコーチ（候補）、将来の監督だ･･･と思っていた。

　しかしまぁ、経験・実績とコーチとして必要な「教える技術」はまた別問題で、「カラオケコーチ」と揶揄されながら、巨人の監督レースからフェードアウトしていった。アテネ五輪後には助監督として招聘されながら断ったという噂もあるが･･･。

　つまるところ、紆余曲折があって、中畑清はベイスターズの監督である。

　頑張ってほしいとは思うが、巨人ファンとしては複雑な心境である。勿論、野球人としては、監督をやりたいんだろうな。巨人の監督が一番やりたいとしても、もうそんなことを言っていられる年齢でも無い。

　何を書きたいのか良くわからなくなってしまったが、要するに子供の頃を思い出すに、現在の中畑清にいろいろ複雑な感情を持っているということなのである。

　頑張れ、中畑。ベイスターズはともかく、中畑さん個人は応援しているよ。