ルーキーなのに解説の吉村さんに「ベテラン」と称された高木勇人のプロ初登板初勝利の全球記録とインタビュー

今年の一軍の試合は全くリアルタイムで見る事はありません。それ位、自分の中で魅力の薄いものになっています。しかし、一応各投手の投球や選手たちのプレーを確かめておかないと自分の考えが間違った方向にいかないとも限らないし、もしかしたら、一軍の試合の中にだって心動かされるシーンだってあるかもしれない。また、ひょっとしたら橋本がスタメンで名を連ねて大活躍したり、中井が突然引き揚げられてスタメンで起用されているかもしれない、そんなこともない訳ではないので、一応一軍の試合も全試合録画はしているのです。しかし、それも開幕してからの2試合は本当にざっとしか見ませんでした。勝った負けたしか楽しみのない野球にはどうしても興味がそそられないのです。

勝つことで観客を楽しませることは大事です。しかし、全試合、今年だったら143試合全部勝つことなんか出来る訳がありません。それならば、負けても楽しいと思える、次また来たいと思える試合をするべきではないか。私がファームの試合を見続けている理由とはそこにあります。勝ち負けじゃなく、次にこの選手はどんなプレーをするだろう、とか、どんな風に成長して行くのだろう、とか、続きが見たくなるから試合を見に向かうのです。今の一軍にはほとんどそれがない。よく「巨人は常勝を目指しているから若手起用や育成は二の次になっても仕方ない」ということを言う人がいますが、私は常勝を目指すことと育成をすることは両立できると思っているし、それこそ、負け試合も楽しい、次も見に来たいと思わせながら常勝を目指すことも可能だと思っています。

それはバランスの問題です。優勝できるのに80勝で可能なら、逆に言えば63試合も自由に戦えるということ。それを巨人は全試合勝ちに行こうと考え、不測の事態に備え、何重にも保険をかけて戦力を整備したのです。この過剰補強が最大の問題。データを詰め込みすぎて身動きの取れなくなったPCのようにチーム全体のパフォーマンスが落ちてしまっている感じ。優先起用しなくてはいけないベテラン選手たちが競争原理を無効にし、チームの活性化を阻害しています。補強を最小限にした方が、チームはフレキシブルに機能するし、支配下の選手たちを死にコマにしないで生かすことができる。そして、それは勝つだけではなく、色々な価値観のファンの要求に応えることになると思うのです。

確かに優勝は目指すべきものではあるけれど、それがなかったとしてもチームの存在価値がゼロになる訳ではない。巨人以外のほとんどのチームはめったに優勝なんかしていない訳ですが、それならそういった球団は存在価値がないのか。巨人という伝統にプライドを持つことは構わないが、無意味な気負いから来る無駄な補強の数々は、却ってチームに閉塞感を生むし、多くのファンを白けさせていると思う。毎年優勝しないとファンがどこかに行ってしまうと恐れているとしたら、優勝しなくてもどこにも行かないファンをつくろうよ。そろそろ12分の1という自覚の下に、地道に選手を育て、ファンに愛される存在になろうよ。

さて、そんな願いを日々思い浮かべながらいつものように今日も寝る前に昼間の試合の録画を見ていたのですが、先発はドラフト3位ルーキーの高木勇人が登板だったのでした。なかなか見事なピッチング。これは記録に留めておかないといけないと思い、しっかりとチェックしておきました。昨日一昨日のように倍速で飛ばし見なんてできません。

高木は六回を投げて見事プロ初登板初勝利を挙げました。多彩な変化球と投げっぷりの良さで堂々たるピッチングだったと思います。ストレートは最速で148キロ、ストレートは平均で143〜144キロといったところ。しかし、このストレートはどちらかというと見せ球として、投球の軸はカットボール(高速スライダー)とツーシームを多投していました。これに時折100キロ台のカーブとフォークを混ぜるといった感じの投球です。さすがにカットボールは恐ろしいほどのキレです。DeNAの打者が分かっていても打ちあぐねるほど。魔球の領域と言っても過言ではない感じ。

ルーキーとは言っても菅野と同じ今年26歳の投手です。打者との駆け引きは相川の好リードがあったとは言え、場慣れしていたと思います。中継で解説の吉村さんもルーキーだというのに、「ベテランらしいピッチングでした」なんて言っていました(笑)それくらい老獪とも思える投球だったということです。今後の課題として最も大事なのはカットボールの球筋を慣れられて来た場合の対処ではないかと思います。相手打者が「大きいのを捨て、この球種が来たら逆方向に軽打」といった具合に徹底されたら、今のスタイルでは通用しなくなるかもしれません。そのためにも配球を考え、他の球種も磨いておくことも必要だと思います。

試合の途中で大量リードとなり、降板した後、高木は勝ち投手とコールされるのを待つだけになりました。試合中のインタビューはうれしくて仕方がないといった感じのもの。そして、試合後のヒーローインタビューは、アナウンサーの巧みなお涙頂戴の話術によって目を潤わせ、言葉を詰まらせるものでした。その2つのインタビューに共通して言えた事は、実に謙虚で自分をもっと磨きたいという思いに溢れていたことでした。プロになかなか成れなかったということで苦労をした経験が高木を珠のように磨いて行ったのでしょう。おそらく多くのファンが今日の投球、今日のヒーローインタビューに感動し、さらに応援したくなったと思います。

以前の日記(舎人のドラフトの話)でも書きましたが、高木は一昨年までほとんど忘れ去られた選手だったのです。本人はプロ思考だったものの、なかなか結果を出す事が出来ず、歳ばかり喰い、いつしかドラフト関係の雑誌のリストから名前を外されていた。それが、ようやく昨年、大舞台で結果を出しプロの注目するところとなった。そして巨人からドラフト指名されたのです。このように高木は今の巨人に数少ないドラマ性を持った選手だということですが、こういった苦労話はほとんど無自覚のままプロ入りしてしまったものの、足踏みをしっ放しの高卒の選手たちにこそ聞かせてあげたいと思いす。もちろん、彼らだって頑張っている。でもプロ入りしたくても、なかなか結果が出ず、年々忘れ去られて行っていたいつぞやの高木よりも、よっぽど恵まれたステイタスにいると思う。だから腐らないで欲しい。こういったサクセスを次に叶えるのは自分だと信じて頑張って欲しい。

ともあれ、何の面白みもない巨人の一軍にようやく気持ち動かされる選手が登場した事を喜びたいと思います。次回登板も頼んだよ黒豆王子!


2015年3月29日(日) セントラルリーグ 巨人対DeNA(in東京ドーム) 
先発高木勇人全投球結果

一回表 
石川:カウント1-1からファーストファールフライ(S、137キロB、内角123キロ) 
桑原:カウント1-2から見逃し三振(108キロF、125キロSw、131キロB、インロー141キロ) 
梶谷:カウント0-2からファーストゴロ(125キロF、139キロF、低め140キロ) 
三者凡退、一回表終了 

二回表 
筒香:フルカウントから見逃し三振(108キロB、105キロS、135キロB、126キロS、147キロB、外角126キロ) 
ロペス:初球ショートゴロ(外角127キロ) 
バルディルス:カウント1-2からセンター前ヒット(148キロSw、101キロS、127キロB、内角129キロ) 
倉本:カウント1-2からレフト前ヒット(123キロS、135キロB、143キロF、低め133キロフォーク) 
二死一二塁 
黒羽根:フルカウントから四球(146キロB、123キロS、142キロB、120キロSw、147キロB、アウトロー144キロ) 
二死満塁 
三嶋:カウント1-2からセカンドフライ(126キロB、124キロSw、146キロSw、アウトロー125キロ、井端背走ジャンプ!ファインプレー!) 
三者残塁、二回表終了 

三回表 
石川:フルカウントからセンター前ヒット(143キロB、137キロS、143キロF、143キロF、143キロB、125キロB、124キロF、143キロF、真ん中内より125キロ) 
桑原:初球投犠打(外角ストレート) 
梶谷:フルカウントから四球(141キロF、141キロB、139キロB、127キロS、146キロF、138キロB、137キロF、外角125キロ) 
一死一二塁 
筒香:カウント0-2からセンター前タイムリーヒット(136キロS、135キロF、内角140キロ)、2対1 
一死一三塁 
ロペス:カウント1-1からファーストフライ(140キロS、135キロB、内角144キロ) 
バルディルス:カウント0-1からファーストフライ(145キロSw、内角ストレート) 
二者残塁、三回表終了 

四回表 
倉本:カウント1-2からレフト前ヒット(122キロSw、133キロB、133キロF、145キロF、146キロF、外角143キロ) 
黒羽根:初球投犠打(外角125キロ) 
一死二塁 
三嶋:カウント1-1からセカンドゴロ進塁打(141キロF、143キロB、内角137キロ) 
二死三塁
石川:カウント1-2から空振り三振(134キロSw、146キロSw、144キロB、外角136キロ) 
倉本残塁、四回表終了 

五回表 
桑原:初球レフトフライ(内角120キロ) 
梶谷:カウント0-1からライトフライ(123キロF、内角125キロ) 
筒香:カウント2-0からレフトフライ(142キロB、143キロB、低め102キロ) 
三者凡退、五回表終了 

六回表 
ロペス:フルカウントから四球(128キロB、100キロF、138キロSw、146キロB、123キロB、141キロF、内角113キロ) 
バルディルス:フルカウントから空振り三振(138キロB、117キロS、138キロF、145キロF、122キロB、141キロF、121キロB、低め139キロ) 
倉本:カウント0-1からセカンドフライ(101キロSw、内角142キロ) 
代打飛雄馬:初球センターオーバータイムリー二塁打(外角116キロ、長野が追い付くがグラブに当てて落とす)、9対2 
代打井手:カウント1-2から空振り三振(140キロS、140キロSw、136キロF、148キロB、外角116キロ)
飛雄馬残塁、六回表終了

高木勇人プロ初登板結果 勝ち投手
六回 球数105球 打者22人 被安打6 与四球3 奪三振5 失点/自責点2 MAX148キロ 


放送中継インタビュー(試合中) 
アナ:一塁側ですが、プロデビュー戦を終えました高木勇人選手(投手)に来ていただきました。プロデビュー戦を終えて今どんなお気持ちですか? 
高木:えーもーなんとか自分のピッチングは出来たかなっていう感じです。ただいっぱい課題は見つかったかなっていう試合にはなりました。 
アナ:まぁ2点取られましたが、あの筒香選手に打たれたボールも決して悪くないボールだったと思いますが、いかがですか? 
高木:だからこそプロなのかなっていうのを改めて実感しました。 
アナ:プロの厳しさと言うかレベルの高さを感じたという1日でしたか。 
高木:はい。後一つ自分にとってバントのミスと言うのがあったので、しっかりそこを修正して行きたいなと思います。 
アナ:ただ改めて、その夢にまで見たプロの舞台、ベンチから呼ばれてマウンドに上がってどんな気持ちにまずなりましたか? 
高木:あのー本当に今までお世話になった方々にやっとこの姿を見せられるかと思ってすごく嬉しく思いました。 
アナ:そしてチームメイトが先輩方が、素晴らしい援護点をプレゼントしてくれましたね。 
高木:そうですね。点もそうなんですけど、守りでもいいプレーがいっぱいあって、本当にすごいチームに入って良かったなと思ってます。 
アナ:このままですとプロデビュー戦でプロ初勝利も手にするということになりますが、そのあたりいかがですか? 
高木:まだ、勝利、試合も終わってませんので、しっかり、この後しっかり声を出して応援したいなと思います。 
アナ:ぜひ最後に次の登板に向かっても一言お願いします。 
高木:次の登板も課題を修正しながら、しっかり自分のらしいピッチングをしたいなと思います。 
アナ:ありがとうございました。

ヒーローインタビュー(試合後お立ち台) 
アナ:そしてルーキー高木勇人投手です!!高木さん、無数のフラッシュに包まれて、そして四万人を超える大観衆の前での最初の登板でのヒーローインタビューですよ! 
高木:やーこんなに気持ちいいとは思わなかったです。 
アナ:プロに入りたくて七年間、待って待って、そしてジャイアンツから指名がありましたよね。 
高木:あの、やっと…(目を潤ませて)、今まで頑張って来て本当に良かったです。 
アナ:そして今日はご両親、さらには社会人時代お世話になった関係者、いらっしゃっていると思います。 
高木:(……)本当に今までありがとうございました。これからも頑張ります。 
アナ:高木さん、新人ピッチャーが開幕カードで先発勝利になるのは、ジャイアンツ史上55年ぶりのことです! 
高木:やー本当に光栄なことで、どんどん、あれっ(言い間違えたかなっいった風に照れ笑いをしながら)、いっぱい勝ちたいです! 
アナ:もう今日は色んな思いがあるマウンドだったと思いますけれども、何かマウンド上でもこう自分に言い聞かせるように呟いているようなシーンありましたですけれども、あの場面どんな風に自分に言い聞かせていたんですか? 
高木:あれっ(やや困った風に)自分ではよく分からないんですけど、「頑張れ」と思って言って…(思い返したように)「頑張れ」って言っているんじゃないかと思います。(笑) 
アナ:高木投手にとっては色んなことが初めての体験、そして今日、プロとして確実に大きな一歩踏み出しました。次に向けて、もう次の登板ファンは楽しみで仕方ないと思います。 
高木:次を投げさせてもらえるなら、しっかり自分らしいピッチングをやりたいなと思います。応援よろしくお願いします! 
アナ:見事なピッチング、高木勇人投手でした。

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