読んでみた〜戦前外地の高校野球

  • 仲本
    2014年11月23日 20:52 visibility951

はっきりしたデータがあるわけではないが、ニュースによると今年の夏の甲子園には台湾から訪れる人が増えたのだそうな。台湾で公開された映画「KANO」の影響ではないか、ということだ。日本では来年1月に公開が予定されている。当時の甲子園球場をどのように再現しているか、という興味はあるが、聞くところによると3時間を超える長い作品だとか…、

あと、最近やたらと「反日」「親日」に色分ける言説が巷に出回っているが、この映画はそれほど単純なものでもないのだそうだ。

そもそも、そんなの知ってるなんてどこの中等學校野球マニアだよ、というありさまだった外地勢が「最初で最後かもしれない脚光を浴びている」のは間違いない。

間違いないんです!なんですかみなさん、そのあっけにとられた顔はっ!


そんなタイミングにあわせて刊行されたのがこの『戦前外地の高校野球』という本。税抜2,800円とそんなにお安くないのだが、

現地に行くこと考えたら安い安い(←おかしい)。

著者はスポーツライターではなく、映画を通じてアジア近代史を研究されている方らしい。映画「KANO」でつながりができたとはいえ、どうして専門外ともいえる野球を?と不思議に思うところだが、実は著者の父上が戦前を満洲で過ごし、満洲代表・天津商業のエースとして甲子園に2度出場しているのだった。

しかし最後に夏の甲子園に外地勢が登場したのは1940(昭和15)年。父上もすでに亡く、関係者にインタビューすることもままならない。

幸いにも、西脇良朋氏という在野の研究者が台湾・朝鮮・満洲の中等学校野球史を早い段階で書き残してくれていた。自費出版というからあまり一般に目に触れるところには出てこないだろう(野球殿堂博物館あたりにいけば見られるかもしれないが…)。著者は野球関係の記述のかなりの部分をこれらの労作に負ったと言っている。

外地の中等学校はまずなにより日本人子弟の教育機関としてあった。嘉義農林のような混成チームは稀だった。満洲では実効支配地域の変遷とあまりの広大さで予選参加にも困難があった。いずれの地域でも当時の時代背景が垣間見られる。このあたりの解説は著者の専門分野となる。

かくして、戦前の各外地予選の記録は装いを新たに蘇った。これは父の忘れられた青春を取り戻す娘の物語でもある。中等學校野球マニアのみならず、こういう切り口から近代史を学ぶとっかかりをつかみたい人ならば、読んでみて損はないだろう。そんなに難しくないです。

(参考:川西玲子『戦前外地の高校野球』彩流社/2014)






















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