甲子園は近畿勢がお好き

  • 仲本
    2022年03月21日 14:35 visibility409

 

阪神電車は甲子園駅の通常のホームに入線した。球場出口も今年は開放されていなかった。例年であれば野球がらみの広告で埋め尽くされているが、今年は静かなものである。しかし球場へ続く道には野球観戦に向かう人の姿が戻ってきた。春の選抜高校野球大会が始まった。

 

球場正面から一塁側のスタンド外周を歩いていくと、制服姿の女子学生の一団とすれ違った。この日の第二試合、長崎日大の生徒さんだろう。アルプス席の入場口前には楽器を傍らに置いて、揃いのウインドブレーカーを着た生徒さんが並んで入場を待っていた。

 

球場内では、第一試合が中盤に差し掛かっているようだ。もともと第3日を見るつもりでこの日の入場券を買ったのだが、雨で日程が一日延びた。チケットは大会日ではなくて日付指定だから、この日しか使えない。いつもの通り外野席に入場する前に、球場隣の素戔嗚神社に立ち寄った。今回も絵馬を奉納する。

「ようやくまた観戦することができました」。

 

高校野球グッズのショップをひやかしてみる。コロナ対策なのか、なんとなくレイアウトがゆったりしている気がする。校名と校章が入ったペナントが見当たらない。定番の商品だったはずだが、ここ数年開催するかどうかで揺れたこともあって、作る手間ばかりかかってそんなに売れないと見切ったのだろうか。かわりに球場オリジナルのウレタンマスクが並んでいたりする。これもご時世である。

 

第一試合は思いのほか差が開いて終わった。

 

 

第二試合、長崎日大は大勢の応援団がスタンドを埋めていた。日大系列のスクールカラーであるピンクが目立つ。

 

急遽出場が決まった近江高校、しかしそこは常連校というべきか、少なめとはいえちゃんと応援の体制も整えてきた。この学校はブラスバンドの曲目にも特色がある。両校の応援を聞き流しながら、球場にやって来るのはこういうのを聞きに来ているのもコミだったのだなと感じる。

 

こうなると声の応援がないのが少し寂しいが、驚くべきは生徒たちの行儀のよさである。ほんとに声を出さない。外野席ではいい年したおっさんがちらほら、好き放題吠えているというのに(わたしではないですよ)。

 

試合は投手戦になった。押し気味だった長崎日大が、ようやく6回に連続長打で2点を先制した。近江は平凡なフライを打ち上げ続け、とうとう9回まで来てしまった。

 

しかし近江も意地を見せる。1点を返してなおも無死一、三塁。スタンドの熱も上がってきた感じだ。

レフト線へのフライが飛ぶ。三塁走者がホームをついたが、好返球でタッチアウト。二塁に走者を残したとはいえ打順は下位へ進み、あとアウト一つ。長崎日大、なんとかしのぎきるか。

しかし近江の8番打者が変化球をうまく拾って打球はライト前へ。二塁走者還って同点。

 

長崎日大は9回のピンチで投手を交代したが、近江はエースが一人で投げ続ける。

結局、またも延長タイブレークの試合に当たってしまったのだった。 

先攻の近江の攻撃は4番でもあるエース・山田から。果敢に初球をたたいてレフト前タイムリーを放った。

 

近_江 000 000 002 000 +4/6

長日大 000 002 000 000 +0/2

(13回は無死一、二塁からのタイブレーク)

 

タイブレークのおかげで近江はエースと心中しなくて済んだ、と言えるかもしれない。長崎日大は13回、エラーと暴投が続いて失点を大きくした。緊迫したゲームだっただけに、なんとも残念な幕切れになった。

 

寒さもあって長くなったこの試合の終了を潮に、一気にスタンドからお客さんが減った(わたしもそうだった)。こうしたファンの後押しが地元・近畿勢に有利に働いていることはまちがいない。この試合もたぶんそうだったろう。

 

試合前にすれ違った女生徒たちはこれからバスに乗って長崎へ帰るのだろう。思えばバスに乗って旅行、なんてこれまでずっとできなかったのではあるまいか。試合には負けてしまったが、学生時代の一つの思い出になってくれれば幸いである。

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