我的愛球史 第39話 「中途半端なチーム」


 (記事と写真は関係ありません)

 1994年の阪神タイガースの補強ポイントははっきりしていました。

 得点力アップ!とにかく現状のチームにいない長距離砲を必要としていました。

 FAでオリックスの石嶺和彦選手を西武や中日との争奪戦に勝って獲得します。

 「西宮球場でプレーしていた時、甲子園のお客さんの歓声が風に乗って聴こえてきて・・・」

 石嶺選手は人気球団である阪神でのプレーに大きな希望を持って入団しました。

 そして、メジャーリーガーであるロブ・ディアー選手を大金を払って獲得します。

 背番号は57番。ひょっとすると57本ホームランを打ってくれる選手・・・とまでは思いませんでしたが、バースを思わせるような大きな体と神速のバットスウィングに僕らは期待したのです。

 しかし、シーズンが始まると開幕から3連敗。

 開幕戦で亀山努選手がホームランを放ち、活躍できなかった去年の悔しさを幾分晴らしたあたりしか見せ場もなく、暗雲が立ち込めます。

 しかし、溌剌とした新人、藪恵市投手が開幕から先発ローテーションを守り大活躍を見せます。

 5月24日には巨人戦初登板を完封勝利で飾ります(5月月間MVP)。

 新人とは思えない度胸と風格に、僕らは「ついに阪神に真のエースが誕生した!」と小躍りしました。

 また4年目の山崎一玄投手も藪投手同様に1年間ローテーションを守って登板。

 さすが進学校である静岡高校出身の山崎投手、頭脳的な投球術が冴え、7勝と活躍しました。

 仲田幸司投手もこの年7勝と復調。

 郭李建夫投手も同じく7勝。先発に抑えに大車輪でした。

 他には移籍1年目の古溝克之投手が61試合に登板し7勝18セーブを挙げたことが目を引きます・・・。

 と、ここまで書いてひとつの深刻な事態が見えてきます。

 「10勝投手がいない!!」

 そうなのです。勝ち頭の藪投手をもっても9勝止まり。

 他に先発を務めた湯舟敏郎投手にしても5勝、この年先発することも多かった御子柴進投手も5勝と、大勝ちする投手がいません。

 先発が弱いチーム事情から中継ぎ、抑えに勝ち星が多くつく傾向があったのならまだいいのですが、チームとして勝ち星が前年より減っている状況ではそれも望めません。

 投手陣だけを責めるわけにはいかないでしょう。

 石嶺選手が77打点を挙げるも.246の17本塁打では残念ながら長距離砲として十分な活躍とはいえない。

 そしてディアー選手。

 開幕から打撃不振でホームランどころかヒットさえもなかなか出ません。

 それでも6月23日の雨の甲子園で見せたバックスクリーンを越えるか?!というようなセンター方向への大ホームラン・・・球場に見に行った友達が絶賛していました。

 僕もテレビで見ていましたが、甲子園であれだけ大きいホームランを見たのは他にちょっと記憶がありません。

 そのディアー選手、7月一杯で戦列から外れますが最終成績は.151の8本塁打、21打点と実力の半分も出せずに終わりました。

 その一方で亀山選手が105試合出場で.284の9本塁打28打点と、出場機会に恵まれればなかなかの成績を残せることを証明します。

 新庄剛志選手も.251の17本塁打68打点。これはやや足踏み状態か。

 和田選手が.318と安定した成績、オマリー選手も阪神最後の年になりましたが.314の15本塁打74打点と貢献を果たしました。

 真弓明信選手は代打だけで30打点の日本記録。

 となると、やはり誰も20本塁打80打点以上を記録していない・・・という事実が重く感じられます。

 捕手も関川浩一、山田勝彦両選手の併用状態。それにベテラン木戸克彦選手がサポートするという感じで、絶対の司令塔は誕生しませんでした。

 この年結局負け越し6つで5位(62勝68敗)。

 総括すれば、本当に「中途半端」という言葉がピッタリの1年に終わりました。

 他球団に目を移せば、ダイエーホークスに移った松永浩美選手が活躍。

 ホークスは順位は4位ながら久しぶりにシーズンを勝ち越し(貯金9)、将来に希望を持たせました。

 そして同じくタイガースを出た野田浩司選手はゲーム奪三振日本記録を樹立するなどオリックスのエースとして2年連続の大活躍。

 タイガースファンにとってはやり切れなさが残りました。

 しかし、タイガースとファンにはさらなる悲しみ、そして試練が待っていたのです・・・。

 

 

 

 



























































































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