胸焦がれる熱き試合

  • HiRO
    2006年07月30日 15:27 visibility58

Marines 1 - 2 Hawks

Marinesに2連勝で迎えたこのゲーム。
マウンドに上がるは、Marines小野晋吾、そして鷹の大エース斉藤和巳。

が、実は、和巳はこのところ決して調子は良くない。
四死球が多く、先頭打者を簡単に出すなど、らしくない。


この日も、初回からサブローに四球を与える。が、そのランナーを牽制死。

4回に同様に西岡に四球を与えるも、今度は続くサブローにインハイの伸びのあるストレートでバントを決めさせず、結局三振ゲッツーで傷口を拡げない。

5回。先頭里崎がライト線への2ベース。しかも続くワトソンにもストレートの四球を与えてしまい、無死1、2塁。
圧巻はここから。
ここで今江はバントの構え。4回同様高めのストレートでバント失敗を誘う。結局今江は送ることが出来ず、フォークで三振。続くフランコは外のストレートを空振り三振、大塚は外一杯のストレートで見逃し三振に斬ってとり、圧巻の3者連続三振。
マウンド上で咆吼する和巳の姿。ランナーを出しても点を獲られまいとする意志の強さの凄まじさ。

6回、今度は先頭堀に死球。ここでも西岡にインハイストレートで、バント失敗を誘う。結局、西岡はヒッティングで遊ゴロで1塁ランナー入れ替わり。1死1塁。続くサブローの打席。ここで、スライダーが甘くど真ん中に入ってしまった。レフトフェンス直撃のタイムリー2ベース。
遂に1点先制を許してしまう。

だが、ここで崩れてしまわないところが和巳の大エースたる所以。
粘り強く、味方の反撃を信じ最少失点で抑えていく。

Hawks攻撃陣も、小野晋吾の前に、6回まで散発3安打。ランナーを出しても後続が手も足も出ず、点が獲れる雰囲気がない。

7回裏Hawksの攻撃。先頭信彦がストレートの四球で出塁。2死となったところで辻に死球。2死1、2塁で、稲嶺に代えて代打田上。
インコースの低めに落ちるフォークをシャープに捉え、打球がレフト前へ抜けていく。2塁ランナーは信彦。3塁コーチャーズボックスの森脇監督代行の腕がグルグル廻っている。3塁を蹴る。信彦、痛みをおした激走!
だが、レフト大松からの返球はドンピシャのストライク。痛む臀部に構わず本塁へスライディングするもタッチアウト。
打ちも打ったり、守りも守ったり。そして走りも走ったり。

息を呑む1点の攻防。まるでプレーオフを想い出す。
そう、こんなゲームを観たい!

歯ぎしりして悔しがる信彦。
その姿にチームが燃えないわけはない。まだまだ。

8回、先頭の堀にヒットを許し、西岡が絶妙な3塁戦へのバント。西岡は1塁へヘッドスライディング。セーフで内野安打となって無死1、2塁。
西岡の勝利への執念も素晴らしい。Marinesも、もう1点を必死で獲りに来る。
ここで、サブローは送りバント。そのサブローのバントに、Hawks投手陣の得意技「バントさせて3塁封殺」炸裂。
和巳が素早くマウンドを駆け下り、迷うことなく3塁へ。3塁フォースアウト。
続く、大松がフェンス際への大きなレフトフライを打っただけに、送りバントが成功していれば犠牲フライで1点という場面だった。
この大飛球でランナーはそれぞれ進塁。2死2、3塁。里崎が四球を選び、2死満塁となってワトソン。外一杯の151km/hのストレートを引っかけさせ2ゴロ。
満塁のピンチを凌ぎ、追加点を許さず!
握り拳で咆吼する和巳!

9回には藤岡に代わったものの、ランナーを背負ってからの鳥肌の出るような和巳の投球。その勝とうとする意志の強さ。この投手で点を獲られたなら仕方ないとさえ思える。まさに、大エース。

9回はその藤岡がMarines打線を抑え、迎える9回裏。マウンドには小林雅英。
先頭柴原が初球外寄りのストレートを痛烈に弾き返す。右中間を抜けるかと思ったが、サブローが背走してキャッチ。ファインプレーにベンチで笑みを漏らす先発小野晋吾。
続くは、和巳同様、決して集中力を切らさない信彦。
3球目、外寄りの150km/hのストレートをいとも簡単にレフト前へ。味方打線を信じ塁に出ることに徹したバッティング。

延長の可能性を考えると悩むところだが、ここで迷わず代走鳥越を送る森脇監督代行。何処までも攻撃的な王イズムの体現者がここにもいる。
(結果的にはこの代走は不要だったが)

ズレータへのその初球。ストレートを弾き返すと、打った瞬間にそれと分かる打球が舞い上がる。打った瞬間、打球の行方を追わず、1塁側ベンチを見て両手を高々と上げるズレータ。
20号、逆転サヨナラ2ラン!!
打球が吸い込まれていったレフトスタンドを、何ともやるせない表情で見つめ続ける小林雅英。
両手を掲げ小躍りしながらベンチを飛び出す和巳。興奮の余り1塁を廻るところでメットを放り投げてダイヤモンドを廻るズレータ。本塁では手荒い祝福の輪。あの大きなズレータがナインに揉みくちゃにされて見えなくなる。
立ち上がったズレータに和巳が飛びつきガッチリと抱擁。

3塁側ベンチでは小野が呆然。
ボビーが手を叩きながら何かナインに語りかけているが耳には入っていないようだ。
Hawks打線は、小野の前に8回途中まで僅かに4安打。ほぼ完璧に抑え込まれたといっていい。好投をする先発が代わった途端、ゲームの流れが変わる。往々にして野球にはあるものだが...


Hawksは、これでMarinesに2試合連続のサヨナラ勝ちで3連勝。試合の内容も勝ち方もいい。
ゲーム展開的にも、少ないチャンスを活かす、強いチームのゲーム運びが出来てきた。そして何より、優勝するチームに特有のムードがある。

加えて、この日の信彦の激走、和巳の雄叫び。そして最期のサヨナラ劇。
観ていて胸が熱くなる。
両軍選手のプレーの熱さに胸焦がされていくような、その濃密な時間に、思わず野球への愛情を深めずにはいられない。

こんなゲームを観るたびに、パ・リーグのファンで良かったと思う。

それにしても、今のHawksにおいて、投打の両輪、斉藤和巳、松中信彦のそのチームの支柱としての存在感、そして、彼ら2人が諦めないことによるチーム全体の意識への波及効果は、はかりしれない。

この日の、ヒットで出塁した信彦、サヨナラHRを打ったズレータが素晴らしいのは言うに及ばずとして、逆転サヨナラの勝利を呼び込んだのは、味方の逆転を信じ粘り強く投げ続け、その投球とマウンド上で見せる姿で、ナインを鼓舞し続け、集中力を高め続けた和巳といっても過言ではないだろう。勝ち星こそつかなかったが、このゲームの殊勲者は間違いなく和巳。あの姿、あのマウンド上の姿を見て、ゲームを諦める者などいようはずが無い。

和巳が投手タイトルを総ナメにしたり、信彦が3冠王、2冠王に輝いたのも、チームが優勝争いをする中にあって、チームが勝つことを追求した結果。その意味では、元々、フォア・ザ・チームの意識の高いチーム。それが王監督のチーム離脱によってますます強固に結束した。

王野球の集大成を飾るべく、まだまだ激しい戦いが待っている。
そんななか、この日のような熱い試合を数多く魅せて貰いたいものだ。

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