ヒサシの思い出

出張で東京駅の新幹線のホームにいた時だ。
もう15年くらい前の話。

私服のノブヤスを見かけて「あれ？」と思ったらそこにオジェック監督もいた。
（たしかフリントコーチもそばにいたと思うが）
当時の浦和の選手たちの集団だった。当時はばらばらの私服で移動してたみたい。

いきなりの遭遇に立ち尽くした自分の目に入ったのはその集団から離れて立っている、
ガラの悪い二人組だった。
のちに謹慎処分になる田口選手と、「クリアー！」のヒサシが不機嫌そうに立っていた。

なぜヒサシに声をかけたのかは、たぶん同い年だったからだと思う。
ヒサシは意外に紳士で、少し話をしてくれた上、サインまでくれた。

「明日は磐田なんで移動中なんですよ」
「俺、ホームは休まず応援行ってるからね！」
「ありがとうございます。明日は絶対勝ちます」
なんて言葉を交わしたような記憶が。

翌日のアウエー磐田戦は中継がなかった。
深夜のスポーツニュースまで待った後に見た映像は、
Vゴールを決められてゴールポストを蹴るヒサシの姿だった。

ああヒサシ。。。
そもそも浦和が試合に勝つことが全くイメージできない頃の話だから。

その後、あの大事にしていたサインもどこかへいった。
試合を見るのも駒場のゴール裏から埼スタの指定席に変わった。

ヒサシの体型はずいぶんと丸々としてきたが、今日も黙々と都築とギシにボールを蹴る。
試合前に元気なヒサシを見るのが自分のひそかな励みになっている。

ヒサシは自分にとっては特別な選手だ。
なにしろ言葉を交わしたことのある浦和の選手はこの人だけだから。