李承ヨプの年俸
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DIME
2008年08月27日 14:46 visibility438
ちょっと時間ができたので簡単なものから。色々と脱線したくなる話題なんですが、とりあえずあまり脱線せずにいきます。
李承ヨプの年俸について、ロイターで200万ドルとする報道があったらしいです、以下ですね。
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五輪=野球、巨人でプレーの李が日本に謝罪
[北京 22日 ロイター]
北京五輪の野球、韓国代表で巨人でプレーしている李承ヨプが22日、準決勝で日本代表を6―2で下したことを受け、日本の金メダル獲得を阻んだことについて謝罪した。
試合で2点本塁打を放った李は記者団に対し「日本のファンと選手に申し訳ないと伝えたい」とコメント。「しかし(同準決勝は)重要な試合であり、わたしたちは同じアジア人だ」と語った。
李は年俸約200万ドル(約2億2000万円)で巨人でプレーしている。
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「ロイターが言っているからには、これは信憑性がある」と思う人もいるかもしれませんが、日常ロイターの報道に触れて感じている限りは、別に報道機関として日本のそれと情報の質にそれほど差があるわけでもないと思います、日本人って外国のブランドに弱いですからね、これも一種のブランドじゃないでしょうか。
ロイターのこの報道の元となったソースはたぶん、日本の報道機関のもつそれと大差ないんじゃないかなぁ。っていうかそちらからの孫引きかもしれません。
ただまぁそれは置いておいたとしても、今年の年俸が200万ドル前後だったとしても何もおかしくないと思います。そもそもそういう契約だったように当時の報道から見受けられました。
それについては、4年契約を結んだ当時に日記で触れましたからそっちを見ていただくほうが早いかと思います。
あまりに古くて携帯からじゃ遡れないでしょうから、後に全文つけておきます、正直今見ると恥ずかしい部分が多々あるのですが(笑)。
とりあえず一部だけ抜粋します。
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つまり4年契約というのは「4年間の保有権に対する契約」を指している気がします。
FA宣言した選手は再取得まで4年間かかります、つまりチームに次の4年間の保有権を売る事でその分の給与の上積みをもらうわけです。
(中略)
こう予測する理由は、普通複数年契約が結ばれた場合は「総額○○」って表記が付いてまわるのに対して、奇妙なことに 「総額30億」という表記が共同通信(と共同通信系新聞社)とスポニチだけ。
巨人に近い読売新聞やスポーツ報知などもっとも詳しく報道するはずの系列マスコミでそのような記載がないのは不自然。
逆に朝日新聞の記事だと「来季の年俸は4億9000万円増の6億5000万円(推定)と破格のアップ。2年目以降はシーズン終了ごとに話し合われる。」という記述があります。
大リーグ挑戦条項があるためそちらのことのように捉えがちですがこれは年俸に関しては1年ずつでの契約ってことじゃないかって気がします。
これらから類推するに「総額30億」と書いてるところは多分「金額は推定」ってやつで勇み足なんじゃないかと思います。実際2年目・3年目になってはじめて本当はこんな契約でした、ってわかるのはプロ野球選手の契約ではそう珍しくもありませんし。
(中略)
もし2年目以降の金額はその都度となっているのであれば、年俸の契約については1年契約と変わらないって言うことです。
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当時のニュースのログを残していなかったのでわかりにくい部分があろうかと思いますがご了承ください、やっぱり残さなきゃダメだねこういうのは。
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話しに入る前に1つ。細かい話ですが、FA権を取得するのは年数じゃなくて一軍登録日数ですから、例えば「4年」ではなくて「4シーズン」とするのが正しいんですが、ここでは面倒なのでそれを同じようにかいています、適当に修正してください。
閑話休題。
個人的な見解ですが、プロ野球の選手契約で支払われるお金については大別して2種類のお金があると考えた方がわかりやすいと思います。
1つは、「年俸」といったときに一般的に思い浮かぶお金、選手の働きに対する対価、『参稼報酬』です。で、もう1つあります、「球団がその選手に対して保留権を持つことへの補償金」です。
本来ならば契約は自由に結ぶ権利がありますが、プロ野球ではそれをやむをえない事情から不当に制限しているわけです(ここを突き詰めると話がややこしくなるので避けます)。
誤解を怖れずに単純に言えば、いまのプロ野球の状態と言うのは、「一般的には認められている自由を、自分たちの都合で制限している」っていうことになります。その制限の補償として支払われているお金も選手に支払われるお金に含まれているわけです。
具体的に言えばまず契約金ということになりますし、ある程度年数が伸びてきた選手に対して上積みが多いというのも実質的にこの補償の分を上乗せしているからとみなせます。ちなみに契約金と言うのは会計上は三年で償却されてます。
ちょっと脱線しますが、そういう考えを元にすれば、「FA権を取得する」というのは、「それまでに貰っていた補償金への対価分のサービスを支払い終え、その後4年分の保留権に対する補償を再請求することができる権利」であると言えます。
そう考えれば、MLBのようにFA権を取得した選手のほとんどが権利を行使するのは実に当たり前な事だというのがわかるかと思います。
たとえその球団に絶対に残るつもりだとしても、球団がその選手に対して持っている保留権分の補償は既に貰っているのですから、それから先の年数の分だけまた補償してもらうのは当然の権利です。
一部ベテラン選手に見られるようにFA権を取得するけども移籍する気が無いので宣言はしないと言うのは、本来貰って当然のお金(4年分の補償金)の請求を放棄しているに等しいわけです。
だからMLBでは宣言しない方がお金をより得られるような選手などを除いて普通はみんな宣言するんですよ、その行為がただ単純に「もらえるお金を請求する」ことなんですから。
そう考えている私からすれば、ちょっと表現が暴力的ですが「税の還付金を受け取る申請をした」とか「株主配当を受け取ってきた」とかと一緒なんですよ、「FA権を行使する」ってのは、しない意味がわからない、ぐらいのことです。
もちろん日本プロ野球では「しない」理由はあるんですが。まず「FA権」というのものが後発的に取り入れられ、その取り入れられ方として「自由に移籍する権利」であるかのように説明されてしまったがために、こうなってしまっているんだと思います。もう1つ理由をとしてはFA権を取得できる選手が限られていたりFA補償の関係で需要がほとんど喚起されないが為に市場があまりにも小さく、市場原理が働かないと言うのもあるでしょうけど。FA宣言した方が買い叩かれかねない歪な状態です、少なくとも去年までは。今年からはそれが改善される可能性はあります、選手次第です。
話を外国人選手の契約に戻します。
特にアジア圏の選手に多いのですけど、たまにびっくりするぐらいの長期契約を結ぶ例が出てきます、李承ヨプの場合は(年齢もあって)それほど長いわけでもないのですけど、張誌家とか趙成�とか若い選手に対する契約ですね。
彼らの7年とか8年とかいう契約は、単純に考えると、あまりに長すぎる契約であるかのように思われがちですが、上記のように考えれば、彼らのその年数と言うのは「保留権を持つ年数」であると言うのがわかると思います。
ドラフトを経て入ってくる日本人選手であれば「最短でも9年」の保留権が球団側に与えられています。それは別の観点で言えば「9年契約」を結んでいると表現できます。日本人選手は皆長期契約を結んでいるんです。
張誌家や趙成�はドラフトで指名されるような年齢で入団したわけで、日本人選手に準じるように契約をしているに過ぎません。
ただその結果として9年間を満了することなく、退団していく選手の方が多い。張誌家や趙成�もそれらの選手の扱いと全く一緒なんですね。期待の若手選手として入団したけれども、結果が残らなかったので途中で戦力外通告を受けた、それだけなんです。
彼らが契約期間を満了できなかったので、あの長期契約がもったいなかったか、長期契約が間違っていたかといえば、そんなことはないんです、それを言い出せば、ドラフトで指名される選手のほとんどはもったいないんですから。
李承ヨプの場合は年齢が高いので、単純にドラフト指名選手と比較する事はできませんが、今度は先の日記にも書いたように「FA宣言した選手」と同じように考えれば、彼らと同じくこれから4年分の保留権の買取を球団側が提示し、それに加えて各年度の年俸を別途定めていると考えればいいわけです。
そう考えれば、今年の李承ヨプの年俸が大きく下がっていたとしてもおかしくはありません、参稼報酬を「4年間で幾ら」と契約していたのではなく、あくまで4年という年数での契約は保留権の補償の分ですから。日本人選手と違って減額制限もないわけですしね。
李承ヨプの契約については過去にも何度か触れていますので興味がある方はどうぞ。
http://baseballsns.jp/member/437/diary/4196/
http://baseballsns.jp/member/437/diary/4588/
http://baseballsns.jp/member/437/diary/22103/
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話が逸れますが、検索機能が復活したのは嬉しい限りです。確か当初はあったと思うのですけど、大幅なリニューアルがあったときになくなってしまって、困ってました。今回のように古い日記を探す時に大変助かります。
ここでは、過去ログを月別やカテゴリで区分けして辿っていくことができず、私の場合は日記のタイトルだけ見ても、中身がわからない日記の方が多いので、自分で自分の過去ログ漁るのにも苦労していました(googleから検索してました)。
実質的な作業労力はあまり変わりませんけど、検索機能の復活はほんと助かります、できれば過去ログをもうちょっと効率的に辿れると嬉しいのですけど。
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(過去の日記)
李承ヨプが巨人と4年契約を結んだとのこと。
http://www.giants.jp/G/gnews/news_20061105_0001.html
http://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/news/20061105i411.htm?from=main4
金額に関して高すぎるって意見もあるようです、私もちょっと高すぎるなぁとは思いますがあくまでちょっと。逆に3億とかいうニュースがあったときには低すぎるだろうと思っていました。
(編注:現在では安いぐらいだと思っています、詳しくはこちらの日記参照)
彼の場合は外国人選手なわけで。今年で言えば中日のウッズが5億円、西武のカブレラが6億円。ペタジーニとの契約内容は確か7〜8億だったか。
比較対象をそこにおけば、年齢が若いこともありますし非常識なほどの値段でもないと思います。間違いなく4億そこらじゃ安すぎるでしょう。
それに記事にあるように「日本一になれば、希望している米大リーグ移籍について球団と協議すること」という変則契約があるのならば本当に比較するべきは将来MLB側が出してくるかもしれない彼に対する評価との対応となってくるわけです。
現在の李承ヨプに対しては、「MLBに行くのであればどうしても評価は低くなり高年俸を最初から得ることは難しいだろう」という評価がありますし、私もそれが正しいと思います。
ただそれは一概に日本プロ野球界での結果をMLB側が考慮しないって言うことではない、というのは例えば松井秀が3年契約2100万ドルで契約したことなどからも明らかです。
李承ヨプが巨人で順調に結果を残してMLB側と交渉することになったならば、MLB側は現在以上に高い評価をしてくることは十分考えられます。
巨人側としてはそうなった場合でも引き止めるためには最悪でもまず金銭的にはMLBと渡り合えるだけの金額を用意しておかなければなりません。
そういう意味で言えば、李承ヨプに対して7億前後を用意しておくというのはおかしくないと思います。
ただ契約内容で私が疑問に思うのは「4年契約」という点です。
2年前、清水隆行がFA残留したときに3年契約を求めたものの、それに対して今までの戦略失敗の反省として球団としては「複数年契約は2年まで」という基本方針を表明した経緯があります。
清水隆行もこれが球団全体の方針であるならばと納得して2年契約となったわけです。
この「2年契約まで」を表明したのはちょうど現在の清武体制が始まったときで、それを聞いたときに巨人も改善の兆しがあるなぁと思いましたし、これまでの清武体制の活動を見ている限りその考えは正しかったと思います。
にもかかわらず今回その「最初の一歩」を崩して「4年契約」としたのは相手が球団に保有権のない外国人選手であるとは言えちょっと球団側の姿勢として疑問をもちます。
またあの時2年までとした理由として清武代表や桃井社長が言っていたのは長期契約だとどうしても、ハングリーさが失われ成功しにくくなるという懸念と巨人において3年以上の長期契約をした選手のなかで成功した選手がほとんどいないっていう事実に基づいた対策だったはず。
そのような考えの下2年契約までという方針を堅持していたのは決して間違っていないと私は思っています。だから2年契約までというのはこれからも守って欲しい。
にも関わらず、今回「4年契約」としたのは何故なのか。巨人側がこの方針を転換したのか。そう考えるのが一番自然です。しかし、これは私の個人的な予測にしか過ぎませんが、どうもそうではなさそう。
つまり、この部分においても変則的な契約、つまり4年契約というのは「4年間の保有権に対する契約」を指している気がします。
FA宣言した選手は再取得まで4年間かかります、つまりチームに次の4年間の保有権を売る事でその分の給与の上積みをもらうわけです。
ですからそれと比較すれば4年契約って言うのは特におかしくはありません。
こう予測する理由は、普通複数年契約が結ばれた場合は「総額○○」って表記が付いてまわるのに対して、奇妙なことに 「総額30億」という表記が共同通信(と共同通信系新聞社)とスポニチだけ。
巨人に近い読売新聞やスポーツ報知などもっとも詳しく報道するはずの系列マスコミでそのような記載がないのは不自然。
逆に朝日新聞の記事だと「来季の年俸は4億9000万円増の6億5000万円(推定)と破格のアップ。2年目以降はシーズン終了ごとに話し合われる。」という記述があります。
大リーグ挑戦条項があるためそちらのことのように捉えがちですがこれは年俸に関しては1年ずつでの契約ってことじゃないかって気がします。
これらから類推するに「総額30億」と書いてるところは多分「金額は推定」ってやつで勇み足なんじゃないかと思います。実際2年目・3年目になってはじめて本当はこんな契約でした、ってわかるのはプロ野球選手の契約ではそう珍しくもありませんし。
もし2年目以降の金額はその都度となっているのであれば、年俸の契約については1年契約と変わらないって言うことです。ならば長期契約の弊害も防ぎつつ、外国人選手の保有権問題も解決しているわけですからいい契約だったのではないかと思います。
MLBほどではないにしろプロ野球もいろいろ契約が入り組んでいますので類推の域をでないわけですが。明日になったら「総額○○億」って表記が出てくるかもしれないですしね(笑)
- favorite16 visibility438
- 事務局に通報しました。
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