年俸調停の話

  • DIME
    2007年02月23日 13:44 visibility461

またお堅い日記で申し訳ないんですが、簡単に説明を。
NPBでもMLBでも年俸調停はありますが、その実態は大きく違います。
もっとはっきり言えばNPBの年俸調停は有名無実化しています。

MLBの年俸調停はその成立経緯からして労働組合の団体交渉の成果としてもたらされたものですから基本的に公平な制度です。
経営側と選手会側が合同で中立の仲裁人を指名します。
そして公聴会が開かれ、球団側と選手側がそれぞれ「適正な報酬」を提示して主張します。お互いの主張を聞いたうえでより合理的である方が選ばれます。
だからやたらと高い要求をする選手の主張も認められませんし、やたらと低く抑えようとする球団の主張も認められません。
結果として球団の主張も選手の主張もだんだんすりあってきて調停を申請しても裁定前に決まることが多いですし、公聴会になってもたがいの主張する年俸差はあんまりありません。
より公平で誰もが納得できる年俸になるように多くの選手は年俸調停を申請することになります。


それに対してNPBのそれはただ統一契約書をMLBに準じて書いていたので付け加えていただけで、その実態は特に調停委員会の委員構成によって実質的に機能していません。
実際に読んでもらうのが一番だと思うので、該当する野球協約をまず引用します。

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第94条 (参稼報酬調停)
次年度の選手契約締結のため契約保留された選手、またはその選手を契約保留した球団は、次年度の契約条件のうち、参稼報酬の金額にかんして合意に達しない場合、所属連盟会長にたいし参稼報酬調停を求める申請書を提出することができる。
[1973.9.14、1998.11.18改正]
第95条 (参稼報酬調停委員会の構成)
連盟会長が前条による参稼報酬調停の申請を受理した場合、参稼報酬調停委員会を構成しなければならない。参課報酬調停委員会は、コミッショナーおよび両連盟会長によって構成される。なおこの委員長にはコミッショナーが当たるものとする。
[1998.11.18改正]
第96条 (参稼報酬調停の方法と時期)
参稼報酬調停委員会は、選手本人、当該球団の役職員1名からそれぞれの希望参稼報酬額およびその根拠を聴取し、調停を行う。このとき、参稼報酬年額を記入する箇所のみを空白とし、当該選手と球団が署名した統一契約書を提出しなければならない。
この時点で当該選手は参稼報酬のみ未定の選手契約を締結した選手とみなされる。参稼報酬調停委員会は、所属連盟会長が調停の申請を受理した日から30日以内に調停を終結し、決定した参課報酬額を委員長が統一契約書に記入後、所属連盟に提出することとする。
[1998.11.18改正]

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コミッショナーおよび両連盟会長の任命権限はオーナー会議にありますから、彼らで構成される委員会がどれだけ中立であろうとしても中立になりえないのは当たり前です。
しかも調停委員会はお互いの主張する金額のどちらかを選択するとかではなく、適度にすり合わせた金額でまとめようとします。これもまた適正金額になるためには逆効果です。
結果としてこれまで6件(5件だったかな?)ありましたが、FA制度のない時代に球団側が誰が見ても明らかに低すぎる金額を提示していたのがせいぜい他球団並ぐらいにまで引き上げられたことしかありません。

だから昨日あたりの福留・高津あたりの契約関連のニュースで、そんなに嫌なら契約しないで調停申請すればいいじゃんとかいう声もあるようですが、ムダです(笑)

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