NPBが目指すべき形 ビジネスモデル(その2)
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DIME
2007年01月30日 21:59 visibility1235
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NPBが採用すべきモデルは?
ではどちらがNPBに適しているのか、私は後者の開放型モデルだと思います。
もっと正確にいえば既にNPBを取り巻く環境を考えるともう開放型モデルしか選択肢がないと思います。
「しかない」理由を1つと、それ以外に開放型モデルのほうが適している理由をいくつか挙げて生きたいと思います。
MLBの存在
MLBの存在、それが私が考える動かしようのない「しかない」理由です。
閉鎖型のビジネスモデルを構成するための必要条件として「市場を独占状態に置く」という条件があります。
といきなり言ってもわからないかもしれないので説明しますと、閉鎖型ビジネスモデルというのは先ほど説明したとおり「人材・資金を管理する」事がモデルの根底にあります。
管理をするというのはどういうことか、不自由を強いるということです。これは別にスポーツの問題じゃなくて「複数の人間を管理する」ということがどういうことかを考えていただければわかると思いますが、例えば「学校のクラスを管理する」っていえば「児童が好き勝手動かないようにする」ということですよね、日本の場合だと「管理」って言葉は嫌われ者ですのでそういう表現はしないでしょうが。
先ほど説明したように「自分たちの努力(=人気)で得た収入もみんなで分けなきゃいけない」というのも不自由ですし、「ドラフトで指名されたチームに行かなければ行けない」というのも不自由です。
何故これが認められるかといえば、それを呑まなければ他に選択肢がないからです。その閉鎖社会の内側に入れてもらわないと恩恵を受けることが出来ないからです。
アメフトの選手はNFL以外でアメフトによってお金を稼ぐことは出来ません。ではもし仮にNFLクラスのリーグがもう1つあったらどうでしょうか。選手はそっちを選択するという可能性が生まれます。
そしてお互いのリーグは良い選手に自分たちのリーグを選択してもらうために選手に対する管理を緩めていく事になります。管理が緩くなっていくと結果的に戦力の不均衡が生じビジネスモデルの根底が揺らぎます。
ですから閉鎖型ビジネスモデルを作るのであれば、その大前提として「このリーグだけしかない」って言うのが必須なんです。その方策としては2点、「孤高を貫き鎖国をして他の存在を認めない」か「実際に世界で唯一のリーグにする」ってことです。
実際この考えの下でアメリカのプロスポーツでは後発のリーグに関しては徹底的に排除されてきました。ニグロリーグ然り、AFL然り、 消滅という形にしろ吸収という形にしろ、アメリカの閉鎖型ビジネスモデルを貫くリーグは市場においてそのリーグが独占するということを徹底してきました。
もっとはっきり言えばMLBもこの閉鎖型モデルの必要条件に関しては認識しているはずです。
だからこそ数十年前までは徹底的な「孤高」を貫きNPBの存在なんて気にしてなかった→でも選手が行きそのレベルが知らしめられまた日本市場が大きなマーケットだとわかった→今度はつぶしにきているわけです。この変化は王・衣笠の世界記録への対応の変化をみれば顕著にわかると思います。
その流れにのっとり現在日本で行っている活動というのは将来的には「NPBつぶし」による日本市場の独占→世界市場のほとんどの独占を目指しているのは明らかです。
翻ってNPBを考えると、今更MLBという存在を無視して鎖国することは出来ません。今から人材を流出するのを全部防ぐのも無理があるでしょうし、たとえそうしたとしてもファンは既にMLBの存在を知っていますから、社会主義国が崩壊したようにどれだけ国家(ここではリーグ)が存在を無視しても国民(ここではファン)はその存在を無視しないでしょう。
結局閉鎖型ビジネスモデルは並存できませんから、MLBに人材が流出するのが避けられない限りというよりももっと大事なのは、人材でなく「ファン」や「需要」をそちらと争うことが避けられない限り(少なくとも日本国内市場に限ってだけでも)MLBとNPBのどちらかが消滅するまで潰し合うしかありません。
私はNPBはMLBとくらべて試合の質そのもので負けるとは決して思いません。ただその潰しあいになったときの勝利条件は試合の質ではありません。市場の占有度が勝利条件です。そうなったときに日本人の欧米礼賛傾向、 なによりスポーツビジネスとしての習熟度の圧倒的なまでの差を考えると勝ち目があるとは思えません。
具体的に言えばNPBがどれだけよい試合を提供しても現在のようにNPBの「試合」よりMLB日本人選手の「個人成績」のほうがもてはやされてしまっているようでは勝つのはおぼつかないでしょう。そういう報道になってしまっている、マスコミをうまくコントロールしていることが1つの「差」です。
例えば井川選手が地元で少年野球教室を行っているところが先日いろんなニュースで報道されていたと思います。ご存知の方も多いと思いますがあれは別に今年からはじめたわけではなく阪神時代からずっとやっていたことです。
でもなぜ今年になって急に大きく取り上げられたか。メジャーのほうが注目度が高いからでしょうか。それだけではありません。事前にメジャー側がマスコミに告知して足を提供するなどしてマスコミを引き連れていくようにしているからです。マスコミとしてはオフシーズンの時期に「ネタ」を提供してもらえるわけですから喜んで飛びつきます。結果的によく報道されます。
そういう行動が積み重なっていくことでいつの間にか前後が逆転して「メジャーのほうが注目度高い」ことになっていくんです。このあたりがビジネスの差です。
今NPBに与えられているのは「閉鎖型モデルでMLBと全面競争」か「開放型モデルで独自路線」かの2択です。
最初に述べたように私の第一目標は「日本にプロ野球を存在させ続ける」ですから、それならばまだ開放型モデルを選択することに活路を見い出す方が賢明ではないかというのが私の考えです。
まぁ「閉鎖型モデル(or現行モデル)で競争せずに衰退」なんていうのもあるかもしれませんがそれはそもそも目標に合致しないので除外します。
んではその他に私が考える理由をいくつかあげていきたいとおもいます。
戦力均衡が本当に面白い?
よくプロ野球再編問題を語るときに「戦力均衡を目指すべき」ということを主張される方がみうけられます。ではお聞きしたいのです「何故戦力均衡を目指すべきですか?」と。
多くの方が「戦力均衡をすればリーグの魅力が増す」ということを主張されますがはっきりいって私は「戦力均衡→魅力増加」に論理的つながりを認められません。
戦力均衡していないリーグは面白くないでしょうか。だとすれば戦力均衡をしていない欧州サッカーリーグなんぞは全て失敗しているはずです。失敗していますか?していませんよね。
「戦力均衡を目指すべき」と主張するにはまずそもそも「戦力均衡することにこんなメリットがあってそれでリーグが面白くなる」という事を説明しなければなりません。それをしないでおいて「戦力均衡すればリーグが面白くなるから戦力均衡を目指すべき」と強弁されても私は納得できません。
何故戦力均衡すれば面白い?って聞いたらアメリカで(NFLでetc)それで成功してるからなんて堂々と言う人さえいますけど、他で成功したらこっちでも成功するだなんて論理が通じるはずがないですよ。
一般企業で考えてみてください。「この販売方式は日本で大成功した、だから外国でも大成功するはずだ」なんてのたまって飛び出していって風になった会社がいったいどれだけあることか。逆も然り、欧米方式をそのまま日本で取り入れたけど大失敗して撤退して言った会社は星の数ほどあります。
なんで普通に社会人としてそんな主張をすれば赤っ恥かくような意見をことプロ野球に関してならば堂々とマスコミとかでも語る事が出来るのか、私にはさっぱりわかりません。
「あちらで成功しているから」というのは理由になりません。もしなるとすれば「何故成功しているかの条件」を示し「その成功条件が日本市場でも当てはまること」を示してはじめて理由になるのです。
そしてこの戦力均衡を目指すべきという理由の「条件」は私は閉鎖型ビジネスモデルである事だと考えています。
鈴木氏の言葉をお借りすれば「閉鎖型ビジネスモデルを採用する背景には、“優勝の行方が分からない状態を長く続ける”(結果予測不確実性を高める)ことがリーグ戦を盛り上げる上で必須であるという米国スポーツビジネス界での定説である」ということです。
ということはもし開放型ビジネスモデルを選択するのであれば戦力均衡は必要ないのです。
上記がまず第一の理由ですがそれ以外に野球の特性、そして日本人の特性を考えてもやっぱり戦力均衡を目指すことは向いてないと思います。
まず野球の特性です。 野球は戦力差があったほうが面白いんですよ。
前に私がなぜ1試合ずつに関してあまり言及しないかを記した日記がありました。
あのときにも書きましたが、野球というものは各種あるスポーツの中でも「最も実力が勝敗に結びつきにくいスポーツ」の1つであると思っています。 1シーズン戦って100回以上も試行回数を重ねて(=試合をして)それで勝率7割(146試合制で103勝)なんて行くはずもないスポーツなんてそうありません、って言うかなんか他にありますか?
これを別の観点から見るとどういうことなのか。「実力差があっても勝つことが比較的容易い」のが野球の特性の1つなのです。多少の戦力差があっても勝つ事が出来るんですよ。
日本人は「判官びいき」という言葉に表されているようにそういうの大好きです。古くは三原マジックだってそうでしょうし、高校野球などでも名門校を地方の部員の少ない高校などが打ち破るとか大好きですよね。そういう「アップセット」を見ることが容易いのが野球の魅力の1つだと思います。
しかし戦力均衡を推し進めればそもそも戦力差がなくなってしまいますから、そういうアップセットの必要条件が消えてしまいます。それは果たしてプロ野球が面白くなることですか?私は面白くなることではないと思います。
ある程度の戦力差があったうえで、それでもなお各チームに優勝の可能性がまったくゼロとは言えない。それぐらいの状況においておくほうが野球は面白いと思います。
もう1点が日本人の特性で、選手がチームを渡り歩くのを好まない人が多いことです。
戦力を均衡するということは、チームの戦力は選手ですから選手がばかすか入れ替わるって事です。戦力均衡が最も進んでいるNFLでは同時に選手の移動が最も激しくなっています。
NFLではチームが優先的に保持できる選手は1名のみ(だったはず)です。 だから有名選手であっても、チームの顔であっても移籍することは珍しくありません。
ご存知のようにドラフトでの指名順はそのままその選手がリーグで本当に発揮する実力順にはなりません。期待はずれもいますし期待以上もいます。ってことは入り口だけを公平にしても戦力は均衡しません。
じゃあどこを均衡化するか。内部での各チームの人件費を均衡させることで戦力均衡を図るわけです。
その為に絶対に必要な条件は何か、まず選手に対して実力どおりに金銭評価がなされなければなりません。リーグ全体でどのチームであっても基本的に同じぐらいの値段になる必要があります。
これに関しては各チームの人件費(=需要)を等しくすれば、プライスメカニズムに従えば原理的には近似します(もちろんそうなるような補完システムは必要でしょうが)。まずこの点で「均衡」します。
その上で例えばどうしても先発が足りないチームと先発に余裕あるチームがあれば前者の方が先発投手に対して若干いい条件を出すようになります。
その次の段階として、選手がよりいい金銭条件を出してくれるところにちゃんと移籍してくれないと均衡しないんですよ。
「君には10億の価値がある、でも他の選手との兼ね合いで5億しか出せないから我慢してくれ」って言われたときに我慢されてしまうと、結果的にそのチームは差額5億分他チームより不均衡になってしまうんです。
「チーム全体で人件費に掛けられるのは30億まで。その枠内で収めるためには10億の価値がある君にも5億しかだせないのだ」っていう主張、何言ってるんだと。30億で収まりきらないのなら収まりきらない分放出してくれないと戦力は均衡しないんです。
上のようなのを日本では「美談」と称したり「当然の考え」と受け止められます。でも戦力均衡という観点から見れば「最悪の裏切り行為」です。これらが通っちゃ均衡しないんですよ。
理屈はこうです、でも日本人が感情的に受け入れるでしょうか。ファンは選手が元の球団より高いお金を提示してくれた球団に移ることを当たり前として受け入れるでしょうか。無理だと思います。
そのうえ選手も日本人ですから、彼ら個人がそういう評価額順に移籍していく行為が戦力均衡を達成するためには必須条件であるにも関わらず、それを選択してくれないって事にもなると思います。
でもそれをしないと均衡はなりたちません。戦力均衡にするということはどのチームにおいても選手への評価額が近しくなること、そして評価額がより高いチームに選手がちゃんと移ってくれる事、これなしに成立し得ないのです。
戦力均衡を主張する人は少なくとも上記のような例を「プロ野球界に対する裏切り行為」と認識することは必須です。出来ますか。むしろ主張する人に限って「美談」扱いすると思いますが。
1億の価値の選手に2億提示することも、2億の選手に1億しか提示しないこともベクトルの向きが逆なだけで両方とも同じ行為です。
そうやって日本人の特性に合わないような考え方を無理矢理押し付けるよりは、日本人の感覚に沿った形でやっていける方法を模索した方が賢明ではないでしょうか。
じゃあ日本人の感覚に沿った方向性とは何か。選手が1つの球団にずっと居続けられるような方向性です。
それは多くの方が開放型モデルだとそうならなくなってしまうと思っているようですが、上記に書いたように本当は違うんです。閉鎖型モデルであるほうがシステム上選手の移動が容易である必要があります。
「ひいきの選手がチームを渡り歩かないこと」と「戦力均衡」、この2つが最初に話した同時に成立し得ない矛盾点になります。
そういう2つの特性を考えても戦力均衡になるようなリーグにする方がスポーツとしての魅力の1つを失ったり日本人の感覚にあわないことをせざるを得なかったり。戦力均衡は目指さない方がいいのじゃないかっていうのが私の考えです。
それならばそもそも「戦力を均衡しなくてもリーグとしての魅力を失わないで済む方法がないか」という選択肢を検討すべきじゃないかということ、実際に開放型ビジネスモデルであるならばそれは可能。
以上から日本での環境(上記特性)を考えた場合、日本の環境に合っているのは閉鎖型ではなく開放型ビジネスモデルであろうということです。
成功例がない
あとは現実として、NPBのおかれた状況で閉鎖型ビジネスモデルが成功した実例がありません。これは「同一のスポーツ」で「市場が被る」という2つの条件下の場合の話です。
MLBとNPBが同一のスポーツを売り物にしているっていうのはとりあえず説明の必要がないでしょう。
アメリカ市場はともかくとして、NPBがそのほとんどの収入を担っている日本市場が現在NPB,MLB双方からターゲットにされているのも明らかです。
その状況で2つの閉鎖型モデルリーグが生き残った例はありません。 スポーツの歴史とかを紐解いてみればすぐわかる話だと思います。MLBに関連するもので言えば、フェデラル・リーグに始まりトライステート・太平洋沿岸・カリフォルニアステート・ニグロ、数多くの歴史がしめしていますよ。
この事実が私が上記で「しかない」と言っていることを何よりも示していると思います。
今までMLBがあってもNPBが生き残ってこれたのは、MLBが日本市場をターゲットとしてこなかったからです、お互い国内市場だけで満足してきたから成立していただけです。
韓国プロ野球はソウルオリンピックを契機として発展してきましたが、ここ数年現役選手のMLB志向と何よりも、有名アマチュア選手が韓国プロではなくいきなりMLBへと入団することで一気に人気がMLBにながれました。
あれこそ閉鎖型ビジネスモデル例としてもっとも参考にすべき、NPBに近い実例です。
閉鎖型モデルを推す人たちがよくアメリカの実例を話していますが、それらはなんら参考にならないということです。
むしろ参考にする題材としてならニグロリーグや韓国プロ野球を参考にすべきだと思います。
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ってことでここまでの結論ですが、NPBが目指すべきビジネスモデルは開放型モデルである。というのが私の考えです。
それを前提としてその3以降で各種制度について私見を述べたいと思います。
- 事務局に通報しました。
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