田沢の件。

  • DIME
    2008年09月12日 13:09 visibility107

気がついたらもう2年近くここで書いてることになるんですね、まぁ実働は半分ぐらいしかない気がしますけど。
改めて読み返してみると、今回の田沢の件については、時間がない今適当に書いた日記よりも、昔に時間をかけて書いていた日記の方が質の良いものになるんじゃないかと感じました。
今見に来ていただいている方の中でも、あの頃からご覧になっている方は稀でしょうし、今まで書いてきた日記の中でも一番読んで欲しいものなので、紹介させてください。

と、その前に一つ紹介させていただきます。
今出ている報道等でもなかには矛盾する主張が併記されていたりして、どこまでNPBを「ビジネスとして」理解しているのか疑問に思えるものが見受けられます。
現在のNPBがおかれている状況やそのビジネスモデルの内包する矛盾、閉鎖型と開放型という2つの方向性とNPBがもつ要素、特性やそれらの進むべき方向性ががどちらに属するのか、これについては鈴木友也さんが、週刊ベースボール紙上で連載されていたコラムは是非読んでおくべきです。
幸いなことにそのコラムについてはWeb上で全文が掲載されています。未読の方はもちろん、既読の方もこの機会にもう一度読まれても損はないと思います。

『週刊ベースボール』(ベースボール・マガジン社)短期集中連載
「60億を投資できるMLBのからくり」(2006年12月25日号〜2007年3月5日号)
http://www.transinsight.jp/profile/index.html#column
トランスインサイト株式会社様HPより

-------------------------------------

で、今回の件について昔に書いていた日記群は以下となっています。
携帯からの人は大変申し訳ないのですが、「NPBが目指すべき形」で検索してください。

NPBが目指すべき形 前文(その1)
NPBが目指すべき形 ビジネスモデル(その2)
NPBが目指すべき形 ドラフトと閉鎖型モデル(その3)
その3補足 ドラフト制度について
NPBが目指すべき形 モデル例(その4)
その4補足 いくつか疑問点

特に今回の件に関して言えば、その3が該当すると思います。
さすがにこの時点で最初の一人が田沢だとは思いもよりませんでした。某Sくんがその第一例になるってのはただ名前を挙げたわけじゃなくて真面目にそうなる可能性が高いって予測していたんですけどね。実力どうこうよりもあのネームバリューは日本市場を更に席巻するにはオイシイでしょうから。
いい加減これらの記事も改訂して完結させなきゃなぁ。

-------------------------------------
人気blogランキング>[Category:野球]
-------------------------------------

で、いくつか感想を。
「MLBに直接挑戦する方がリスクが高い」っていう声が聞かれますが、私は決してそんなことはないと思います。
MLBとNPBを見ていたときに私個人はあまり差を感じることはありません、むしろMLBは現在ちょっと球団数過多になっていますのでメジャーのボトムライン、特に投手のボトムラインは日本より下だと思います。
ですからMLBに挑戦するリスクを語るときに、「あちらで成功するかわからないから、NPBで成功してから考えた方がいい」って言うのは違和感を感じます、NPBで成功するぐらいならMLBでも十分成功するって言うのが私の考えです。
当たり前ですけど、日本でやっている中でもドラフト指名前に高い評価を受けていても全く活躍できない選手もたくさんいます。MLBで成功しない選手が何故NPBでは活躍できると言い切れるのでしょうか。
少なくとも、NPBで成功することがあまりにも簡単なことであるかのようにみなされていないでしょうか。

他には「MLBではいきなり一年目から活躍するような例は稀で、NPBはそれがある、だからMLBの方が難しい」というものがありますけど、本当にそうなのか数字見たことあります?これはほんと教えていただきたいです。
で、もし仮にMLBからはじめても数年かかったとしても、メジャーで投げるまでに時間がかかるのはどちらでしょうか。
今回の新しいFA制度に従えば、NPBの外への移籍に必要な年数は最短で9年間のままです。
たとえ、「MLBに入った選手がメジャーに昇格するには短くても数年はかかる」のが事実であったとしても、どう考えてもMLBに直接行ったほうが早いでしょう。

その「一年目から活躍する例」の違いについても日本球界とアメリカ球界の違いを考えずに単純比較していて正しくないと思うんですよね。
5段ピラミッドで考えると、5段目に入るところでドラフト指名があるのがMLBとすれば、NPBは2段目ぐらいにあります、田沢は現時点で社会人の最高峰、去年でもドラ1確実だったんですから2段目の真ん中ぐらい。スタートラインが違うでしょう。
一部報道で「ロースター契約」の申し出もあると出ていますけど、私は全く不思議はないと思います、ルール5に該当する年数になったがそれでも出したくないのでプロテクトするトッププロスペクトと同等と考えればそのような契約であっても何の不思議もないです。

メジャーを最終的なゴール地点として目指すのであれば、私はリスクが高いのは「NPB経由でMLBを目指す」方だと思います。
私は田沢がリスクの高い方を選択したのだとはとても思えません。ゴールにたどり着く可能性の高さにしても、生涯で獲得できる総年俸の期待値にしても、MLBを選ぶ方が容易な選択だと思います。
これは一重に保留権制度のせいです、あまりにも長すぎるし、そもそもドラフトによって自由意志を奪われているようじゃ太刀打ちできません。

-------------------------------------

今後の日本球界においては、私は「優れた選手はMLBに直接行くという選択肢を選ぶ合理的理由がある」前提で考えなければいけないと思います。
今までは実例がなかったことで、それが非現実的であるかのように語られすぎていたキライがあると思います。上にも書いたとおり私はそのような認識は間違っていると考えてい、ます。
しばらく前から、日本のトップアマ選手(特に投手)にとっては、成功する可能性にしても、稼げる金額にしても、MLBという選択肢はNPBという選択肢に十分に匹敵する、下手をすればより容易な手段としてそこにずっとあったんです、気付いてなかっただけで。
「MLBに行く」という選択肢が現実的な手段の一つとして顕在化してきた場合、NPBが選べるのは大きく分けて2つだと思います。

一つは今声が出ているように、MLBと何らかの協定を結んで、選択肢を防ぐという事です。
NPBはプロしか管理していません、アマ球界にいる選手はそもそも「NPBと無関係の他人」です、その彼らに何ができるかって何もできるはずがないんです、所属すらしていないのですから。供給側は防げません、だったら需要側を防ぐしかありません。
ただ私は上にあげた日記でも書いたようにそれができるかと言えば、正直難しいと思います。MLBの日本戦略或いはアジア戦略を見ている限り、NPBとの共存を前提としているとは全く思えません、口では違うこと言ってますけどね。
もし仮に今回は何らかの協定が結べたとしても将来的にMLB側がずっと協定を守る保証はありません。そして協定が一方的に破られた時に何らかのカウンターを仕込める法的根拠もなければ、対応方法もない、根本的なところでアマ選手が「無関係の人」なんですから。
最低限、日本球界が統一され、NPB(或いはそれに変わる最高組織)が、プロアマ含めた全ての選手に対して何らかの規制をかけられる必要があります、ただその場合も「職業選択の自由」を出されてくると法的な後ろ盾がありませんから苦しいです。
結局、たとえ協定を結んでいたとしても、MLBからずっと喉に刃を突きつけられている状態である事は代わりありません。このまま緩やかにMLBが日本でのシェアを拡大し続け、どこかで破ってそれで終わり、でしょう。

一つは、選択肢があることをしょうがないとした上で、その選択肢以上に魅力的な選択肢を提示できるように変わる、ということです。
とはいっても、選択肢そのものの単純な大きさ、年俸だとか対戦相手だとか、それらではなかなか太刀打ちできませんから、選択肢を差別化する事によって魅力をましていくのが現実的でしょう。
ただ世間では見ていると、そういう考えを示しながらも具体的なことになると、「完全ウェーバーの実施」だとか「戦力均衡の促進」だとかになってる人がいます、そこが理解できません。
それらは選手側からすれば、選択肢の魅力を貶めるものに他なりません、それがわかりませんか。「球団を選択する自由」がなくなったり「サラリーキャップがかけられることで年俸が抑制される」可能性が高くなったりするんですから。
こちらを選ぶにしても、アマとの統一組織を作る事は不可欠だと思います。「日本の野球選手」という商品全てを管理し、その商品が国外に輸出される時に、日本球界が利潤を獲得しその利潤を球界に再投資する、選手が流出することはしょうがないにしても、その選手の存在によって社会から発生するお金、それらの一部だけでも日本球界に還ってくるようにしなければいけません。そういう意味では、アマまで含めた全ての選手を管理できなければ無意味です。

-------------------------------------
人気blogランキング>[Category:野球]
-------------------------------------

私個人としては、田沢の選択を非難するつもりは全くありません、彼の行動には何の問題も無い。
日本球界の将来とか、選手に負わせるような問題じゃないでしょう、たとえこれで30年後には日本にプロ野球がなくなってたとしても、それは彼の責任でもなんでもない。彼が負うのは野球関係者一人分の身の丈の責、それは私たち1ファンと同じ分量。
これは「終わりの始まり」かもしれませんけどね、だとしてもそれを招いたのは球界全体でありひいてはファンも含めた関係者全体ですから。

例えば上原浩治にしたって、私はMLBに行くことを批判するつもりは全くないし、MLBに行くのが巨人やファンに対する裏切りだとも全く思いません。
いなくなる前提で使い潰しても構わないとは思いますけど、それは別にいなくなることを恨んでる訳でもなんでもなくて、巨人軍にとっての最善を選べってだけです。
「エースに対する敬意」だとか何とか言われますけど、私には全く意味がわからない。個人の事情をチームの都合より優先するなんて敬意払ってるとはいわないでしょ、それは特別扱いしてるって言うんです。
その敬意をもった行動って言うのは具体的にはどういう事を指すんでしょうね。どんなことであれ「“巨人軍の”エース」に対する敬意なのですから、巨人軍のことが最優先に考えられていなければそれは敬意を払っているとは言えないでしょう。
チームの勝利、チームの未来、それを考えた上で活動することがエースに対する敬意です。
話が逸れましたが、選手個人が行きたいといっているのをダメっていうのはおかしいでしょう。誰かの素直な感情をそれが不都合なものだからと言って否定するのは私はイヤです。
私個人はMLBに何にも魅力を感じませんが、魅力を感じる人がいるってことは、魅力の足りないNPBが悪いんだと思います。もちろん単純な魅力勝負では力量差がありますからそれを弱い方が悪いだけで言い捨ててはいけませんけど、少なくとも劣っているなりにできる事をしているかと言えばしていないと思いますから、最低限それはして欲しい。
魅力のあるほうがより魅力的になろうと努力していて、魅力のないほうが魅力的になる努力をあまりしていない、それが今のMLBとNPBだと思います。

それでもまぁ、ジリ貧だなぁとは思います。「トップアマがMLBに直接行く」というのは、考えられる中でも最大の爆弾の一つのはずだったのですけど、見ている限りじゃ爆風すら起きそうにありませんし。
これで変えられないとなると、ほんと見通しが真っ暗です。あとは職業選択の自由か独占禁止法違反かで法廷に持ち込むぐらいですかねえ。
結局プロ野球って興行はONの時代から緩やかにくだりつづけたまま、なんでしょうか。ここまで来てもまだ日本代表監督に王貞治待望論とか出てますし。
渡邉氏は球界への実質的な発言力が既に見受けられないので記者へのネタ提供で言ってるだけですが、それ以外の球界内の人間から王氏の名があがってくるのはほんとどうなんでしょう。

chat コメント 

コメントをもっと見る

通報するとLaBOLA事務局に報告されます。
全ての通報に対応できるとは限りませんので、予めご了承ください。

  • 事務局に通報しました。