攻撃手段の集中
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DIME
2007年04月01日 02:20 visibility52
相互リンクを頂いている、道作さんがコラムで触れている命題の中で「攻撃手段の集中」という概念がある。
これは具体的に言った方が早いと思うので、道作さんの言葉を引用させてもらう。
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たとえば1試合に両チームがオール単打で9安打ずつ記録したとしてAチームが余りにも律儀に各イニング1本ずつ記録したのに対して、Bチームは初回の攻撃だけで9安打を記録し、他の回は無安打だったとする。安打は同じだが得点としては大差がついているはずだ。
http://www16.plala.or.jp/dousaku/kekkahaniteiru.html
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連打が続くのは偶然か必然か。「走者がたまっているときのほうが打っている」なんていうのは統計の針の触れ方の問題なのかその打者の実力なのか。
非常に興味深い命題の1つではあるのだけれど、個人的には“ケースバイケース”であるのでどちらに振ることも出来ないと思っている。
一番の理由は球を投げるのは機械じゃなくて人間だということ。逆に「走者がたまると崩れて打たれる」と評価されている投手だって居る。
もしとある場面があったときにそれは打者のそういう場面での能力が発揮されたのか、投手の(マイナス)能力が発揮されたのか。たぶんどっちも。でその場面をここは投手35%で打者65%とか、投手5%で打者95%でなんて、誰もが納得できる客観的な数字としてあらわす事は無理だろう、主観的な数値化ならいくらでもできるのだろうが。唯一の例外の可能性は四死球ぐらいなものだが、これだって「打者がよく選びました」なんてことになれば打者0にはなるまい。
結局個人的に言えば「ある」か「ない」かはあまり興味が無い。たとえあったにしてもそれを抽出してデータ化し参考にする方法がなければ無いのと一緒。
どれだけうまそうな餅でもCGでは食欲を満たすことは出来ないし、食欲を満たせないものが美味そうであるかどうかは欲求の解消やカロリー摂取には役に立たない。
たとえ存在してもそれを勝利に利用する事が出来ないのであれば、だったら少なくとも有無の議論が導き出す結論は「参考にならない」であることは変わらず、ならばそれは議論不要っていうのが私の考え方。なのでとりあえず「攻撃手段の集中」は無いと思っている。
なんて事を思い出してしまうのが今日の試合だった。
先発の登板したイニングに限れば、6安打だが全てイニング1本ずつの巨人と5安打だがそのうち3安打が8回に集中した横浜。
これが「攻撃手段の集中」という能力が巨人側に欠如したからなのかどうか、それはこの際関係ない。
たとえその能力があろうとも、ではその能力を見につける方法は?といわれても誰も答えられないうちはあっても無くても同じ。
少なくとも「そういう能力が巨人に欠けている」と主張するのは明らかなムダだ。もし仮に欠けていたとしてもそれはこの際問題になりえない、同時に(主観的な思い込みはともかくとして)明確な解決手段を提示しなければその問題提起はチームに何の進化ももたらさない。
解決が出来ない問題にはかかずろうだけムダである。そしてそれにかかずるというだけでさえそれはチーム強化に対するマイナスである。
チームに問題はいくらでも見つけられる(見つけられない=成長のないチームに成果は無い)。星の数ほどありそうな問題の中で、解決手段が見い出せる問題を選択し、解決による効果の高い問題を選択し、そこに資源を集中するべきだ。
人的資源と時間的資源に限界があるにもかかわらず、難関問題に立ち向かっていくのは、傍目からはカッコイイかもしれないが、内部では悪夢だ。
「攻撃手段の集中」という問題の解決を図るのは少なくとも解決方法が見つかってからで十分、チームでその解決方法を見つけるのは非効率的だ、それこそ道作さんのような専門家が何か糸口を見い出してからでいい。
そこに問題が実際に存在してそれを解決するのがチーム強化として正しかろうとも、それだけでそれを解決すべきとはならない、それはあまりに視点が狭まりすぎている。他との関連性(難易度)や優先順位という考えが抜け落ちていてその問題のことしか考えておらず望ましくない。
入試で言われなかっただろうか、答えを出すのに時間のかかる問題は捨てろと。実社会で働いてるときに無いだろうか、あの会社との取引は利益効率が悪いからこちらから積極的には営業するなってことが。
どうせ明日になれば「散発」とか「集中打が必要」とか書かれるのだろう。その指摘は正しい。でもその改善をはかろうとするのははたして正しいか。そもそもそれは改善の出来る問題なのか。そんな問題に取り組む前にやらなければならない問題が多いのではないか。
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あともう1つだけ確認しておかなければならないことがある。今日の試合結果だけを見て既に、首脳陣に策がないだとか言い出している巨人ファンが一部に見受けられる。
ほんとうに無策なのか、策を見抜けていないのか。どちらだろう。
7回表に李承ヨプにスチールをさせたのを見ていなかったわけではあるまい。もっとわかりにくいもので言えば、今日の土肥の投球数か。8回打者28人でたったの85球、1打席当たりの投球数は3.04球だ。こんだけの数字はチーム全体で早打ち意図がある程度ないと弾き出されない。
実際に土肥から打った6安打の内訳は、初球、2球目、2球目、3球目、3球目、5球目と、高橋由伸の安打をのぞけばすべて3球目までに出ている。追い込まれる前に打つという攻略意図があったのは想像に難くない。
自らの眼力が足りないがために策を見抜けていないだけにもかかわらず、無策と評するのは傍目から見ていて恥ずかしい。
策は見えている、こんなにも明らかに。
では無策じゃないにしても下策だったのではないか。なんて意見はもっと無意味だ。シーズン2試合目で偶然でなくシーズンの結果を見い出せるのであればそれは知能の無駄遣いである、たぶん誰も届かない高みに届くであろうその知能をもっと別方向に発揮することをオススメする。
まぁ冗談は置いといて、実際に策が正しかったかどうかはわからない。少なくともたった一度の試行で結果は見えない。
例えもし仮に成功していてもその成功は確率の低い策が偶然1度目の試行で成功しただけかもしれない(成功率3割しかない策は、別の言い方をすれば1回目において30%は成功するということだ)。
もちろん同一の投手とあたるのは優先的に当てられてもシーズンに二ケタも無いのだからこの1試合の比重は大きい。ただ結論をつけられるほどの比重は無いのではないか。
それにもし、(“攻撃手段の集中”が偶然であるならば)散発になったのは偶然であり、28打席で6安打というペースであれば、何度か繰り返せばこれが連打、得点に結びつく可能性は十分にある。だとすればそもそも今日の結果はどれほどの「失敗」なのか。
あまりに安易に首脳陣批判をするのはあまりに見ていて気持ちが悪い。批判すればカッコイイと思っているのだろうか、それともただのストレス発散か。たぶんに後者な気がするが。
非常にホークスファンには失礼な話だが、私が「王+ホークス=??」で導く回答は「生卵」である。例外的なファンの暴走だしそれをもって球団やファンを非難する気はさらさら無いが、かといってこれから何があろうともこれが回答であり続けるだろう。
今のホークスだけを見て今の巨人を見れば首脳陣を批判したくなることもあろう。でもそれは最初から導かれたものではない。どれだけファンに罵られようとも否定されようとも続けた結果が今になっている。
ホークスと巨人では球団の長期的な活動サイクルの位置が違っている。今の巨人が参考にするべきは今のホークスでなく、王に生卵をぶつけたころのホークスである。あの時どれだけファンの声=世論が吹き荒れようとも正論を押し通して長期政権を築いたことが今の礎となっている。
はっきり言ってしまえばファンの声、特に短期的な視野しかない声はあってなきもの、酷いものは害悪とさえ思っていたほうがいい。
別に一時の感情で非難する事も批判する事も否定する気は無いけれど、少なくともその口で巨人に対して「長期的戦略」だとか「育成」だとか口走るのはやめて欲しいものだ。一定の首脳陣の意図にチームを合わせていく(戦略にあった選手にかえていく)のも育成のうち。頭がころころ代わっていては育成は出来ない。
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