フリーエージェント制度の修正が行われそうですが。
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DIME
2007年11月28日 13:13 visibility685
昨日行われた12球団代表者会議でそういう話が協議されたようです。
ただその中身がどうも半端になりそうというか、おかしくなりそうというか、方向性が真逆の修正を同時にしてしまって結局は全然制度改善というか正常化というかになりそうも無い気がするんですが。
報道各紙によって検討されている内容にも若干のばらつきがあるんですが、とりあえずいくつかピックアップしてみます。
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FAと補償金協議…12球団代表者会議
プロ野球の12球団代表者会議が27日、東京・内幸町のコミッショナー事務局で開かれ、選手会が要望しているFAと補償金の問題について協議した。移籍の活性化は12球団の意見が一致。FAは現行の9年から8年に短縮する方向で話し合い、補償金は減額や撤廃だけでなく年俸によって補償金額を設定するなど、各球団からさまざまなアイデアが出された。
これらの意見を集約し、選手会には12月6日の総会までに12球団の意向を伝える。また、シーズン中のトレード可能期間を現行の6月から7月末に延長する案も調整中。選手会は7月の臨時大会でFA選手獲得球団に対する補償金が撤廃されない場合は訴訟することを承認している。
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NPB12球団代表者会議開催…FA権1年短縮を選手会に提示
日本プロ野球組織(NPB)の12球団代表者会議が27日、都内で開かれ、日本プロ野球選手会から改善を要望されているFA(フリーエージェント)権など選手の保留権について議論。現行9年のFA資格取得期間について、8年に短縮する方向で調整した。
05年にNPBは選手会に対し、契約更改交渉での年俸の減額制限を最大50%まで認めることを条件に、8年への短縮を提示したが合意に至らず。この日も減額制限の了承を条件にする声が多かったが、短縮の方針は合意された。FA移籍選手の補償金は削減する方向だが、人的補償のプロテクト枠(現行28人)を狭めることを議論。選手会には現行6月30日までのトレード可能期間を、7月末まで延長することを要求する。
選手会は7月に、保留問題で改善がみられなければ法的手段に訴えることを決定しており、12月6日の総会で議論することにしている。NPBは同5日の選手会との事務折衝で、具体案を提示する予定だ。
サンケイスポーツ
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FA取得年数 8年に短縮へ
プロ野球の12球団代表者会議が27日、都内で開かれ、選手会が要望しているフリーエージェント(FA)の取得年数について、現行の9年から8年に短縮する方向で調整を図ることになった。今後は選手関係委員会で意見を集約し、選手会には来月6日の定期大会までに方針を伝える。
選手会は定期大会で、あらためてFA短縮などを求めて訴訟を起こす方針を決議する可能性がある。この日の会議は選手会への対応を軸に協議。選手会が求めるFAによる補償金の撤廃については、広島から提案された人的補償のプロテクト枠(外国人選手を除いた28人)を狭める案などが議論された。また、シーズン中のトレード可能期間を、現行の6月末から7月末に延長する案も調整。ドラフト制度については後日、検討することになった。
[ 2007年11月28日付 スポーツニッポン ]
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具体的に何処がおかしくなってくるかというと、サンケイスポーツやスポーツニッポンで言及されている「人的補償のプロテクト枠を狭める」という条項です。
特定球団だけを利することを避けるということを考えるのであれば、これはやっちゃダメだと思います。
現状の28人枠でも少なすぎるためにFA権を取得した選手であってもよほどの超大物選手じゃない限り他球団は獲得に動けないんですから。
正直1.2倍の補償金は中堅選手では問題となりません。問題となるのはプロテクト枠がたった28名しかない事の方です。ということはつまり29人目の選手以下と判断されたら獲得されないってこと。
そしてその29人目というのは70名の支配下登録枠がある球団からすれば中堅選手ってぐらいです。28人という枠は1軍登録と同じ、例えば捕手なら3人か2人が多い。それで済むならまだ良いですが、この枠の中にまだ1軍枠には入っていない若手選手や直近ドラフト上位指名選手を足してくるとなると、少ない椅子がますます少なくなる。
もし仮にその中堅ぐらいに属する選手がFA宣言して他球団に移籍し、相手球団に人的補償を選択されたとすれば、同程度の選手の交換+0.8倍の補償金支払いが付いてくる獲得球団のほうが損をする、そんな選択する球団が出るわけがありません。
具体的に言えば例えば中堅どころの捕手を取ったら、その人的補償として伸び盛りの若手捕手を代わりに取られた上に0.8倍の補償金まで取られたなんて笑えない話になるのがFA制度の現状なんです。
この改正がFAによる移籍の活発化というか現状のような「一部の選手・球団に限られているFA権利をより多くの選手・球団が活用できるように正常化しよう」という趣旨であるのならば、人的補償のプロテクト枠を狭めるのはそれに逆行すると言うことです。
実際に最近の報道を見ていただいてもわかるとおり、ヤクルトにしろ、広島にしろ、補償は金銭ではなく人的補償を先に考えています。これはどういうことかというと、人的補償のほうが金銭よりも価値があるだろうと判断しているということです。
新井や石井一でさえ人的補償の方が価値があるだろうと想定している。過去の例で言えば、野口茂樹、豊田清、門倉健、小久保裕紀、彼らの前所属球団は補償金よりも人的補償のほうが価値があると判断したわけです。
正直彼らは中堅選手どころかピークを過ぎたとは言え一流選手でしょう、そんな彼らでさえ人的補償が選ばれてしまう。それぐらい今の人的補償の人数制限というのは厳しい。現行の28名というのは補償としては厳しすぎるものです。
結局、この人的補償枠が少ないが為に、現行のFA制度では単純に中堅選手を獲得するのはマイナスになる危険性が高いですから、FA制度というのが一部の限られた選手しか恩恵の受けない制度となっているのです。
その現状から、更に人的補償枠を狭めればどうなるか。当然、今よりもっと一部の限られた超大物選手しかFA制度を利用する事が出来なくなります。
それに加えて期間が短縮されて補償金も下がることで、超大物選手に限れば獲得は容易になる。さらにより若い年齢での獲得にもなり、かつ補償金が下がることでその分だけ選手獲得にかかる費用は選手年俸に集中できる、つまり高騰する。高騰することでその獲得に参加できる球団はより少なくなっていく。
そうなってしまうとどうなるか。今以上にFA移籍というのは本当に限られた「極々一部の選手」をそれに参加できるだけの資金力がある「極々一部の球団」が争うものとなります。
FA移籍に参加できる球団が減ると言う事はその分だけ球界全体における戦力強化の方策が少なくなるということですから、1つの移籍が球界全体の戦力強化策における割合は大きくなります。
結局「極々一部の選手」を「極々一部の球団」が獲得した時に得られるチーム戦力の向上が“相対的に”見ても価値は増大することになります。
スポニチによればこれは広島の案のようですが、それが果たして広島の為となるのでしょうか?逆だと私は思います。
もう1つ問題があります。FAではMLBへの移籍には補償のような制限が無いということです。
上記の通り、超大物選手に限られてくるというのは、この補償条項があるNPBへの移籍の場合だけです。MLBの場合は選手移籍に伴う補償が整備されていませんから、中堅選手であろうとその移籍に支障が出てくることは有りません。
そんな状況において期間を短縮すればどうなるか。昨年あたりからその傾向が本格化しているように、FA権利獲得が即MLB流出に繋がるという流れがより強くなっていきます。それが続けば当然NPBは空洞化します。
期間を短縮し人的補償枠を狭めると言う事はMLBへの移籍とNPBへの移籍とにある差を現状から更に拡げるという事です。
一定以上の実績を残し、FA権利を取得した選手が居てもNPBでは自分たちが定めた条項に縛られてその選手を引き止めることも出来ず、MLBにどんどん流出していくのを指をくわえて眺めることしか出来なくなります。
本当ならば、ポスティングのようにMLBへの移籍があった時にNPBへの一定の補償が発生するようにしないとNPBはいずれ破綻します。選手という商品をただでもちさらわれてしまっているわけですから。
どうもポスティングとFAについて、一般的には逆の見立てがされることが多いですが、日本プロ野球にとってはFAでのMLB移籍は大事な商品をタダで奪われる事、ポスティングでの移籍というのは大事な商品の代金をちゃんと回収できるという事、どちらが日本プロ野球の為であるかはいうまでもありません。
もちろん、日本にプロ野球などなくても良い、優れた選手がMLBで他国の選手と混じって野球をしていればそれでいいと思っているなら別ですが。私個人は野球が好きなのではなく、巨人が好きで、その行っていたスポーツが野球だっただけなのでそういう考えはありません。巨人の無い野球など価値は有りませんから。
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ただ、現状のFA制度というのは問題が多いとは私も思っています。一番の問題はMLBへの移籍の補償が無いことですがこれはとりあえず置いておくとしてもです。
何処に問題があるかといえば、やはり、FAによって移籍できる選手も限られているし、獲得できる球団も限られているというところです。
広島などはそもそもFAという制度自体に反対しているという報道も見受けられますが選手側の主張も考えればFA制度を撤廃するというのはまず無理でしょう。
そうなってくると、FAという制度があるということを前提として、FA制度があったとしてもその制度が特定の選手や球団に限られないようにすることを考える事になります。
もちろん、特定の選手や球団に限られないといってもそれは即ちどの球団にも等分になるとかいう意味じゃないですよ、収入が多い球団が少ない球団より有利になるべきなのは当然です。ただ単純に中堅選手にまでFAが広がることで今より低い相場でFA市場が動くという意味です。
どうすればよいかとなってくると、選手側のFA権利の取得のハードルを低くしながら、同時にFA選手を獲得にかかる費用のハードルも低く抑えられるようになればいいわけです。
去年の塩崎や日高のように、年俸数千万円ぐらいの選手の場合だと人的補償の方が確実にマイナスになるので宣言したとしても他球団が手を上げることはありえません、補強ポイントと合致していてもです。
しかし、補償を低く設定することでこれまではFAでの獲得はそもそも不可能だと思っていた球団でも手が出せるようになります。選手側のハードルも下げることでこれまではFA権のなかった選手であっても獲得できるようになります。
具体的に言えば、例えば巨人がFAで大物を取ってきたとして、その陰で出場機会がなくなってしまう中堅選手が発生する。これ自体は実力で上をいけない選手が悪いんですからしょうがありません。
ただ、ここでその中堅選手がFA権利を持っていれば出場機会を求めてFAすることができる。獲得に対する補償が低ければ、その選手のほうが所属する選手より優れていると思う球団は獲得に手を上げることが出来る。結果的に他の球団もチーム強化をすることが可能になるわけです。
だから、一部球団に限られた制度としないためには、FAの権利を多くの選手が持ち、彼らが容易に移籍できる環境を作るのが大事です。
もちろん、ハードルを一律に下げれば良いわけでは有りません。一律に下げてしまうとその分だけ超大物選手の移籍に伴う戦力格差も増大しますから、そのあたりの修正も必要でしょう。
そうなってくると考えられるのが、報道にも見られているような選手をあらかじめランク分けして、そのランクによって補償を変動させていく方式です。
実際NFLでの移籍に関する補償はそうなっていますし、MLBもそうだったんじゃないかと思います、ちょっと正確に思い出せないんですが。
補償としては一番いいのはドラフトでの指名権だと思います。1巡目が指名された後に1.5巡目としてAランクの選手がFAで移籍したチームに指名権を人数分、Bランクなら2.5巡目にとかいうように。
ただ問題としては、プロ野球の場合はNFLやMLBと違って国内アマ組織が大きいため、2巡目の後などの指名巡とかになると(本来その辺りに居てもおかしくない選手がアマに残留などするため)結果的に補償としての価値が低いかなという気もしますが。
或いは人的補償に関してもAランクなら28人、Bランクなら35人、Cランクなら42人とかしていくという手法もあるでしょう(人数はてきとーです)。
ちなみにスポーツ報知にある「年俸によって補償金額を設定する」というアイディア。とりあえず字義通りに解釈すると現行の制度と同じ(年俸の何%と決めているんだから)なんで、たぶん年俸によって補償金額の比率を変動させるという意味だと思うのですが、これは先日の日記で書いた事と同じで、その前段階として各球団の年俸評価の画一化が計られていなければ球団によって同じ金額でも選手評価が違うわけですから無意味です。
仮に今のような状態でそれをやったとなると、例えば1億の価値がある選手にチーム事情から0.5億しか払えていなかった球団の場合、その選手が移籍したとき、実際は1億分の損失があったにもかかわらず見返りは0.5億に準じたものしかなりません。逆に2億払っている球団だとすれば1億の損失に対して2億相当の見返りが与えられます。つまり金払いの良い球団のほうが有利です。
結局、FA制度をどうしたいんですか?っていう大元の意思の統一が図られていないからこういうことになるんでしょう。FA制度をより活発にさせたいのか非活発にさせたいのか、それがない。
もちろん活発にさせたとしても、前述のように補償を細かく設定していけばFAで流出するばかりであってもバランスは取れるし、そもそも中堅選手にまでFA移籍が広がっていけば、現在のように少ない駒を奪いあう状態が解消され結果的にFA選手の市場価値も下がるから、FA獲得が絶対無理という球団も生まれにくくなる。
つまり、FA制度によって戦力が低下するのを防ぎたいからといって、FA制度を非活発にさせることだけがその解決策ではありません。
現状は、選手会側が強硬に主張していることもあり、FAの短縮や活発化は避けられない情勢だと思います。であるならば、その状況に即した形で自分たちにもプラスになるような方策を採ったほうが現実的です。
活発になることは避けられないのにも関わらず、不活発な状況という前提においてのみ有効な方策を主張するというのは賢いやり方だとは思えません。
ちなみに私個人の考えとしては、前にも書いたように戦力均衡というのはプロ野球が目指すべき方向では無いと思っているのでその意味でFA制度は本来ならば必要ないと思っています。契約期間が切れたら全員自由に全球団と交渉可能というのが理想です。
しかし、現在のような各球団の保留権が強い状態から、より自由競争に近い状態へとプロ野球は変わっていくべきだと思っているのでそうなっていくための段階としてFA移籍の拡大というのが現実的方策だと思っています。
そういう意味でFA権利と、FA市場の拡大という事は賛成です。ただそれを活用して戦力均衡を図るという事には反対しています。正確には戦力均衡そのものには反対はしていないんですが。
私が考えているのは「何に対して戦力が均衡であるべきか」です。
全球団が一律に戦力が均衡するようにする、これは「球団に対して戦力が均衡」です、これには反対です、何故なら各球団の企業努力に戦力が無関係となる為、結果的に努力をしない(=経費を使わない)球団ほど選手獲得に伴う価値(=選手価値−経費)が大きくなります、社会主義の末路を見れば明らかなようにこれはプロ野球の衰退を招きます。
では何に均衡であるべきか、「球団の努力に対して戦力が均衡」であるべきだと思います。ファン拡大に努め、広告費等の拡大に努める。このとき親会社から出てくる費用も結局は広告宣伝費が形を変えたものに過ぎませんからそれは球団の努力の違いです。もちろんファンも愛する球団のためにお金を使う。それらの努力の結果として球団が使える費用というものは決定してきます。その費用に対して均衡であるのが私は正しい均衡だと思っています。
ちょっと最後に話がずれましたが、最終的には大局を考えて、全体の流れが一部おかしくなることで結果的に全体もおかしくなるようなことの無いようにして欲しいと思います。
具体的に言えば、人的補償枠を狭めることになれば、全ての改善が特定球団の利益にしか繋がらなくなるのだから、そうしたくなければ狭めないようにするべきだってことなんですが。
まぁ巨人はそっちの特定球団のほうに属するでしょうから巨人からすれば悪いことじゃないんですがね(笑)
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