★見逃し三振でも振り逃げできる?★

  • 鷹乃廉
    2009年05月29日 14:02 visibility6865

マイヤキューさんであるセキビッシュさんからのコメントで話題になったので、「振り逃げ」について考察していきたいと思います。
(★走者のルール〜part3〜★はもう少しお待ち下さい)

後に問題とする、横浜高校対東海大相模高校の動画を扱っているサイトさんを見つけましたので、PCからアクセスしてらっしゃる方は一度ご覧ください。
【高校野球ノート】


振り逃げとは?


振り逃げ(ふりにげ)とは、捕手が第3ストライク目の投球を正規に捕球できなかったときに、打者が直ちにアウトとならずに一塁への進塁を試みるプレイを指す俗称である。
打者はストライクを3回宣告されると三振になる。通例は、三振を喫すると打者はアウトになる。しかし、第3ストライクにあたる投球を捕手が正規に捕球しなかった場合には、打者は三振であっても直ちにアウトにはならず、打者走者となって一塁への進塁を試みることができる(公認野球規則6.09(b))

このとき守備側が打者をアウトにするためには、打者に触球するか、打者が一塁に到達する前に一塁に送球するかしなければならない。打者がアウトにならずに一塁に到達すると、走者として一塁を占有することができる。このプレイを、日本では振り逃げという俗称で呼んでいる。振り逃げは正式に定義されている用語ではないが、日本ではしばしば用いられる野球用語である。

すなわち、ストライクが3回宣告され三振になったからといって、打者は必ずアウトになるとは限らない。そのため球審が第3ストライクを宣告する際には、その投球を捕手が正規に捕球したかどうかに関わらず「ストライク・スリー」と宣告する。実際の公式戦では「ストライク・バッターアウト」のような宣告は用いない。
(映画とかアニメや漫画では、視聴者に場面説明する意味も込めて「ストライク・バッターアウト」と特有の表現することもある。ドラマROOKIESの審判が「ストライクスリー・バッターアウト・チェンジ」までコールしているシーンがあるが、明らかな場面説明のセリフであり、誤りである。)

公認野球規則では、打者がアウトになる条件として「第三ストライクと宣告された投球を捕手が正規に捕球した場合」と示されている。つまり、そもそも第3ストライクの宣告をもって打者が直ちにアウトとなるのは「捕手が正規に捕球した場合」という条件付きなのである。
なのでワンバウンドで捕球したもの、手やミット以外で捕球したものは正規の捕球とはみなされない。

この他に、
・一塁に走者がいない。または、一塁に走者がいてもアウトカウントが二死であること。
・打者が走塁を放棄していない。
が振り逃げの条件である。


無死または一死の時に一塁に走者がいる場合は振り逃げは成立せず、第3ストライクが宣告されれば、捕手が正規の捕球をせずとも打者はアウトとなる。これは、一塁走者がいる状態で振り逃げを認めると、第3ストライクの時に捕手が故意に正規の捕球をしないことで一塁走者に進塁義務を発生させ、ダブルプレイを試みることができるため、これを防ぐためである。

二死の時は併殺は起こりえないので、一塁に走者がいても振り逃げを試みることができる。この場合は、一塁走者も進塁義務が発生するのでフォースプレイの対象になる。


振り逃げは正しい言葉?


公認野球規則の中で「振り逃げ」という言葉は定義されておらず、また用いられてもいない。「第3ストライクの投球を捕手が正規に捕球しなかった場合は打者が走者になる」と示されているだけである。


なので稀ではあるが、打者が空振りをしなかったが投球がストライクゾーンを通過したために第3ストライクが宣告されたとき、捕手がこの投球を完全捕球できなかった場合も「振り逃げ」できる状態となる。当然、この場合打者はバットを振らずとも一塁に向かって進塁してよい。つまり、一般に「振り逃げ」と言うが、打者がバットを振ったかどうかは関係ない。

ただし実際の試合において、一般に捕手が正規に捕球できないような投球はストライクゾーンから外れていることが多く、そのような投球に対しては打者が空振りをしないとストライクにならない。よって、捕手が正規に捕球できないような第3ストライクの投球は打者が空振りをしている場合が多いので、日本では一般に「振り逃げ」という用語が用いられているのではないかと思う。


では、振り逃げについて一通り理解して頂いたところで、冒頭で紹介した横浜高校の振り逃げ3ランについて考えたいと思う。

振り逃げ3ランホームラン事件
これは、高校野球神奈川大会準決勝、東海大相模対横浜高校で、東海大相模が3−0でリードをしている状況での4回表の東海大相模の攻撃中、二死一・三塁の場面で、ボールカウント2ストライク2ボールからの投球を、捕手はワンバウンドで捕球し、打者はハーフスイングした。ハーフスイングであったため、球審はスイングの判定を一塁塁審に委ねた。一塁塁審はこれをスイングと判定し右拳を挙げたため、球審も右拳を挙げて「ストライク・スリー」を宣告した。

このジェスチャーを横浜高校側は、「三振でバッターアウト・スリーアウトチェンジ」と勘違いしてしまい、捕手はボールをマウンドに投げ返し、他の選手と共にベンチに戻ってしまった。


一方、打者はベンチに戻ろうと打者席を少しだけ離れたが、まだダートサークルは出ていなかった。するとベンチから走塁するよう指示が出た。捕手は第3ストライクの投球をワンバウンドで捕球しているにも関わらず、打者にも一塁にも触球していないから、打者はまだアウトになっていない。審判員もまだ打者のアウトは宣告していない。振り逃げできることに気づいた打者走者はその場所から一塁へ走り出し、二人の走者を生還させた上、自らもダイヤモンドを一周した。


ここで、審判団はプレイの確認のため試合を一度中断し、協議を行った上でこのプレイによる3点の得点を認めた。

事件の概要は上記の通りである。
単純に横浜高校側がルールを誤って解釈していたことが、1番の原因であるが、球審の「ストライクスリー」と「アウト」のジェスチャーが同一なのも原因にあると思う。
私の所属する審判の集まりでは、この事件以後「いわゆる振り逃げの状態が発生した時は、ストライクスリーのコールの後、右手を高くあげ、人差し指またはすべての指を伸ばし、周囲に振り逃げの状態であることを知らせる」という申し合わせがされた。

当時の横浜高校の捕手が1年生で経験も浅かったことも起因しているだろう。私が学生の頃は、「三振だと思ったらまず打者に触球してから球審にハーフスイングを聞け」と教わったし、大学野球・プロ野球の捕手の多くもそうしている。


原因が何であるにせよ、ルールを正しく知らないと痛い思いをするかもしれませんよ。
見逃し三振でも「振り逃げ」できるって御存じでしたか?
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